競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

日本ダービー(GⅠ) 出走馬カルテ①

こんにちは。

 

19年ロジャーバローズが2:22.6→21年シャフリヤールが2:22.5→22年ドウデュースが2:21.9と近年はレースの度にレコードが更新されている感じです。昨年が一気に0.6秒も更新してしまったのでそれ以上という事はなさそうですが。それでも時計は速くなるでしょう。ダービー週にはBからCにコースが変わりますので。今年の皐月賞は重馬場で行われましたので違った様相のレースになりそうです。相関性を見出すのは難しいかもしれませんね。

 

さて、ダービーの焦点はいろいろとありますが今年重要そうなのは騎手の動きだと思います。皐月賞から出走してくる馬は11頭もいるのですが半数近い5頭が乗り替わっています。また、レーン騎手、武豊騎手、戸崎騎手、川田騎手などトップジョッキーも新たな乗り馬でダービーに挑みます。これらは騎手の思惑が働いているケースが少なくありません。

 

思い返せば傑出馬不在の混戦模様だった皐月賞。レースが終わって世間的には確固とした勢力図が見えたのかもしれませんが騎手達にしてみるとまだまだそんな事もないみたいです。今回はダービーなので特別に騎手の乗り替わり事情について下記で触れておこうと思います。

 

日本ダービーは28日(日)に行われます。前日の27日(土)には更新を完了します。1枚目では騎手の乗り替わり事情についてと皐月賞組から更新していき、文字数の丁度良いところで2枚目に移ります。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

騎手の乗り替わりについて

 

まず、皐月賞からの乗り替わりから見ていいきます。

 

・2着タスティエーラは松山騎手→レーン騎手
・3着ファントムシーフがルメール騎手→武豊騎手

 

この乗り替わり2件に共通していることは皐月賞好走馬より青葉賞好走馬を選んだということです。ルメール騎手も松山騎手も権利を獲ったら本番はこちらでと最初から決めていたそうです。いわゆる「これよりもこれ」の乗り替わりですからルメール騎手はスキルヴィング、松山騎手はハーツコンチェルトの方に可能性を感じていると考えて良いでしょう。

 

なお、これと同様の話がデムーロ騎手にもありました。青葉賞で騎乗していたヒシタイカンが権利を取ったら皐月賞5着ショウナンバシッドではなくそちらに乗るつもりでいたようです。

 

他では

 

・べラジオオペラが田辺騎手→横山和騎手
・ホウオウビスケッツが横山和騎手→丸田騎手

 

田辺騎手は元々代打でしたからプリンシパルSで権利を取ったお手馬パクスオトマニカの方へ。べラジオは横山武騎手が連続で騎乗していた馬なので良くある兄弟繋がりで横山和騎手になった模様。この横山和騎手はホウオウの主戦でしたからこちらは見限られたという事になりますね。まぁ、スプリングSの直接対決で負けた馬ですから無理のない話です。

 

次に皐月賞の騎乗馬がダービー未出走となった事で別の馬に騎乗するケースを見ていきます。

 

川田騎手は自身が高く評価していたフリームファクシにも乗れたのでしょうがサトノグランツを選らんでいます。京都新聞杯を勝てたらダービーはこの馬と最初から決めていました。馬の適性を考えての判断のようです。

 

そのフリームファクシに騎乗していたレーン騎手は皐月賞後に騎乗馬未定となっていました。結果が出なかったので見限ったという見方は出来ると思いますが、この辺は便利な代打屋としてノーザンFの意向が強く働いているでしょう。タスティ騎乗は可能性がある乗り替わりと考えられます。

 

武豊騎手のファントムシーフ騎乗はルメール騎手と同じエージェントによるスライド手配ですね。このチェンジも良くあるものです。あと、事情は良くしらないのですが戸崎騎手のシーズンリッチ騎乗はまぁあれでしょうね。前走騎乗の新人が騎乗停止中だからでしょう。特に意味はないと思います。戸崎騎手が調教をつけに栗東に行ったかどうかでその温度は分かると思います。

 

騎手の話はここまでです。以上の事からイル馬イラナイ馬がぼんやりと見えてくるのではないでしょうか?

