競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

日本ダービー(GⅠ) 出走馬カルテ②

 

こんにちは。

 

こちらのページは、

の、続きになります。↑では皐月賞組11頭のカルテを作成しています。ここからは毎日杯青葉賞など別路線組7頭のカルテを作成していきます。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

皐月賞(GⅠ)つづき

 

11着:グリューネグリーン

・2000mは少し長いかもしれない。勝った京都2歳Sもギリギリ抑え込んだものだし、2・3着馬は不利が合ったので恵まれた印象も。距離を克服したとは言い切れない。

スプリングSの脚質展開は悪くなかったが後方からマクるには脚力が足りない。極端な位置取りではない場所でインをセコク乗って、ロスを最小限にして、最後の一脚にかけた方がまだ走れそう。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

スプリングSで後方からマクる競馬をしたデムーロ騎手と相沢調教師の意見は分かれていて師は前で競馬をした方が良いという考え。皐月賞は鞍上が変わった事もあり調教師の考えが優先された。それで負けたのだから仕方ない。結果的にデムーロ騎手の言うように後方から競馬をすればもう少し走れていたのは皮肉な話。石川騎手のレース後談話では展開、馬場を敗因としていた。実際それ以上の敗因は出てこないだろう。

 

本馬を含めて皐月賞で先行集団を形成したのはグラニット、ベラジオオペラ、タッチウッドの4頭。この4頭は轡を並べるように10~13着と入線している。この辺りが収まり処だったのだろう。ただ、4頭が鼻面まで並べたということでもなくそれぞれに差が開いていた。本馬はべラジオに2馬身差付けられて11着。また、逃げて一番しんどかったグラニットを3番手から交わすのにもたついていた点も感心出来ない。この展開なので負けた事は仕方ないが同型と比較するとこの馬のパフォーマンスはちょっと弱い。

 

距離適性については明らかに長いであろう。予てから指摘している通り1800mぐらいの適性馬でともすればマイルよりな感じも受ける。この距離適性についてはかつての主戦デムーロ騎手との認識とも合致している。2400mに延長したところで有利になる事はない。グラニットの未出走と距離延長で楽に逃げる可能性は上がったが、別な同型がプリンシパルSを勝ってダービーに駒を進めて来た。グリューネが楽逃げればこれが競りかけてくるだろう。他にトップナイフなどもいるのでこの馬の楽な競馬は出来ないと思う。距離の長いレースなのであまり強気に乗る事も出来ないと思う。思い出づくりぐらいしか目的はなさそう。

 

17着:ホウオウビスケッツ

・逃げ切りで2連勝。スタートをポンと出てこれでリードが取れてしまう。1完歩目が速くスタートセンスが抜群。

・タイトなラップを刻んで後続を疲弊させるスタイル。逃げ馬として強い部類。

・持続性能はかなり高い。スピードと心肺機能の強さで勝負している。

 

上記が皐月賞出走時のカルテ。

 

17着でブービー。とは言え、最下位ダノンタッチダウンは追わずに競馬を止めていたので実質ビリと言って良い。序盤に先行争いに加わろうとしたのでそれで苦しかったのはあるだろうが、1コーナーでは引いて5・6番手、向こう流しでは2着タスティエーラと同列にいたことを踏まえるとさすがに負け過ぎ。先行4頭は苦しいながらも踏ん張っていたのでそれらと1秒近く負けているのは感心できない。

 

どうもテンションが高くなっていたようでメンタル部分で負けてしまったようだ。精神的に敏感な所があるという事は以前から言われていたので大一番でそれが出てしまったのだろう。スプリングSまでの走りからすると明らかに走っていないので見直すべきだとは思うが。

 

厩舎では晩成だと見ていたので皐月賞に良くまにあったなぁという感じ。成長が遅れていたので本格化はこれからだが春先にかけて成長速度が上がっていた。馬はグングン良くなっているそう。成長曲線上昇中の馬なので状態そのものは上げてくるかもしれない。

