競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

エリザベス女王杯(GⅠ) 出走馬カルテ① 2023

こんにちは。

 

結局、私は3年に渡った阪神開催のエリザベス女王杯を一度も当てる事が出来なかったですね。その都度一生懸命だったんですけどね。何がいけなかったのか?ちょっと悔しかったです。

 

今年から京都に戻りますから、私も心機一転で行きたいと思います。京都の時はそんなに負けていないですし、クイーンスプマンテで大穴を、マリアライトで中穴を、リスグラシューから高配当を的中した良い思い出があるGⅠレース。得意だったころ思い出して久しぶりにこのレースを的中したいと思います。

 

エリザベス女王杯(GⅠ)は12日(日)に行われます。前日の11日(土)には更新を完了します。更新順は年齢毎のデータや傾向を分析しながら世代ごとに更新していきます。1枚目では3・4歳馬の更新を、2枚目に5・6歳馬の更新をしていきます。


3歳馬

 

96年に秋華賞が創設されて、エリザベス女王杯が3歳馬・古馬の混合GⅠになりました。02年にファインモーションが勝つまでに3歳馬の勝利は7年を要しました。当時は3歳馬が秋GⅠで古馬相手に勝つのはまだ珍しかったので、3歳馬に懐疑的な考えを持っていた私にとってファインモーションの勝利はちょっとしたエポックメイキングなレースになりました。

 

以降は3歳馬の勝利が珍しくなくなり、その翌年にはアドマイヤーグルーヴが勝利して、フサイチパンドラの繰り上がり優勝や、ダイワスカーレット桜花賞からの連勝を4に伸ばしたり、スノーフェアリーによる外国馬の勝利もありました。3歳馬に開放されてから27年の歴史には7度の3歳馬の優勝例があります。

 

過去10年の全体成績も【3・4・3・29】と馬券の三分の一は3歳馬によるもので、これは5歳馬を凌ぐ好成績です。ただ、直近5年に勝ち鞍がなく、2着も3着も1回づつと3歳馬の好走に陰りが出ています。今の傾向を踏襲して軽視するのか、そろそろ来るんじゃないの?と根拠ない閃きを宛てにするのか?そこは思案のしどころです。

 

シンリョクカ

 

府中牝馬Sの負け方はショックですね。直線で伸び負けたとかならまだ良かったのですが、脱落してしまったあの負け方はちょっとだらしなかったと思います。レース後の談話ではスローだったので馬群が一塊となり、インに潜って行く事が出来なかったと。外枠だったのも良くなかった模様。要するに、前に壁も作れず、外目を追走したことで、脚を溜める事が出来なかったのでしょう。でも、それだけでここまで負けるの?って思います。

 

他の敗因は現在分かっていませんが、+20kだった馬体重にも一因があるかもしれません。この馬は秋華賞と両睨みでしたから、秋華賞出走の際に輸送で減らさないようにと無意識に重めを残していたのかなぁとも思います。でも、それも考えにくいんですよね。なぜならこの馬は当初から秋華賞ではなく、府中牝馬Sに出走するつもりで調整がされていたからです。実際、ほとんどが成長分だと厩舎も成長力に自信を持っていたほどです。古馬GⅡでも勝ち負け出来るつもりで府中牝馬Sを使っていますので、仕上げや調整に狂いがあったとは考えにくいのです。厩舎の見立て違いの可能性ならありますけど。

 

また、レースの内容から敗因を推察すると、ヨーイドンのキレ味比べになっているのでこういう競馬が合っていなかったのかもしれません。この馬も末脚勝負で良いところがありますが、各馬が一斉に脚を使うレースに対応出来なかったようにも映ります。まだ5戦目だったので経験不足なところがあるのでしょう。いずれにせよ、もう少しはっきりとした敗因、もしくは厩舎側の言い訳がこれから出てくると思いますので、それによって評価を調整したいと思います。

 

現時点で言えるのは、古馬GⅠに向けて通用の目途は立てられなかったという事です。強気になれる材料は今のところないですね。休み明けを使った効果はあるはずなので、それ込みで改めて値踏みする必要があります。巻き返しの材料でも出てくると良いのですが。