 

皐月賞(GⅠ)

 

横山武騎手は皐月賞2勝目となったがその勝ち時計はどちらも2:00.6だったのは面白い。21年エフフォーリアが勝った時は稍重だった。20年のコントレイルが勝った時も稍重で2:00.7だった。道悪の皐月賞はこのぐらいが標準的な時計であるようだ。ただ、20年、21年は青天下で行われていたので回復傾向にあった稍重で比較的時計は出やすい状況だった。これらと比べると降雨中の中行われた重馬場の今年の勝ち時計はずっとタフな状況である。コント、エフフォの時以上に価値のある走破時計だったと言える。

 

今年の展開は逃げたグラニットが1000mを58.5秒で飛ばしていったハイペース。馬場状況を考慮するとかなり厳しい展開で先行馬には厳しい。これに加えてインコースが荒れており馬場は外差し傾向が強くなっていた。先行馬が失速するのは早く1600m手前ぐらいには一様に止まっている。ここで前と後がごっそりと入れ替わり追込み決着の競馬となっている。

 

2着タスティエーラ(⑤⑥⑥④)、4着メタルスピード(⑨⑨⑧⑧)を除けば、9着までの全ての馬が道中10番手以降をのんびりと控えていた馬達が占めている。そう言う意味では勝ち馬ソールオリエンスも含めて展開がハマった馬が着を上げる事が出来たというレースである。展開や馬場状況から特殊なレースになっているので能力通りに決着していない可能性は頭に入れておきたい。

 

しかしながら、勝ったソールオはやはり走りが別次元。上がり上位の馬は展開がハマった上で使えた上がりが36秒中盤。それをれを1秒近く上回った35.5秒の末脚は超抜群。その他とは画一的な脚を使っている。先行して失速した馬達と勝負付けが済んだとは言えないが、同様に追い込んだ馬達に負けるシーンは想像しづらい。

 

以上のことから、逆転があるとしたら展開や馬場が合わなかった先行馬の中にいると考えるべきだと思う。とりわけ先行しながら2着と脚を伸ばしたタスティの強さはちょっと異常。これだけの道悪をこんなにも速いペースで行けばラストは普通消耗戦になるもの。しかし、実際には12.7-12.5-12.0の加速ラップ。これはこの馬自身が突き抜けてレースのラップを吊り上げてしまったからだ。本当に強かったのはこの馬かもしれない。

 

なお、3着ファントムシーフは落鉄の影響で勝負所で後手を踏んでしまってのもの。最後は伸びていたように脚は余っていたと考えられる。展開ハマりの負け組の中では巻き返しの余地があるとしておきたい。

 

1着:ソールオリエンス

・走りの質やレース振りには素質馬の片鱗。510kの大型馬で走りも雄大。スケール感は隠しようがなかった。

 ・京成杯はレースの内容や出走馬の質が悪いので評価を高く出来ないが、瞬時にギアがトップに入る瞬発力の性能は素晴らしかった。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

京成杯から3ケ月間隔があいていたがレース振りはあまり変化なかった。最内枠を嫌ってか後方に下げてから外に出すという立ち回り。そのまま後方追走となった。横山武騎手は進んで行かなかったと言っているがこれは本当だろう。道中は気合を付けながらの追走で行きっぷりの悪さは京成杯の時と同じ。3~4角の勝負所でも全然動けずに押し上げてくる事が出来ずに最終コーナーに向かう。そしてまたしてもコーナーで膨れてしまいこのロスで前との差はさらに開いてしまった。直線入り口最後方と言う位置取り。普通の馬ならこれで終了。立て直すことも出来ずに脚を使えないまま終るパターン。これで来るのだから凄い。助走区間もなしにいきなりトップギアに入るこの馬の瞬発力性能はとても素晴らしい。ただ、この点においても京成杯と同様。瞬発性能だけで無敗を続けているようなもの。結局、中山コースを器用に立ち回れる馬ではなかったということになる。レース巧者のイメージは無い。よくこのコースを2戦2勝でクリアしたものだ。

 

こんな立ち回りで勝ててしまうのだからその他の相手も大概である。牡馬路線のレベルはやはり高くないのだろう。実際この馬はリバティアイランドより弱いそうだ。そういう話を横山武騎手自身がしている。だとしたら無敗のままダービーを勝ったとしてもこの馬がヒーローとなることはない。安室ちゃんが泣いている。

 