 

府中コースはセントポーリア賞で強いレースをしたコース。この時に記録した後半57.7秒の持続性は優秀だった。こういう時計で走れる馬なので弱いという事はない。課題はやはり2400mの距離となりそう。気性面に不安を抱えた馬の距離延長はあまり良い気がしない。上述した持続性の他、総合力が求めらるダービーでは瞬発力もいる。スピードを持続させた上で最後は切れる脚を使わないとならない。道中リラックして走らないとそう言う脚は溜まらない。ここまでの走りからするとスピードが勝っている中距離馬と言う印象でこの距離はやっぱり適性からズレているように思う。

 

毎日杯(GⅢ)

 

毎日杯が良馬場で行われたら1分46秒台で走れれば合格点。

 

13年キズナ(ダービー優勝)
14年マイネルフロスト(ダービー3着)
17年アルアイン(皐月賞)
18年ブラストワンピース(有馬記念)
(※)スーパーレコードだったシャフリヤールの21年を除く

 

と、この10年ではこれらが該当している。毎日杯からでたGⅠ級は全て1分46秒台で駆けていたことになる。逆にそれ以下の時計で走った年が3年あったがこれらのレースからGⅠで好走を果たした馬は1頭も出ていない。毎日杯と言えば稀にGⅠ級が潜むレースだがその目安が1分46秒台で走れていたかどうかで推し測るのは結構有効かもしれない。

 

この時計で走った馬の中ではキズナの勝ち時計1:46.2がちょっと抜けて速い。それ以外の3頭は1:46.5~46.7秒の間に納まっている。良馬場で行われた今年の勝ち時計は1:46.6でこのタイムゾーンにばっちりと当て嵌まっている。今年参戦する1・2着馬はGⅠ級のポテンシャルを持っている可能性がありそうだ。あいにくダービー好走を約束するデータではないがレベルは低くなかったという事は認識しておきたい。

 

実際、今年のレース内容は悪くない。35.0-59.2と速めのペースで流れていた。ゴールに向かうほどラップが落ち込んでいく消耗戦でラスト1Fでは1.2秒も失速している。上位入着馬は差す形だったので展開はハマっていたように映るがそんな事もない。1~3着馬は先行集団のすぐ後ろので5~7番手を横並びで追走していた。上位入線馬も早めの競馬で好走を果たしていた。地力の問われる展開を正攻法で克服してのものなら高めに評価する事が出来る。

 

1着:シーズンリッチ

・スタート下手で、出して行くと行きたがり、脚を小出しすると末も甘くなる。乗り方が難しい。→共同通信杯でスタートが改善されて五分に出れた。2・3番手の競馬が出来たのはこの馬の進化。

・強敵相手に0.5秒差で走れた共同通信杯の内容は悪くないが、理想的な結果が出来ていたので力差を感じさせる。

共同通信杯ぐらい走れれば一線級の参戦がない隙間重賞なら通用の余地はある。

 

上記が毎日杯出走時のカルテ。

 

2走前の共同通信杯からいろいろと良くなっている。スタートの下手の馬が五分のスタートを切れるようになったのがまず大きい。末脚上等と言うタイプではないので出遅れ分を挽回出来ずに負けて来たが、発馬が安定して来たことで位置取りの不利を解消できるようになった。また、折り合いに怪しいところがあったがそう言う面も見えなくなってきた。折り合えるようになったので脚も温存出来るようになった。強敵相手だった共同通信杯が0.5秒差に走り、毎日杯では重賞を勝つまでに。きっかけをつかんだ感じで良いムードでレースを使えている印象。その勢いでダービー挑戦はタイミング的に良い。

 

