競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

ジャパンカップ(GⅠ) 出走馬カルテ② 2023

 

こんにちは。

 

こちらは、

 

の、続きになります。JC(GⅠ)は26日(日)に行われます。前日の25日(土)には更新を完了します。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください

 

 

119:ダノンベルーガ

 

今年は堀厩舎からダービー馬がでました。堀調教師はタスティエーラの調整具合を説明する際に、よくダノンベルーガを引き合いに出していました。この頃のベルーガに比べれば不安ないと何度か口にしています。ベルーガは調整が難しく、完調で使える事が少ないのですが、タスティは本当に仕上げやすく順調に調整する事が出来るといつも話していました。

 

このようにベルーガはいつもどこかに不安がある状態で、堀調教師からこの馬の絶好調宣言を聞いた事がありません。近走で言うと、札幌記念はドバイ後に完全に緩めたせいで状態を上げきれなかったとのことでしたし、札幌記念後も北海道の残暑が凄かったせいで調整が遅れて8分ぐらいのデキだと説明しています。本当に仕上げが難しい馬だなと言う印象です。

 

前走くらいからこの馬の評価に変化があります。厩舎の話では長距離志向が強くなっているので、今なら2400mの方が良いと話していました。だから、天皇賞(秋)はあえて8分程度のデキに留めたようなところもあった模様。JCでメイチに出来るように調整に手加減が加えられ、前走で無理に仕上げるような事はありませんでした。

 

2400m戦は昨年のJCでも、ダービーでも伸びきれずに止まったところを交わされているので適性があるようには思えません。しかし、厩舎の判断が正しければ条件面が好転する事になり、8分仕上げの前走からの上積みも大きいものとなりますから、巻き返し必至となるでしょう。

 

天皇賞(秋)では後方3番手を追走していましたが、この馬の3~4馬身後方にいたのがジャスティンパレス、その2馬身後ろにいたのがプログノーシス。後方にいた3頭が2・3・4着に来ています。結果的には超ハイペースの展開ハマりなので特に強調出来るものはありません。ただ、調整過程を加味すれば、この3頭に力差はなかったでしょう。一番前にいたこの馬が2頭に差されただけですから、位置取り次第で2着もあったという内容だと思います。

 

ただ、それだけに昨年までと競っている相手が変ってしまった感じがします。昨年の今頃はジャスティンは格下な存在でしたし、遅れてやってきた5歳の大物プログには2戦続けて後塵を拝する結果に。イクイノックスとの差は開き、成長が伴って来た馬に差を詰められているというのが実情でしょう。この馬だけが取り残されています。


昨年の天皇賞(秋)ではイクイノックスと遜色ない末脚を繰り出していた馬で、3歳春時はイクイノックスと変らない評価、それにダービーでの1番人気はドゥデュースでも、イクイノックスでもなくこの馬。3歳時は同格ぐらいの評価がされていましたが、現状は明確な力差が出来てしまいました。成長力の違いを感じずにはいられません。それもこれもこの馬のひ弱さからくる調整の難しさが要因でしょう。堀調教師がいつも嘆いているのもそう言うもどかしさから来るのだと思います。

 

ですが、仕上げが中途半端にも関わらずこの馬の成績に凡走と呼ばれるものがありません。勝ち鞍が共同通信杯以来になっているのもGⅠばかりを走っているのですから仕方のないこと。馬の状態を考慮すれば、競走成績はかなり優秀です。現状は能力だけの好走ですがそれでもGⅠで崩れないのですから強い事は間違いない。この馬はパンとするまで5歳でも6歳でも現役を続けるべきですね。目指すところはカンパニー。8歳の秋になって急に覚醒したカンパニーの様な活躍が期待されるのではないかと思います。

 

無論、今の状態でもJC好走は可能で2・3着にはいて良い馬だと思います。イクイノックスはともかく、勝負付けの済んでいないリバティアイランドにまで白旗を上げる必要はないですね。頑張って頂きたいと思います。

 

114:スターズオンアース

 

思えばこの馬も桜花賞オークスの二冠牝馬でした。三冠がかかった秋華賞は骨折明けに、出遅れて後方から。直線だけでハナ差まで詰めたものでした。この馬もほぼ三冠牝馬ですね。その後走ったGⅠで2着、3着。豪華なメンバーに埋もれそうですが上位に数えて良い力を秘めていると思います。

 

と言う書き出しで、天皇賞(秋)時の原稿を書き終えていたのですが、出走回避となり残念でした。出ていれば結構良い印を回せたのではないかと思います。以下の文章は書き終えていた原稿に加筆して修正したものです。