でもまぁ、現状は牝馬とも他世代とも走らないのでここは有力な1頭で間違いはない。コーナリングの不器用さを見ても広々とした府中なら上手い事クリアしてくれるだろう。器用さの無い走りも大箱コースなら問題にならない。今のところ末脚勝負で勝っているに過ぎないこの馬にとって直線長い府中は歓迎材料。道中で置かれ過ぎなければ直線だけで面倒を見てしまうシーンは想定しておかなければいけない。

 

成長度的にはまだまだらしく完成は秋以降になるそう。その分良くなる余地が大きい。中5週の間にもさらに成長してくる事も考えられるので皐月賞以上の状態に整う事も十分可能だと思われる。

 

2着:タスティエーラ

・先行しながら差し馬並みの末脚を使う。タイプとしてはエフフォーリアにかなり近い。

・直線追い出してからもたつく点は少々気になった。

・勝負所でスブい面がある。瞬発的な性能が高くないのだと思われる。軽く促すだけでは動けないのだろう。

・末脚の量はかなり豊富だと思われる。追えば追うほど伸びるところがあり、加速は弱いが長く脚を使えるので諦めずに追っていればチャンスが出て来る。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

見た目の印象だけでも十分強いがパトロールを確認するとその印象はさらに強まる。5番手先行と言うレース運びだがインには潜らず終始馬場の良いところを選んで先行集団の外目を追走していた。コーナー区間でもラチからかなり離れたところを行っている。だから3~4角の勝負所でスムーズにマクれて来れた。馬場状況を考えれば最良の策だが、普通に考えればコーナー4つのコースで外々を先行するのは距離をロスする悪手である。それで直線で抜けだすのだから凄い。

 

このレース運びで脚が溜まっていたとは思えないのに最後の2Fで加速ラップを踏むのだから恐れ入る。この加速ラップはこの馬の余力が如何に大きかったかを物語るものである。体力無尽蔵と言う感じ。逆バイアスのレース運びで距離のロスも大きい。ほんとよくこれだけ走れたものだと感心してしまう。負けて悔しい2着だが超強いレースぶりだった。高めの評価をしないといけない。

 

ただ、基本的に勝負所でズブい馬なので道悪でラップが速くならなかった事でスムーズに動けたという事も考えられる。時計の速いコースでは共同通信杯の様に動ききれない可能性がある。決め手優秀と言うタイプでもない。高速決着になりやすい府中が良いとは言い切れない。堀調教師もディープインパクト記念で中山を使う際にこちらの方が向いていると話していたことがある。府中でパフォーマンスが上がるかは微妙かもしれない。

 

ただ、オークスと違ってダービーは上がり最速馬の優位性が下がる。昨年の1・2着馬は強烈な末脚を駆使して直線一気を決めたがこういう事が必ず起こるレースではない。本質的にはCコース変更の影響が出やすい。その為4角を7・8番手ぐらいで回ってきて、早めに抜け出し、そのまま押し切る馬の方が出番が多い。

 

例)

19年優勝ロジャーバローズ(②②②②)
20年優勝コントレイル(③③⑤④)
22年3着アスクビクターモア(②②②②)

 

このようにこの馬の個性や脚質でも出番が回ってくる事はある。加速は弱いが長く脚を使える馬で追えば追うほど伸びる事が出来る。皐月賞や府中の新馬戦では早めの競馬から加速ラップが踏める馬。そう言う競馬が出来ればやってやれない事はないと思う。

 

3着:ファントムシーフ

・立ち回りは上手く、最終コーナーでの反応も良い。気性に難しい面もないので乗り方にも注文はつかない。評価は高めの方が良いと思う。

・追い出してからの反応は少々鈍く前の馬交わすのにモタついている。この馬が勝ったレースはいつもそんな感じ。勝った3勝はどこか危うい。決め手があるようには思えない。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

序盤からすんなりと先行して共同通信杯の様なレースをして欲しいという厩舎のリクエスト。ルメール騎手も発馬を決めてそのつもりで先行位を獲りに行こうとしていた。しかし、1Fも走らないうちにペースが速くなることを見極めたのだろう。スタンド前からは控えて下げて最初のコーナーを11番手で回って行った。この辺の判断はさすがルメール騎手。また、馬も騎手の思うままに動くのだからとても賢い印象。素晴らしい自在性がある。

 