ただ、根本的な能力に大きな変化は見られない。高い脚力や末脚性能がある訳ではない。速い上がりを使える馬ではなく34秒台前半ぐらいが限界だったりする。加速するというよりもバテずに伸びるという末脚なので決め手勝負になるとつらい。毎日杯もペースが速かったことで上がりがかかりこの馬向きの展開になったのが大きい。ダービーはペースが速くても遅くても終いにキレる脚を使う必要がある。最後の決め手勝負になるとこの馬には厳しくなると思う。先行して脚を使い切る競馬はダービーのメンバー相手に出来ないと思うので、好位中位から渋太く伸びるのが精一杯になりそう。

 

2着:ノッキングポイント

・2着馬も、4着馬も次戦であっさりと勝ち、3着馬も数戦して既に勝ちあがった。レベルの高い新馬戦を圧勝している。

・1年前に同じ新馬戦を勝ったのがコマンドライン。パフォーマンスはほぼ同等であり、時計も0.1秒速いだけ。意外と微妙だったりするのかも。

・中山だと勝負所ですぅーっと上がっていけない。小回りコースの機動力には疑問が残る。大箱コースや外回りの方が向いていると思われる。

・追い出してビュっと加速出来るタイプでもないようで、追って追って末脚をMAXにするタイプのようだ。→切れ味の要求度が下がるので距離延長は案外向きそう。

 

上記が毎日杯出走時のカルテ。

 

マイル路線を行くと思われたが距離を伸ばした方が良いというルメール騎手の進言で毎日杯への出走となった。このブログでもマイルだとキレ負けしそうという分析をしていたのでこの路線変更は納得出来る。勝てはしなかったが初距離の重賞で0.1秒差の2着なら結果は出たという事で良いと思う。

 

また、マイル戦だとスピードに乗り切れない場面もあったのでこの距離だと機動力を発揮出来ない時があった。その点、中距離のペースで追走面が楽になったことで好位をキープして回ってこれた。いろいろな面から距離延長の効果が見て取れる。これならNHKマイルCに出戻るより、ダービーに駒を進めた方が良いだろう。一瞬の脚は弱いがが助走区間を取って加速出来れば上がりを高速化出来る。2400mなら末脚を全開出来そうな感じはある。また、手前の関係で右回りよりは左回りの方が良いとされている。2勝の実績がある府中コースも良さそうだ。

 

ただ、距離に関しては実際やってみないと分からないと思う。マイルよりは良いという話に過ぎないので距離適性の見極めは今回や今後のレースを見てからの判断になる。この春に路線が変更されたばかりなのでクラシックを意識した使われ方はしていない。ここに向けての話とかは一切ない。ダービーメンバーともほぼ初対戦なので力関係も未知数。希望的観測なら話せるが根拠立てて話せる事は少ない。

 

全くの別路線から来た馬なので正直不明な点が多い。それなりの馬っぽいので全くダメと言う感じも無いので扱いは難しい。怖かったら押さえるしかないと思う。

 

青葉賞(GⅡ)

 

03年ゼンノロブロイ
06年アドマイヤメイン
11年ウインバリアシオン
12年フェノーメノ

 

これらの馬が青葉賞馬は2着までと言うイメージを作ったがそれも今は昔。これらは既に10年~20年前の組である。近10年では【0・0・3・20】と連対実績すら無い。それどころか馬券になる事自体が稀になってきている。近5年に至っては好走馬はゼロだ。今は3着も厳しいという近況。

 

5年前と言えば、ローテションが様変わりし始めた頃と合致していて数を使わないことや間隔を十分に開けることが美徳とされる近年の影響を強く反映していると言える。ダービーを狙えるような馬が青葉賞をステップにすること自体が少なくなった。青葉賞の形骸化が進んでいる。強い馬の出走がなくなったことで青葉賞のレベル低下が懸念されるところである。今年の青葉賞はどうであろうか?