 

さて、3歳牝馬だったこの馬が秋華賞ではなく、府中牝馬Sを選んだのは賞金不足からくる、今後の行き先に不安をおぼえたからです。勝ち鞍は新馬勝ちの1勝のみ。GⅠ2着馬と言っても2歳戦でのものなので十分な賞金があるとは言えません。このままでは思うようなところに使えなくなると関係者は考えました。今必要な事は賞金を増やし、目標のレースに向けて余裕を持って調整出来るようになること。この点を重視する時にこの2レースで賞金を加算しやすいのはどちらか?を考えたのだそうです。加算出来るのは2着まで。秋華賞にはリバティアイランドがいますから、2着に入る可能性は府中牝馬Sの方だろうというのがこの陣営の結論でした。

 

しかし、そんな経緯で使った府中牝馬Sがあんな負け方でしたから。賞金を加算したいなら自己条件(3勝クラス)から出直してくれというのが今のこの馬の実情かもしれません。こういった背景のある馬を古馬GⅠで狙い撃つのはとても勇気のいる事です。

 

ただ、やはり気を付けておきたいのは3歳馬の成長力です。食いが細い馬だったので春は攻めきれないところもあったようですが、そこが改善されたことで馬体はひと回りもふた回りも大きくなったと強調しています。結果、調教での負荷もかけられるようになっています。善戦だった桜花賞オークスの頃よりも馬が強くなっている可能性はやはり否定出来ません。府中牝馬Sの敗因に納得出来る話が出てくるようなら一考の余地は残しておきたいと思います。

 

ハーパー

 

今年の秋華賞、どうなんでしょう?全体的に物足りないレースだと思います。「京都」「稍重」と言った共通ワードを持つクロノジェネシスの19年が1:59.9、デアリングタクトの20年が2:00.6だったのに対し、リバティアイランドが勝った今年は2:01.1。時計的に物足りないと思います。

 

また、19年、20年は1000m58~59秒台で通過した前傾戦のハイペース、最後は消耗戦で地力のある馬に有利な展開でした。が、今年の61.9秒は過去10年の最遅ペース。ラスト3Fの上がりの競馬。内容的に強調出来るようなGⅠではなかったと思います。この展開だと結果にフロック性があるかもしれないですね。

 

春の時点で高い能力が証明されていたリバティにケチをつける必要はないですし、ものすご~く楽に勝てたのではないかと思います。JCへ向けての余力を十分に残せたたことでしょう。前途洋々だと思います。でも、2着以下はこの展開による向き不向きがあったのではないかと思います。結果を鵜呑みにすべきではないでしょう。

 

3着だったハーパーも先行集団のすぐ後ろに陣取っていた馬で位置取りの利を活かせれば着順はともかく、着差をもっと小さくしておくべきだったと思います。が、実はこの馬がもっとも展開の向かなかった馬とも言えます。キレる脚が使えない馬なので決め手で劣っただけと見る方が見方としては正しいでしょう。持続的な展開で脚を使った方が良い馬なので、上がりの競馬で良く3着に残せたと逆に評価しても良いのではないかと思います。

 

ルメール騎手のレース後談話にもそれは表現されていて「良いポジションでした。この位置から速い脚は使えず、ジワジワ伸びていました」と、この馬の末脚の性能を良く表していると思います。展開のアヤで仕方なかったと思います。レースを振り返るまで、2着馬に付けられた2馬身半差に絶望的な気分を味わっていたのですが、悲観する内容ではなかったと考えを改めているところです。

 

秋華賞ではオークスから+16k。馬体の成長はかなり進んだようです。厩舎サイドの話では踏み込みが良くなっていて、全体的にパワーアップしていると馬に力強さが加わった事を嬉しそうに話しています。ただ、調教で騎乗していた福永調教師は「春よりはすごく良くなっている」と良化を認めながらも、「本当に良くなるのは来年だと思う」とジャッジしていました。まだ、完成しきれていない馬でもあるようです。3歳馬だとこういう事があるので本当の能力が分かりづらい。今の成長度で古馬を相手にどこまで対抗出来るでしょうか?