こうしてレースの流れに乗ったがそこからが不運続き。向こう正面で落鉄していて追い出してからモタれてしまうロス。道悪で力のいる馬場だと鉄があるかどうかで走りは全然違っていただろう。また、直線に向いてからは開いていたはずの進路に4着メタルスピードが外にヨレてきた。ここでブレーキを踏んでしまう。インに切り替えるロスは痛かった。普通の馬なら致命的な不利だったと思う。それでも接戦だった4~6着馬を競り落とした辺りが地力の現れ。落鉄しなければ、直線スムーズだったならとは誰しも思うことだろう。1・2着馬に力負けしたという評価には出来ない。成績表の通りこの馬も上位勢力である事は再認識出来た。

 

これで5戦3勝となり負けた2敗は中山のGⅠ。それぞれに敗因はあったが結局中山2000mは攻略出来なかった。器用さもそれなりにあったが、一瞬の加速やキレ味が他の馬と比べて劣るのでそれが機動力となって発揮されていない。厩舎も中山よりも府中の様なコースで長く脚を使った方が良いと考えている。3勝の内容も阪神の外回りと直線の長い中京と府中。コース適性に敏感なタイプであるようだ。ダービーの舞台は本領を発揮しやすい条件となる。

 

しかし、3勝の勝ち方はどこか危ういものばかり。この3勝はいつも鞍上が持ったままで先頭に立とうとするのだが交わせずにモタついていた。間に合いそうにないから慌てて鞭を入れている面もあった。いずれも直線での突き抜けが甘い。案外決め手がない。使える脚は長いがその末脚を最高速度に高めるには長めの助走区間が必要である。スムーズに立ち回ってブレーキを踏むことなくノンストップで脚を使い切りたい。溜めて脚を引き出す騎乗が好きな武豊騎手と手が合うイメージはあまり持てない。そういう風に乗ってくれるかどうか?テン乗りの不安は残りそう。

 

4着:メタルスピード

・スタートが上手く、ポジショニングも上手い。常に器用に立ち回りレース振りも安定している。減量騎手の起用も無くコンスタントに好走して来た点は評価しておきたい。

・先行しても、控えても一脚、二脚足りなかったが、ブリンカーの効果、馬体の成長などが噛み合ってきてから走りに力強さが加わった。今は軌道に乗っている。

・厩舎サイドはスプリングSかNZTの2つを秤にかけていた。マイル寄りな距離適性?

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

スプリングS組で最先着となる4着。13番人気だった。良いスタートを決めたが17番枠だったので急かさずにポジションを探しながら序盤はそろっと乗っていた。1~2角ぐらいには中団9番手に収まっている。ハイペースの中前過ぎず後ろ過ぎずの良いポジションだったと思う。先に仕掛けたタスティエーラに追随する感じで追い出され行った。今回も力を残して直線を向いてきて一瞬は突き抜ける手応えで前を追った。が、坂を上ったところで勢いは無くなった。津村騎手曰く最後は疲れてしまったという。

 

手応えの割に伸びきれなかったのは距離適性意外に考えられない。この馬はマイラーである。スプリングS出走時にはマイル重賞のNZTと両睨みしていたし、厩舎も将来的にはマイラーと言う認識を持っている。だからダービーにも登録していなかった。今回は追加登録料を納めての出走となっている。とは言え、良く走り馬は頑張ったしエライ。良い馬である事は間違いないし、NHKマイルCに出走すれば勝ち負けの可能性があったのではないだろうか?

 

こうして思うと2走前のレース選択が運命を変えてしまったんだろうなと思ってしまう。スプリングSで権利を取ってしまったので皐月賞に。皐月賞で権利を獲ってしまったのでダービーに。この辺がクラシックの魅力と言うか魔力なのだろう。馬の適性を無視しないといけないので残念な気分になってしまう。スプリングSではなくNZTに出走していれば今GⅠ馬だったかもしれない。400m伸ばすより400m縮めた方が良いに決まっている。

 

馬は成長曲線上昇中なので良い状態で今回も頑張ってくれると思う。でも、本格化に時間をかけてしまったので今年5戦目の臨戦過多。さすがに距離適性を補えるほどのデキに仕上げるのは難しいだろう。

 

5着:ショウナンバシット

・勝った3勝は少頭数の上相手関係も楽なもの。しかし、負けた2戦はベラジオオペラとシャザーンでそれなりに強い馬と接戦した。弱いという事はないと思うが判断が難しい。

・重馬場でのレースが多いので時計的な価値を見出しにくい。実力の程を測りかねてしまう。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