 

今年の勝ち時計2:23.9は

 

20年オーソリティの2:23.0
17年アドミラブルの2:23.6

 

に次ぐ時計だった。2分23秒台で走った馬はこの3年だけとなっている。時計的にはまずまずの評価になる。

 

この10年の青葉賞馬で後にGⅠで好走したのは17年アドミラブルがダービー3着、20年オーソリティのJC2着の2例しかない。さすがに偶然の一致と言う事はないだろう。毎日杯と同じような話になるが青葉賞を2分23秒台で走った馬の精度はかなり高いと言えそうだ。今年の青葉賞組は一味違うかもしれない。

 

1000mが60.4秒、2000mが60.1秒と言う流れは特別素晴らしくはない。ただ、レース全体を見るとそう悪いものではない。テンが速く、中間にいったん緩んだ後のラスト6Fからレースが急激に加速し始めた。長い区間の後継持続戦で中盤以降は締まった流れが持続した。序盤も極端にゆるい訳ではないので地力の問われる展開と考えて差し支えない。好時計も出るはずだ。内容的には良い部類に入ると思われる。

 

今年は1・2着馬の叩き合いと言う結果になった。スムーズに周ったスキルヴィングに対し、馬群を捌いて突っ込んできたハーツコンチェルトは負けて強しの印象も受けるが実はそんな事もない。確かにハーツコンは馬群に突っ込んではいるが進路が取れて追い出し態勢をとれたのはスキルよりも一瞬速いぐらい。それで伸び負けたのだから力が違ったという認識で良いと思う。

 

瞬発力で劣ったという事は言えそうだが脚を余していた感じはお互い様なのでやはりタラレバの話だ。終止外目を追走していたスキルより可能性があるという受け取り方はちょっと出来ない。ラスト2Fで11.7-11.7と失速無しのラップが記録されているのもスキルが0.1秒ハーツコンの前に出たから記録されたものである。この0.1秒は結構大きいのではないかと思う。

 

なお、青葉賞組がダービーで馬券になるのは勝ち馬にほぼ限られていてこの20年で青葉賞2着馬がダービーで3着以内に走ったのは13年3着アポロソニックの1例だけであるる。

 

1着:スキルヴィング

・府中に拘った使われ方をしている。

・4馬身差圧勝の未勝利戦(2000m)は推定で後半1000mを57秒前半の脚を使っているので持続性はかなり高い。

・中距離をやるには前進気勢が弱いので2400mはこの馬に向いている。

・2月のゆりかもめ賞の勝ち時計が異常に速い。過去10年では断トツで近年の標準的な走破時計よりは2秒以上速い。この時期にこの時計で走れるのは適性の高さ故。

 

上記が青葉賞出走時のカルテ。

 

後方待機が常態化しつつあったなか青葉賞ではスタートからポジションを取りに行こうとしていた。前に行けた訳ではないが中団後方ぐらいの位置は取れた。本番前にこういう事が出来た事は良かったと思う。この馬にある欠点は位置取りや脚質だけなので、それに改善の兆しが見えたのは大きいと思う。

 

不安材料ではないが不確定な要素としてあるのが皐月賞組の力関係。その力関係も距離適性で相殺出来るのではないか?と言う事で今回人気になっている。ただ、この馬の距離適性はちょっと凄い。中距離でスピード負けしてしまう馬が2400mのスタミナ勝負で勝ち上がって来たような柔いタイプの馬ではない。ゆりかもめ賞青葉賞の勝ち時計は歴史的に見てもかなりの好時計でありスピードの裏付けのある正真正銘の距離適性。抜群と言って良い。

 

過去の名馬と比較するとそれが良く解る。ゆりかもめ賞では有馬記念を勝ったブラストワンピースが勝ち馬に名を連ねるがそのブラストよりも3秒近くも時計が速い。ブラストの勝ち時計は至って標準的なものなのでその速さは突出している。青葉賞に関して言えば上述の通り。この勝ち時計なら三冠馬コントレイルのダービーで1馬身差をつけて勝ってしまう計算が成り立つ。さらに言えば、この2戦は余力残しで記録したものであり、時計はまだまだ詰まれられる。速さだけでいいなら本番でも当確級かもしれない。皐月賞組を無視して自分のリズムで走れればそれで勝ってしまう可能性はあると思う。