 

条件面についてですが、2400mだったオークスを見ると距離は長くない方が良いと思われ、友道調教師も秋華賞の2000mがぴったりと話していました。2200mならまだなんとかなるとも思うのですが強味が出るような条件ではないかもしれません。ただ、エ杯は高速上がりになる事が少ないのでキレ味は意外と問われません。コース適性でマイナスにする必要はないと思います。

 

ブレイディヴェーグ

 

ローズSで2着に負けちゃって、その勝ち馬が世界レコードを記録して、さらにリバティアイランドまで追いつめていたので、マスクトディーヴァの活躍でこの馬の存在が少しかすんでしまった感じです。ただ、まだヴェールを脱いでいないこの馬の強さがここでより鮮明になれば、マスクトディーヴァも、GⅠ4勝のリバティアイランドでさえかすんでしまうのではないかと私は考えています。そのぐらいの可能性とポテンシャルを秘めた馬だと思います。

 

ローズSも負けて強しで、このペースでその脚使う?と思うほどの強力な末脚を披露。しかも、馬群の中で追い出せず、正味1Fの競馬。それで勝ち馬の上がりを0.3秒上回るのですからとんでもないこと。一瞬で加速出来てしまう瞬発性能は恐るべしだと思います。また、レコード決着のレースですからペースもそれなりに流れている訳であって、それでも脚を溜められていた持続性能は生半可なものではありません。持続力+瞬発力の両方を兼ね備えた総合力のの高い馬であると言えるでしょう。

 

また、私はローズSのレースの前からこの馬はGⅠ級だなと思っていたのですが、その根拠は2勝目を上げた府中2000mの勝ち時計にあります。

 

フローラS:1:58.9
∟開幕週のGⅡ
・1勝クラス:1:57.9
∟最終週の条件戦

 

こんなことがあっていいのかな?って思うぐらいにブレイディの時計が速い。開幕週と最終週である事を踏まえますととても理解しがたい逆転現象です。

 

また、この勝ち時計こそGⅠ級の証明だと思うのです。過去、3歳馬が府中の2000mで1分57秒台で走った馬はたった3頭しかいないそうです。これらはいずれもOP馬になっているので能力無くしてこんな時計では走れないのです。しかも、うち2頭はエフフォーリアとイクイノックス。2頭が天皇賞(秋)で記録したもので、エフフォーリアの勝ち時計とは全くの同タイム。6月に3歳の牝馬が出して良い時計ではそもそもないんです。こんなスーパーな比較が出来てしまう馬なんてそうそう現れるものではありません。冗談抜きにリバティアイランドより強いんじゃないの?って思ってしまいます。

 

これだけのポテンシャルを持つ馬なのでルメール騎手の期待も非常に高かったようです。なにしろ、ローズSの段階で秋華賞でのハーパーの騎乗を保留にしていたほどですから。当然、この馬が権利を獲れば秋華賞はこの馬でと言う考えでした。秋華賞時の記者会見でルメール騎手が「友道先生とは話していません」「状態はわからない」とハーパーにまるで興味を示さなかったのも何となく理解出来ます。きっと物足りなかったのでしょう。ハーパーではリバティアイランドに勝てないと分かっていたから。ブレイディで秋華賞というのがルメール騎手の本音だったのだと思います。

 

ただ、残念ながらこの馬はエリザベス女王杯に使い分けられることになりました。リバティアイランドの偉業達成の為の処置とは思うところですが、それ以外にもコース形態なども重視されたのではないかと思います。これまで直線の長い大箱コースばかりを使われているので、秋華賞の様なコーナー4つの条件でどのように走れるかが分かりません。脚質も直線ズドンの末脚特化型なので秋華賞の様な条件では取りこぼしが無いとも言えません。実際、トライアルも秋華賞に似た条件の紫苑Sではなく、阪神外回りの方が良いと考えられたからローズSに使っています。距離に関しては分かりませんが、京都外回りのエリザベス女王杯は現状の適性としてベストな選択と言えそうです。