デームロ騎手の手綱さばきが巧みで絶妙だった。馬なりで後方5番手と言うスタンド前。2枠4番を活かして道中はインべったり。逃げたグラニットよりインをだった。ラスト5Fから動かしていき3~4角もラチ沿いからスイスイと掬い上げる。直線入り口では前と後の馬群が入れ替わるタイミングで出来たスペースを利用して馬場の良い中央に抜け出してきた。これで各馬との差を一気に挽回してしまった。そのうえ後続との差まで拡げてしまう。芸術的な立ち回りで感動的だった。すっかりムラのある騎手になってしまったが最高のパフォーマンスを発揮するとやはりトップジョッキーとしての凄みを見せる。NHKマイルCでもとんでもない馬で勝ち負けして来た。良い時と悪い時の幅が大きいのでこの人本当に困る。

 

馬に関しては道悪適性を遺憾なく発揮した。馬場が掘れているインコースでこれだけ動けて、終いの脚を伸ばせるぐらいの脚も溜まる。相当な巧者ぶり。小回りを器用に走れる機動力も改めて確認出来た。良い内容の5着でさすが約3億もする高額取引馬。ただ、こういったものは戦前から見て取れたこの馬の特徴そのまま。馬場状況も含めて皐月賞はかなりこの馬向きの条件であったと言える。

 

それだけにタスティエーラに並びかけながら突き放されたり、外を回した各馬に交わされてしまった事実は重く受け止めざるを得ない。それまで1位か2位かだった末脚も上がり順で6番目に落ちてしまっている。GⅠだと脚力が際立たなくなった。適条件で力を出し切ったことからも力で負けていると言わざるを得ない。ほぼ同じメンバーとの再戦になるのでここは相手が強いということになる。完璧な乗り方でもあったのでこれ以上は難しいのではないか?

 

また皐月賞で新味がなかったことでダービーに向けて明るい条件も出て来なかった。それにローテションから見ても厳しそう。本来はすみれSを勝って皐月賞に向かう予定が狂い若葉Sを使ってしまった。これは陣営にとって誤算になっていて絶好調の状態で皐月賞を使えなかったとのこと。今年の5戦目になるので上がり目は乏しそう。また、厩舎でその気があったのは圧倒的にフリームファクシの方だった。素材的な評価も少々微妙になって来た。そこまで悪い馬ではないのだが力関係、適性、馬場、ローテ、評価などいろいろと微妙でダービーでプッシュしづらい現状である。良馬場でどのくらいのパフォーマンスを見せるのかもわかりづらいので強調しづらい。

 

6着:シャザーン

・全戦でドスロー競馬を速い末脚を使って好走している。地力の問われた経験がなく、底力を証明するようなレースはない。が、パーツ毎に見ていくと侮れないところがある。

・未勝利戦では後半を57.8秒で駆けた点で評価が高い。最後の1000mを失速無しで駆けた持続性は高めに見積もる事が可能。

・レース上がりが33.8秒だった上がりの速いすみれSを最後方から差したのは優秀である。阪神の内回り条件で33.1秒の切れ味はほとんど見た事のない快記録。

・先行、追い込みと脚質に幅があり、どんな立ち回りも可能な点も操縦性の良さを感じさせる。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

他の上位入線馬と同じで後方待機から外差しで好走。直線で手応えが無くなるのが早く伸び負けた格好。同様の立ち回りで好走した馬の中ではもっとも非力な感じが出た。特に不利らしいものはなかったが、強いえて言えば勝負所のコーナー部分で最も外を回っていたのがこの馬なので距離のロスが大きかったというのはある。ただ、その程度で伸びが止まってしまっているのなら地力の面で力差があったことは十分に伝わってしまう。すみれSで僅差で負かしたショウナンバシットとタイム差のない入線からもこんなものかもしれない。勝ち筋に乗った競馬で力は出し切れているているので力負けと言うことで良さそう。

 

スローの後傾戦ばかりを好走していたので皐月所の様な前半にタフな流れは初経験だった。馬場状況に関わらず後半に速い脚を使う事が出来る馬なのだが、これまでは前半部分で消耗の少ないレースばかりだったので勝手が違っていたのだろう。岩田望騎手はレース後に「どこかで巻き返してくれると思う」というコメントを残したが、その言い回しからもそのどこかがダービーでは無いという雰囲気は出ている。力差を痛感したのかもしれない。