 

厩舎やルメール騎手からは同厩の最強古馬イクイノックスのようだという最大級の評価がされている。これが本当なら皐月賞組をポテンシャルで凌駕するのかもしれない。

 

青葉賞の仕上げに関してだが、権利が無いにもかかわらず叩き台程度の仕上げしか施されていないそう。仕上げ過ぎないように整えた程度で、レース後の反動が無いように、それでいて上積みが大きくなるように良くなる余地を多分に残したデキでレースを使っていた。道悪で激戦だった皐月賞組よりもフレッシュ感にあふれているのは強調出来る材料になる。

 

なお、馬番は1枠2番の内めを引いている。1枠が馬券にならなかったのはこの10年で4度あるだけ。データ的には問題ない。が、後ろから行くこの馬にはこの枠がいいかは微妙かもしれない。未勝利勝ちをした時は後方から馬群を切り分けてインから抜けだしてきたのでこの馬自身は馬群に怯まない。ただ、前が詰まったりしてモタつく場面も無くはなく、その隙に外から皐月賞組が抜け出してしまい、差しが届かないというのは考えられる。ポジションを取る乗り方をした青葉賞の経験が活きてくれば良いのだが。

 

2着:ハーツコンチェルト

新馬戦で8馬身差の大楽勝。これは相手が弱かったから。この着差は過大評価に繋がるのでそこは気を付けた方が良い。

東スポ杯2歳Sで使った上がりは33.8秒で最速。このペースでこれだけの脚を使えるなら末脚の精度は向上している。末脚の性能だけなら重賞級の評価で良い。

・長く持続性のある末脚がこの馬の良さ。一瞬で加速する性能は弱いようでヨーイドンの展開は厳しい。

 

上記が青葉賞出走時のカルテ。

 

若葉Sを使っていたがどうも皐月賞よりもダービーに意識が向いていたよう。若葉Sの1週前には2400mのゆきやなぎ賞にも登録をしていた。少頭数で勝ちやすいという理由(サトノグランツを避けた?)で若葉Sに出走したが皐月賞への権利と言うよりはダービー出走の為に賞金加算する事が目的だったそう。ただ、あいにく若葉Sを情けない内容で取りこぼしてしまった。

 

結局、ホープフルS若葉Sの様な小回り1周条件はこの馬には向いていないということなのだろう。コーナーで加速する事が出来ない上、直線も短いので脚を使い切れないまま負けている。徐々に加速してスピードに乗せていく方が良いので直線までゆったり追走していける大箱コースの方が向くのだと思われる。かつ、府中ぐらい直線が長ければ末脚を最高速度まで上げる事が出来る。東スポ杯2歳S3着もあり府中ならこの馬の力を出し切れる。青葉賞はこの馬の適性を再認識させた。

 

青葉賞はもう落とせないという事で懸命な調整がされていたが力尽きるような仕上げはされていなかった。権利は獲れると考えていた節がありダービー用のオツリは残っていると思われる。前走以上の状態もあるだろう。

 

厩舎としては2歳時からGⅠ級と期待の高い馬で今もその認識は変わっていない。また、松山騎手も随分前からダービーはこの馬でと心を決めていたよう。この馬の為に足繫く美浦に通い詰めている。関係者の想いは一様に熱い。

 

1勝馬なので今回のメンバーには大体負けているのが実情だが適性舞台で大きく巻き返したいところ。目の無い勝負ではないと思う。

 

京都新聞杯(GⅡ)

 

昨年、一昨年と中京2200mで行われたいたがダービーで好走する馬は出てこなかった。京都で行われた11年~20年の10年間では

 

12年3着トーセンホマレボシが3着
13年1着キズナが1着
19年2着ロジャーバローズが1着

 

と2頭のダービー馬が誕生している。レース間隔が短いから青葉賞馬はダービーを勝てないと言われるが、さらに間隔の短い京都新聞杯組から2頭も勝ち馬が出ているのをどう説明するのだろうか?