 

能力は抜けていると思いますし、条件も悪くない。ルメール騎手もローズS時には「重賞を勝てる馬」と語っていましたが、今回の1週前には「GⅠを勝てる馬」と発言が変化しています。よほど感触をつかんでいるのでしょう。古馬との力関係次第ですが、そう気になる馬もいないので、結構やれてしまいそうに考えています。

 

4歳馬

 

エリザベス女王杯で最も活躍しているのがこの4歳世代です。過去10年で【6・3・6・45】と馬券の半数を占めています。4歳馬が馬券にならなかった年はなく、これは3歳馬、5歳馬にない強味です。

 

4歳で馬券になった15頭中の10頭が前走府中牝馬S組が占めています。やはり王道のステップレースと言ったところでしょうか?16年1着クイーンズリング、18年2着リスグラシュー、19年3着ラッキーライラック、21年7着アカイイト府中牝馬S組としてエ杯を優勝しています。今年は2着ルージュエヴァイユ、3着ライラック府中牝馬S組として出走しています。

 

他では数は少ないですが、4歳馬によるオールカマー組の好走も目立つのですが、あいにく今年の該当馬はいません。あと、ニッチな例ですが、新潟記念から直行した牝馬ラヴェルが21年に3着した例が1例あって、これに該当しているのがサリエラ。ちょっと面白いかもしれないですね。

 

アートハウス

 

ここまで1・6・1・7・1・5・1・4着と言う成績。その昔、私の大好きだったサクラチトセオーとういう天皇賞馬がいましたが、この馬は1着と6着を繰り返していたのでイチローなんて呼ばれたものですが。アートも勝利と圏外を繰り返す馬の様です。前走を負けていますから、さぁ、今度は勝つ番です!ってことで激走なんかを期待したくもなりますが・・・

 

5月に発表された骨折は6ケ月以上の休養を要すとありまして、今がその6ケ月後。エリザベス女王杯に登録して来ました。が、今の状況はどうなんでしょうか?腸骨の骨折なので脚元に影響はなさそうですが、しっかりと乗り込む事が出来たのでしょうか?普通に考えれば骨折明けの1戦がGⅠというのは厳しいところです。

 

川田騎手がハーパーの騎乗依頼をもう受けていますから、つまりそういう事なんでしょう。ともすれば、登録だけで出走未定なんてこともあるかもなぁと想像してしまうところです。また、香港のマイルとカップにダブエントリーしていますので、それを見据えた1戦と捉えるのが妥当な様にも思います。

 

一応、今年の2戦を振り返っておきます。1月に金鯱賞を走り、3月の中山牝馬Sが4着と牝馬の重賞戦線で安定して力を発揮しています。愛知杯では力のいる重馬場をこなした事でパワータイプの馬にシフトして来たと川田騎手の認識にも変化がありました。4歳になり馬の成長も進んだようで良い方向に馬が変化していく過程にありました。

 

中山牝馬Sではこの相手に負けられないと豪語していましたが、今となっては勝ち馬は別格でした。スルーセブンシーズ相手に3kも重い斤量を背負ってはそりゃぁ厳しいす。他にも輸送で馬体重を大きく減らしていましたし、トップハンデだったし、道中力んでいて、直線では前が壁。不利いっぱいで敗因はいくらでもありました。これで4着ならやっぱり強い馬だと思います。

 

今年2戦の内容から今回のメンバーでも上位級の評価が可能な馬だと思います。問題はその時みたいに力強く走れる状態にあるかどうかです。あまりいい感じはありませんが、調整過程を徹底的にチェックして、そこを見極めたいと思います。切れるなら切りたいというのが本音です。

 

ゴールドエクリプス

 

小倉記念でも一応△はつけましたが、もっと弱い馬かと思いました。マーメイドSが51kで4着、小倉記念が51kで3着、自己条件に戻って56kで優勝。結構しっかりと走っていますね。しかも、前走は夏負けの影響で本調子ではなかったそうです。額面以上の評価が必要かもしれません。前走以上で出走してくるかもですね。4歳馬なのでまだまだ上昇度がありますのでちょっと怖いところがあります。