 

瞬発力を活かしたり後半に速い上がりを記録出来るという点で府中は良い条件だが、近年でレコードが頻発しているようにダービーでは総合力が問われる。単純な上がりの競馬にはならない。皐月賞と同様に終いが中途半端になってしまうかもしれない。きつい流れの皐月賞を経験したことで馬が変わって来れば良いと思うが劇的な変わり身となるとどうだろうか?やはりダービーは岩田望騎手が言うどこかではないように思う。

 

なお、厩舎ではダービーでピークになるように皐月賞を使っている。賞金的にそんな資格はなかったが友道厩舎らしく最大目標はダービーに置いていた。状態面は確実に上向くはずで、調子の良さで巻き返す余地を多少残している。

 

7着:トップナイフ

・レースを使う度にスタートや行きっぷりが良化している。

・ラストに加速するギアは無い感じ。ワンペースの競馬を常にしている。ただ、加速はしないが、減速もない(止まらない)。

・緩急の有るレースよりも、タイトな持続戦で良さが出るタイプと見ていい。

・逃げ、先行、差しと自在性があり、操縦性も高くなった。今ではトリックスターの思いのままに動く。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

思いっきり出遅れてしまった。1コーナーは最後方の一線だった。厩舎は逃げるぐらいが丁度よいと考えていたので後方待機では競馬にならない。この馬の特徴は加速もしなければ減速もしないその持続性能にある。ラストに速い脚を引き出すのは身体的に不可能でこんな競馬ではどうにもならなかっただろう。それでも2番目に速い脚を使えていた事はこの馬としては収穫で本来の競馬をした時にこの経験が活きてくるかもしれない。まぁ、力負けではなかったし度外視出来る1戦。勝負付けが済まされなかったことで巻き返しの余地を残せている。

 

前走だけで軽視は出来ない。ドバイでもそこそこ走った2歳GⅠ馬とハナ差を演じた馬なのでダービー好走の可能性は否定できない。ただ、4走前が阪神2000mで、近3走が中山の2000m。コーナー4つの小回り条件ばかりに走りが特化してしまった感がある。府中コース好走の下地が見えにくい。直線長い中京の野路菊Sで完敗の過去もある。立ち回りで勝負して直線で一脚使う競馬で好走してきただけに長い直線の叩き合いでどこまで辛抱できるだろうか?決め手勝負になるとやはり上位馬の末脚には敵わないと思う。

 

だが、この馬は展開の鍵を握る1頭。逃げた場合は注意がいる。近2走は逃げれていないが厩舎サイドはそう言う競馬の方が良いと考えているのでこの手は十分考えられる。横山典騎手が逃げると速い流れにはならずペースを落とせるところまで落としたり、緩急の多い流れにしたりと変幻自在。そうなった場合にリズムの合う馬、合わない馬は出て来るので人気通りに決まらないシーンも発生する。当然この馬の残り目も出て来る。

 

この馬(人)が逃げた場合の展開想定は常人には理解しづらい。それと考えたくはないが親心で武史騎手が力を発揮しやすいペースなんかも作ってしまうかもしれない。横山典騎手は今年最大の不確定要素となりうる。厄介な人が厄介な馬に乗っているのでちょっと困る。なお、過去10年での逃げ馬は2着1回3着1回。最後に勝ったのは97年のサニーブライアンが最後。普通なら逃げ馬には厳しい。

 

9着:フリームファクシ

・気性が前向き過ぎるようで前進気勢が強い。使う度に折り合いが悪くなって来ている。

・折り合いを欠きながらでも、追い出してからちゃんと反応してシッカリとした脚を使えているので評価を低くくする必要なない。

・デビューから2000mに拘って使われていて府中・阪神・中京と特徴の異なる舞台で結果を残している点は評価出来るところ。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

レーン騎手は馬場のせいで脚を使えなかったと話していたがディアドラの下のルーラー産駒にそんな事はないと思う。脚を使えなかったのはこの馬が先行馬だからだろう。スピードが勝っているので掛かり気味に先行して押し切って来た馬。後方から脚を使った経験が無い。徐々にスピードに乗せていくスタイルなので勝負所の急加速はこの馬には忙しかった印象。肝心なところで動けなかった。厩舎も前々で運んでいればまず崩れないと話していたのであの位置取りはこの馬のポジションではなかった。

 