 

以前も話したことですが。杉原騎手がスターズの調教をつける事が多いのですが、この方は旧藤沢厩舎の調教も手伝っていたのでグランアレグリアの背中も知っています。そして杉原騎手はスターズがアレグリアに匹敵する馬だと評価していました。かつての超GⅠ馬と比較しても劣らない訳ですからやはりこの馬も有力馬の1頭に数えるべきでしょう。

 

今回はヴィクトリアM3着以来のレースになります。さすがにマイル適性で負けましたが、勝ち馬ソングラインも関係者から既にグランアレグリアを超えたかも?と言われるほどの名マイラーなのでこの距離ではさすがに厳しかったですね。また、関係者も距離適性を考慮した時、本当に出走したかったのはヴィクトリアMではなく、宝塚記念だったと話しています。しかし、宝塚記念にはイクイノックスが出走するのでルメール騎手が乗れません。じゃぁ、しょうがないねとなってヴィクトリアMに出走しています。

 

ですが、秋のレースもルメール騎手は乗れませんから鞍上をデムーロ騎手にして天皇賞(秋)に向け調整されていました。あいにく出走は適いませんでしたが、今回はビュイック騎手でJCに挑む事になります。言わずと知れたゴドルフィンの主戦騎手。その腕前は超一流。来日出来ない期間に英国リーディングを2年連続で獲ったそうです。

 

毎年来日する方ではありませんが、ビュイック騎手には結構お世話になっいます。近い話だと18年のマイルCSで◎を付けたステルヴィオを優勝に導いてくれたり、13年のJCで11番人気で3着に来てくれたトーセンジョーダンにも騎乗してくれて儲けさせてもらっています。個人的には信用出来る外国人騎手ですね。ルメール騎手の代役としては最高です。この方ならやってくれるかもしれません。

 

距離に関してですが、2400mは良いですね。恐らくベストディスタンスだと思います。大阪杯2着後のルメール騎手の話では2000mでも短くて、2400mがベストみたいな話をしていました。スターズの良さを活かそうとしたら強かったオークスと同じ舞台の同距離GⅠは最適でしょう。マイルだった前走から大きな前進が見込めると思います。また、出遅れ癖のある馬ですが、この距離ならリカバーしやすいですから良いと思います。また、秋華賞大阪杯阪神内回りよりも広々した府中の方が良いと厩舎も話ていました。力を発揮しやすい条件という事で良いでしょう。

 

能力はあって、騎手も良く、距離もコースも合っている。あとは回避の影響だけですね。回避の理由はツメ不安と右前肢の歩様が良くなかったからだそうです。休んだのは1週間程度で大事には至っていないようです。ただ、やはり順調さを欠いた点は否めません。調教師の話からは何とか間に合ったという印象を受けました。が、最終追い切りに騎乗したビュイック騎手の感触は非常に良いコンディションと満足気でした。そこまで悲観する必要はないのかもしれません。それにこの馬は秋華賞時も骨折明けで僅差の3着と走っていましたから、それに比べれば状態も良いのではないでしょうか?無印の根拠にして良い理由にはならないと思います。

 

118:パンサラッサ

 

今回は3月下旬のドバイ以来のレースですが、故障が判明したのは英国遠征に向けた調整中の出来事で6月の事。この時に右前の繋靱帯炎を発症しています。症状としては軽度で、当時の診断で3ケ月の休養とされていました。その時から5ケ月近く経つので調整はしっかりと出来たのではないでしょうか?ただ、屈腱炎系の疾患ですからあまり無理は出来ないかもしれないですね。

 

矢作調教師からは昨年の宝塚記念よりもデキが良いというコメントが出ていたんですけど、なんで宝塚記念なの?という違和感があります。天皇賞(秋)2着やサウジCのデキには至っていないということかもしれないですね。もしくは自分の競馬で大敗してしまったこの宝塚記念に納得できなかったからかもしれません。この馬はあんなものじゃないという気持ちでも現れたのでしょうか?