 

何がどう良くなったとかは難しいのですが、競馬を止めてしまうクセがあったようで、最後までしっかりと走らせることが課題となっていたようです。2勝クラスを勝った際に陣営には手応えが残り、上でやっていける自信を深めたと話しています。身体的なものより、メンタル的な部分が強化されたということでしょうか?このタイミングで条件クラスでも出れる重賞に恵まれたので果敢に格上挑戦を続けていました。どこまでやれるかと言う体ではありましたが、陣営には楽しみの方が大きかったようです。

 

また、阪神マーメイドSは飲み込みそうな勢いで外から差してきましたが、坂で脚が鈍ってしまい、そこからジワジワになっています。これを受けて陣営はこの馬は平坦向きだからと小倉に条件が変わる事を強調していました。実際、阪神・中山の坂コースでは3着以上の成績がなく、京都2勝、小倉2勝と平坦巧者ぶりは成績を見ても明らかです。厩舎がこのGⅠを狙ってくるのもわかります。

 

勢いも、コース適性もあるので格下だからと侮れないところがありそうです。

 

ただ、レース成績を見てみると、昇級して、2敗して、3走目で勝利を上げる、このパターンをずっと続けています。クラス慣れが必要なタイプの様に感じられ、連勝や連続連対の出来るような馬ではないかもしれません。OP初戦がGⅠと言うのはさすがに厳しく思われ、いきなり対応して力を出し切れるかと言えばやはり微妙なように感じます。好走した近走の相手関係から見てもGⅠでプッシュ出来る材料を見つけるのは難しいですね。気になって押さえぐらいの評価が精一杯じゃないでしょうか?

 

サリエラ

 

思い返せばこの馬も昨年のローズS2着で秋華賞への権利を獲りましたが使わせてもらえませんでした。ただ、サリエラの場合、成長が遅れていて3歳夏期を越しても思うように成長していないと国枝調教師は泣いていました。ので、1戦1戦大事に使われています。出てくればほぼ必勝と言う状況で馬券圏内から漏れた事がありませんでした。

 

そんな馬が新潟記念で7着に敗退します。敗因はこの馬らしくないもので、順調さを欠き完調に仕上げる事が出来なかったからです。新潟記念の1週間前に落鉄して挫跖。大したことはないと関係者からGOサインは出ましたが、調教を手控えた分思うような仕上げになっていないという関係者もいて、微妙な感じで新潟記念に使われています。

 

レース後にルメール騎手は「返し馬の時から良い感じではなく」「スタートしてもハミを取らず」「瞬発力を見せられませんでした」などレースでの敗因を話ていますが、全て状態が良くない事から出たものだなぁと思わせます。

 

以上の事から新潟記念は度外視で良いでしょう。最後はジワジワと詰めて、0.4秒差まで来ていますから、絶望的な敗退ではないですし、牝馬の55.5kで実質2番目に重いハンデも課せられていましたから、不十分な状態で走った内容としては悪くないんじゃないでしょうか?

 

忘れがちなことですが、この馬もスルーセブンシーズと一緒に凱旋門賞の予備登録をしていましたね。何の冗談だろう?と当時は思いましたが、目黒記念を勝っていたら遠征が実現していた可能性はあったみたいです。国枝調教師もまんざらではなかったみたい。あいにく目黒記念は3着だったので夢が実現する事はありませんでしたが、そういう素質のある馬と再認識しておく必要があるかもしれません。

 

それに、目黒記念3着ぐらい走れれば、上位に採っていいんように思います。負けたとは言え、牡馬の強いところとやっての結果ですし。それに、この時もハンデは55.5kで牝馬にしては背負わされていましたから、負けて強しとする事も出来ます。新潟記念の敗退で人気を落とすなら面白い存在になるかもしれません。

 

特徴としては、レースの流れに合わせて位置取りを調整出来る賢い馬です。コントロール性も良いですし、騎手の指示通りに動けます。また、2000mは守備範囲と言う感じで距離は長い方が良さそうです。少々ズブいところがありますので、私もそのように感じます。