スタートから先行を伺ったが流れを見越して後方に下げたレーン騎手の判断は攻められない。しかし、この馬の脚質を考えるとこの乗り方は不正解だった。あのペースでも自分の競馬をしていた方が着は良かった気がする。いずれにせよ不本意な競馬であったことには違いない。この馬もまた力を出し切れずに負けたクチ。

 

厩舎としてはダービーよりも皐月賞のスタンスが強かったように思う。力み勝ちに先行するので2400mよりも2000mの方がレースがしやすかったというのがあるからだろう。前走を勝ちに行っている分上がり目は大きいものにならないと思う。しかし、この馬があのポジションで競馬を出来た事は奇跡に近い。スタンド前で引いた際にも逆らう素振りは見せていない。力みがちな走りに変化はなかったが鞍上の指示に従えるようになっていて我慢は出来ていた。これは大きな収穫である。ここまで我慢を教えてきた事が成果となって現れたのだと思う。モマれる競馬が出来たのも良かったし、操縦性も良くなっていた。この馬なりの進化は確認できたし、経験値は上がったように思う。これならダービーでも可能性が出て来たかもしれない。

 

皐月賞におけるこの馬の評価は物凄く高いものだった。周りで調教を付けていたライバル騎手がこの馬の動きをみてこの馬に勝たれてしまうだろうと話していたし、川田騎手も調教師に皐月賞を勝つのはこの馬ですと断言していた。須貝調教師も力は抜けているという評価だった。栗東界隈ではこの馬の評価が圧倒的であった。あいにく負けたがこれほどの評価のあった馬を不本意だった皐月賞だけで見限るのは早計かもしれない。強さを隠して出走してくるだけに不気味な存在となりそう。

 

10着:ベラジオオペラ

・スタートをポンと出て楽に先行ポジションを取り押し切っている。

・2戦2勝のメンバーは1勝クラスでは力のある馬ばかりなので能力はありそう。

・道中で気合を付けているので馬はまだ本気で走っていない印象もあるが、促せば馬は動いてくれる。馬の自主性は高くないが、操縦性は高い。

・先行2連勝の馬だったので控えても強かった内容は良かった。脚質の幅をGⅠ前に確認出来たのは収穫が大きい。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

先行して潰れた馬なので特別言う事もないがスプリングSの様に控えた競馬を選択出来ていれば結果は違っていたのだろう。外枠からダッシュ良く出ていたので勢いがついていた。あそこはもう行くしかなかったので仕方ない。この初手の失敗により好走の可能性を失ってしまった。3~4角ではもう脚が上がっていたそうだ。この馬も皐月賞の結果は度外視出来るだろう。馬場や展開で力以上に負けているので前走だけで見限れない。3連勝でスプリングSを制した頃に評価を戻した方がよさそうだ。

 

2400mの距離に関しては特別な言及はされていないので未知数。ただ、前走時にスプリングSのレース内容から判断すれば1Fぐらいの延長なら大丈夫だと思うと言う言い回しだった。この言い回しからすると距離には限界がありそうな印象を受ける。果たしてどうだろうか?3歳馬同士なら問題なさそうな気もするが延長してドンと来いと言う事ではないのかもしれない。

 

状態面に関しては皐月賞が9分のデキと前走で結構仕上げていたようだ。残りの1分はダービーのためのオツリとのことだ。この割合だと今回は維持がせいぜいかもしれない。距離の適性と絡めて想像すると皐月賞勝負の馬だったという可能性がありそうだ。

 

馬の評価はどの騎手もベタ褒めレベル。川田・横山武騎手の辛口評は有名だが田辺騎手はこの2人よりさらに辛口と言うことでダメな馬には辛辣な事を言う人。その田辺騎手が嫌味無く馬の力を評価していたのは印象的だった。また、今はもうそんな事もないだろうが皐月賞前の段階では横山武騎手もこの馬に後ろ髪を惹かれていたという。べラジオの方に乗りたいぐらいの気持ちがあったようだ。気性も良く、操縦性も良い馬なので競馬に注文の付かないよい馬である。

 

まだまだ成長が足りていないので本当に良くなるのは秋以降と言う話。馬はまだ緩いということだ。ただ、そう言う馬は他にもいるので現状のデキで勝負するしかない。スムーズだったら大きく崩れる馬とは思えない。前走よりは走ってくれると思う。後は距離適性だろう。

 

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