 

でも、この馬はあんなものだと思います。宝塚記念の逃げは1000m57.6秒と、2着した天皇賞(秋)と0.2秒しか変わらないペース。結果は両極端になりましたが、宝塚記念のラスト1000mが60.0秒なので、後半の失速率は天皇賞(秋)と同じ2秒半ぐらい。ほぼ同じだけ減速し、止まってしまっているのです。同じようなペースで行けば、同じような失速を機械的にしているという事になります。

 

行けば渋太いというイメージが強いですが、いつも同じだけ失速しているので、どんなレースでも渋太い訳ではないのです。それで結果が違うのは展開とか力関係とかの話に過ぎません。

 

2着だった天皇賞(秋)は3秒以上も離して逃げていたから、後続の差しが間に合わなかっただけであり、この馬自身2.6秒も失速して勢いは止まっています。後続がそれなりについてきたら宝塚記念の様な結果になるのは普通のことです。ちなみに、今年の天皇賞(秋)のペースは昨年よりも0.2秒遅いだけ。ほぼ同じペースのレースでしたから、昨年のパンサの走破時計を今年の結果にあてはめると8着相当になります。イクイノックスはさらに加速していましたから、失速するしかないパンサが出走していても馬券に絡む事はなかったでしょう。

 

一般的なものとして、57秒中盤のペースで逃げれば3秒、4秒と逃げ馬は失速するものです。それを思えば確かにこの馬の粘りは驚異的ではあります。ただ、GⅠではこの粘りでも安泰とは言えません。もう昨年の天皇賞(秋)の様な事は起こらないでしょう。しかも、今回は距離が2400mですからいつも以上に失速は大きくなる可能性もあります。天皇賞(秋)の時以上に後続を離さないといけなくなるので、そう言う展開は常識的に考えづらいところで、やはり厳しいと言わざるを得ません。

 

また、この馬のイメージをより強烈なものしたサウジCの勝利も

 

・創設間もないレースで、世界の主流はまだドバイ中心。強い馬の参戦が少なかった。
・砂質がカフェファラオ等のダートトップクラスにとっては走りにくいもので力を出し切れていない。
・距離が1800mであった事も重要。
吉田豊騎手曰く、上手くスローに落とせていたそう。
・直線は短く、400mに満たないので先行馬に有利。

 

などなど、かなり噛み合っています。逃げ馬が勝ち負けする時は何かと恵まれているものです。サウジCのおかげで特別な馬みたいな扱いになっていますが、別にそう言う馬でもないので、戦々恐々と怯えることもないと思います。展開上恵まれそうなら印を回せばいいですし、そうでないなら印の必要はないですね。

 

JCでも自分の競馬を貫くつもりでいるようなので、今回も行くだけいくのでしょう。ただ、故障明けの久々で、距離も長いですし、タイトルホルダーなど早めに競りかけて来そうな馬もいますから、いろいろと厳しいことになると思いますが。

 

117:ディープボンド

 

この馬が秋に日本にいるのは3歳の時以来3年ぶりですね。凱旋門賞ではなく、JCにいる姿はどこか変な気分です。府中で走るのもダービー以来。この時はコントレイルの露払いでしたから、このコースで本気を出すのはこれが始めてになります。

 

天皇賞(春)を終えて休養に入っていましたが、その時に完全に緩めたのだそうです。そのため、始動戦になった京都大賞典は状態が戻るのに時間がかかったようで、7~8分ぐらいにしか仕上がらなかったそうです。JCは凱旋門賞より2ケ月ぐらい遅いレースですから今年は調整もゆっくりだったのでしょう。それで3着だったのですからやっぱり強い馬ですね。

 

前走は完全な叩き台ですから、叩いた効果はかなり大きいものが予想されます。JC、有馬記念と続く中長距離GⅠのいずれかでメイチになるはずです。適性、実績を考えると有馬記念の方がこの馬向きのレースでしょうが、ここも注意が必要な1頭でしょう。

 

昔から勝負所でズブい馬でしたが、年齢を重ねたせいか今年はこの点が目立つようになってきました。3コーナー過ぎには仕掛けていることも多くなっています。なので、坂の下りを利用出来る京都コースの適性が高いとされています。この馬が仕掛け始める区間が下り坂になっているので勢いをつけやすいとされています。確かに、今年の阪神2走はいずれも5着まででしたが、京都の2走は2着、3着。勢いがつく分だけ京都では直線でエンジンがかかっているような印象はありますね。阪神だと加速出来たところがゴール前と言う感じなので。

 

この個性からすると、もう京都以外は厳しいのではないかと思えて来ます。府中の勝負所でも阪神同様に置かれてしまう事もあるでしょう。直線が長い分、エンジンは早めに点火しそうですが、勝負所で置かれ過ぎない方が良いですね。

 