 

2000mの末脚と目黒記念の末脚を見比べてみても2500mの方が末脚に威力があります。ビュンと加速出来る瞬発力よりも長く良い脚を使う持続性のある末脚なので、スピード色が強まる中距離よりも、エ杯ぐらいの距離の方が末脚はより際立つと思います。

 

また、左回りオンリーな競走成績ですけどクセの無い馬なので問題ないのではないでしょうか?むしろ、長く脚を使うこの馬にロングスパート出来る京都の外回りは合っているように思います。

 

距離・コースの潜在的な適性は感じますし、大事に使われて来て素質もある。結構、やれるのではないかと思います。状態次第でやっぱり面白いと思います。

 

ただ・・・

 

サリオスの妹という血統馬で、国枝厩舎の期待馬、だからルメール騎手も喜んで騎乗していたんですけど、それでもやっぱり今回はブレイディヴェーグを選ぶんですね。ブレイディが相当強そうです。

 

ライラック

 

戸崎騎手が京都に乗りに来ますね。これは滅多な事ではないですね。大きなレースがあっても目の無い馬なら地元開催を優先する方なのは有名な話。今回のライラックは前走乗り替わったばかりで思い入れの強い馬とも思いません。それでも遠征するのですから手応えを感じているのかもしれないですね。

 

知っている人なら誰でも知っている、それぐらい有名な話なのですが、昨年の秋華賞からデムーロ騎手とライラックの担当スタッフの確執がずっと続いていました。担当さんの言い分では後方から競馬をするデムーロ騎手の乗り方が気にくわないのだそうです。どうせまた後ろから乗るんだろう!とレースの度に怒っていました。常に鞍上変更希望だったみたいです。でも、デムーロ騎手もエリザベス女王杯2着などちょいちょい上手い時があるので、馬主判断で鞍上はそのままとされていました。私はまた聞きでしかこの話を知りませんが、それでも結構酷かったなぁという印象です。

 

デムーロ騎手が府中牝馬Sでデヴィーナを優先したのを口実にようやく待望の鞍上変更がなされ、紫苑Sでも3着と結果を出していた戸崎騎手が騎乗する事になったのです。なお、戸崎騎手に依頼したのも馬主さんが直接依頼したのそうです。とても律儀な馬主さんのようです。

 

ただ、戸崎騎手の騎乗でライラックの担当さんの言っていたことに説得力が加わりました。後方で脚を溜めて、機動力を武器にマクって動くのがデムーロ騎手のパターンでしたが、その乗り方を否定するかのように積極策。先行集団すぐ後ろの5・6番手で競馬をした姿には驚きました。また、先行ポジションでもしっかりと脚を溜めて33.0秒の末脚とこれまで使ったこともない末脚を披露。先行した方が脚が溜まっていたのですからなんとも皮肉な話です。前残りの展開も味方しましたし、時計がかかった方が良いこの馬に1:46.1だった勝ち時計も都合が良かったことでしょう。上手くいくときはいろんなことが噛み合います。ともあれ、久しぶりの馬券圏内好走に力の衰えの無い事が確認出来ました。

 

また、担当さんもむやみやたらと怒っていた訳ではないようです。怒りのきっかけとなった秋華賞でも物凄く良い状態に馬を仕上げられていたので勝ち負けになると自信を持っていただけに、デムーロ騎手の乗り方に裏切られたと感じたのだと思います。以降のレースでも馬はとても良い状態だったのですが、どんなに仕上げてもあいつが乗ったら意味ねえじゃん!みたいな気持ちだったようです。

 

そもそもこの方は厩舎随一の仕上げ上手らしく、ライラックの状態もずっと良かったという話。前走でようやく報われた感じになりましたが、今回もばっちしり仕上げてくれると思います。ここまで悪態づくしでしたから、下手な仕上げなんて出来るはずもなく、超メイチな仕上げを施して来ると思われます。

 

ライラックにとって最悪の不安材料が解消されたのですから今年のエリザベス女王杯も激走可能でしょう。コースは違えど、エ杯はリピーターレース。昨年2着の実績がモノを言うかもしれません。

 

適性的なものを確認しておくと、今年の緒戦だった日経賞天皇賞(春)を見越して使っていたので距離は合った方が良いタイプとされています。2200mぐらいは走り頃でしょう。距離延長はプラスになります。ただ、道悪希望の話をいつもしているパワータイプでもあるようで時計が速くなる決着だと強気になれないかもしれません。天気・馬場状況は評価を変化させる材料になります。コース適性に関しては、阪神内回りだった昨年のエ杯2着や中山での走りを見る限り、機動力で勝負した方が良い馬だと思っていましたが、前走を見るとその考えを改める必要があります。乗り方一つで府中のような大箱コースでも力を発揮出来るなら、京都の外回りコースもこなせるだろうと考えておく必要があるでしょう。

 

ルージュエヴァイユ

 

ライラックとは逆にこの馬は戸崎騎手が脚を引っ張ていた感じですね。戸崎騎手が降りてからは重賞で連続2着と好走しています。ただ、四肢のバランスが悪いので乗り難しい馬とされています。戸崎騎手が降りてから鞍上が固定しておらず、今回も乗り替わり。それで結果が出ているので実際はそんな事はないのかもしれませんが、クセ・特徴を把握していない騎手が乗るのは良い事とは言えません。今回の松山騎手が上手く力を出し切ってくれると良いのですが。

 

展開を踏まえると、府中牝馬Sで最も強い競馬をしたのはこの馬ですね。逃げたディヴィーナが大逃げしたかのようになりましたが、ペース的には至ってノーマル。1000m通過は60.0秒で丁度良い展開。4・5頭の先陣争いから行く馬がいなかったテンからもっさりとした流れ。1・3着馬が前残りしたように位置取りが明暗を分けたレースです。出走馬に34秒台以上の上がりを要した馬はなく、全馬が33秒台を記録したよーいドンの競馬。向こう正面で離された後方2番手のこの馬には不向きな展開だったと思います。

 

それだけにレースで見せた内容は素晴らしい。途中から位置取りを上げていて、レース中にポジション調整出来た器用さは良かったと思います。直線をむくまでに8番手に押し上げて、上がりを32.7秒まで高速化させています。この立ち回りは素晴らしい。負けて強しで良いと思います。

 

この馬を観察しなおすと、昨年秋に復帰してからずっと調子は良いですね。出遅れに道悪だった愛知杯、メイSでは直線で包まれて不完全燃焼、敗因がはっきりとしている負けた2戦を除けば、常に賞金を加算し続けています。3歳の春までは後方に置かれるレース振りでしたが、昨秋ぐらいからその点は改善されていてある程度の位置を取れるようになり成績が安定して来ました。エプソムCでは2番手の競馬が出来るまでになり、前走も後方から道中で位置取りを押し上げていて、レースの流れに合わせてポジションを調整出来る自在性まで身についています。繰り出す末脚も安定していて確実に勝ち負けに加われるようになっています。

 

このように良い状態の時に、良い条件のGⅠに挑めて、最高のタイミングだと思います。今回のメンバーは何頭かを除けば、明確な力差のない組み合わせですからこの馬が入着してきても不思議ではないと思います。

 

ただ、やっぱり府中中心の戦績は気になってしまう材料。輸送競馬の経験もほぼ無いので、京都で、その輸送で従来の力を発揮出来るかが課題となるのは仕方ないですね。充実している馬なのでそれすらも克服するのかもしれないですが。押さえの必要性は感じますが、重い印を回すのは勇気のいる事だと思います。

 

なお、今期はエリザベス女王杯を目標に調整されています。前走の府中牝馬Sは1週前に間に合ったという状況になっていましたが、攻めきれていないところもありました。絶好調という状態で前走を走った訳ではないので上がり目が大きな1頭になると思います。

 

このページはここまで。続きはこちら▼

エリザベス女王杯(GⅠ)の予想案はこちら▼