追ってバテない馬ですから、タフな展開になるほどこの馬の好走の可能性はあがります。パンサラッサがいつも通りにハイペースで行き、消耗戦になれば出番はあるのかもしれません。ただ、やっぱり長距離部門とは相手が違うので中距離部門のエース級と走るのは厳しいですね。実際、昨年の宝塚記念が57.6秒、今年の宝塚記念が58.9秒とそれなりのペースで流れていても馬券圏内に走れませんでした。2400mなのでもう少しやれる可能性はありますが、中距離馬達の決め手はステイヤータイプのこの馬には楽ではないですね。

 

113:ショウナンバシッド

 

三冠レースにフル出走しているので極端に弱い馬ではないですが、3歳牡馬では中の中、もしくは中の下と言う感じ。この先、中日新聞杯、チャレンジCと手頃なGⅢがあり、これらに出ているようなら△くらいは付けてもいいですが、古馬トップクラスが集まったJCは敷居が高すぎます。

 

また、皐月、ダービー、菊と徐々に延長された距離に比例して力強さやレース振りが低下していて、それに結果も呼応しています。2000mまでの立ち回りはまだ見どころがあっただけに距離が伸びて良いタイプではなかった模様です。菊花賞での陣営のトーンも上がっていませんでした。距離短縮は歓迎でしょうが、2400mでもまだ距離は長いかもしれません。距離適性から言っても2000mで行われる上述のGⅢいずれかに回るべきだと思います。

 

個性的にも瞬発力勝負や決め手比べよりは、立ち回りの上手さで勝負して短い直線で一脚使って良いところがあるタイプ。大箱コースの追い比べで強気になれる脚力はないと思われます。

 

JCは5着でも賞金5000万ですし、このGⅠは結構な奨励金が出ますので出るだけで金になるレース。そういうもの欲しさに出走する馬が近年は増えています。2億8000万もした高馬ですから個人馬主のショウナンさんにしてみればメリットのあるレースだと思います。結果はともかく、斤量の軽い3歳のうちに出走するのも仕方ないのかもしれませんね。

 

112:エヒト【回避】

 

無謀と思えた天皇賞(秋)への出走。しかし、終わってみれば6着と大健闘。イクイノックスから2.2秒離されていましたが、この馬自身の走破時計1:57.4。それまでの時計を更新するものでした。実に立派だったと思います。それまでの2000mでの最速タイムは

 

七夕賞を優勝した時の1:57.8。そして、

チャレンジC3着だった時の1:57.8。そして、

小倉記念を優勝した時の1:57.8。

 

1:57.8がこの馬の限界点でしたが、天皇賞(秋)ではそれを0.4秒上回った点は評価して良いと思います。すがにレベルの高いGⅠでしたら限界点を底上げされた感じでしょう。力を出し切った結果の6着。良く走ったと思います。

 

それにしてもこの馬は面白いですね。時計的な限界が分かりやすい。前走時にAJC杯9着、AJC杯2着、オールカマー11着の中山2200m3走の走破時計にほとんど違いがなく、それで馬券になったり凡走したりの結果は純粋に相手関係によるものだと指摘しました。2000mでも同様の事が改めて証明されました。同じ時計で走ってもGⅢなら勝ち負けですが、GⅠでは掲示板に載ることも出来ない。自分の力を出して切ってもGⅠレベルでは相手が強すぎる事を再認識させることになりました。

 

自分の力だけは確実に行使してくるエライ馬と言う印象にはなりますが、今回もさすがに相手が強いでしょう。敢えて言う事でもないですけど、純粋な力不足です。なお、夏場に調子が上がる馬なので寒くなってきた師走間もないこの時期のレースで調子を上げきれない可能性もあり、時期的要因も評価をさらに下げることになりそうです。

 

好走があるとしたらメンバー構成による有利不利が発生した場合でしょうか?今回は上位勢は飛び抜けていますが、下位勢は逆の意味でとんでもないレベル。超GⅠの流れに対応出来ずに、失速する馬が続出すると思うのですけど、その際の動きが有力馬の捌き遅れ、進路妨害となり、力を出しきれない結果を生む場合はあるかもしれません。

 

三冠馬3頭の対決で盛り上がった3年前のJCにヨシオと言う意味不明な出走がありましたが、そのヨシオのせいでコントレイルは外を回される結果になり、2着もアブナイかもと言う感じになりました。たった1頭でもこういう事は起こるので、そう言う馬が5頭も6頭もいるのですから何かが起きても驚けないですね。その際にこの馬が渋太く入着するなんて事は否定できない気もします。

 

JC(GⅠ)の予想案はこちら▼