 

今年の内容はドスロー展開の上がりの競馬で評価材料に乏しい。1000m通過が63.8秒とこの時期のレースとしてはかなり遅いもので後半に5.7秒も後傾している。改修後の馬場なので一概には言えないが2分11秒台で決まるのが当たり前みたいなところがあったので2:14.1の勝ち時計はとても遅い。

 

このような展開なので先行馬が殆ど上位に残れた前残りの競馬。勝った本馬も5番手を追走していたので位置取りを利しての差し切り勝ちと言う事になる。地力の問われた展開とはとても言えないし、メンバー的にもそう威張れたものではない。ダービー好走を確信させるような材料は出てこないだろう。

 

ただ、詳しくは後述するが本馬の適性としてこういうパターンが一番適していない。苦手な展開を差し切ったのは力が上であったからだろう。この馬自身も力を出し切ったとはいえないのでレース内容とは別に評価した方が良いと思う。

 

1着:サトノグランツ

・馬はまだ完成途上で能力に身体が追いついていない。道中の追走も常に気合を付けて促す必要があり、勝負所では追い通しになる。

・直線に入ってからものみ込まれそうな感じで遅れを取るほどで追い出してからの反応は良くない。

・その代り追えば追うほど伸びるようなところがあり、エンジンがかかってからの伸び脚に見どころがある。

 

上記が京都新聞杯出走時のカルテ。

 

京都新聞杯はクビ差の辛勝。間に合わないのではないか?という感じだったが一気に交わして先頭でゴール。冷や冷やだったがこの馬の3連勝はいつもこう。京都新聞杯こそ差して勝ったが、未勝利、ゆきやなぎ賞では完全に交わされてそれを差し返して勝ちあがって来た。勝負所でズブいのでエンジンのかかりがいつも遅い。だからゴール前はこんな感じになってしまう。こういう馬なので上がりの競馬だった京都新聞杯に良く対応出来たと思う。この展開で差し切れたのはこの馬の進化の現れだと思う。

 

ただ、そうは言ってもそこまで強い馬を差し切ってきたわけではない。重賞級のメンバーともなると勝負所のズブさは後手を踏むきっかけとなる。これまでの相手だから差しが間に合ったというのはあるので強敵相手にじりじりとした末脚で間に合うか?と言うのはあると思う。この馬の末脚も最高速度に至った時にはなかなか強烈だがその末脚を瞬時に引き出せないのが問題となりそうだ。勢いがついた頃にはライバルとの距離は大きくなっていそう。

 

勝負所のズブさ以外に特に気なる点はない。発馬は上手いし、先行ポジションを難なく取れるセンスの良さはある。ズブいぐらいなので折り合い面には全く問題がない。全体的なズブさから距離はいくらあっても良い感じ。勝負所でレースが動き出すまではいい感じでレースを進めているだろう。ただ、既に触れたように上がりの競馬になると分が悪くなるのでペースは流れていた方が良いと思う。

 

馬はまだまだ成長途上だが1戦毎に良くなっている。ゆきやなぎ賞からの中間には筋肉量が増えてきたそうでバランスが良くなり調教でも動けるようになってきたという。今回は間隔が短いので大きな変わり身はなさそうだが馬の状態としては悪くないはず。友道厩舎ならダービーの余力はちゃんと残していると思われる。

 

現状の体でどこまでやれるだろうか?と言うところだが、今年のメンバーは「本格化はまだ先」と言うタイプが多い。その中でもこの馬の成長度が最も遅いような気がする。川田騎手も本格すればかなり上まで行けるという事を話していた。まだその段階には至っていないように思われる。父が勝った菊花賞あたりが狙い所の様な気がしないでもない。

 

プリンシパルS

 

この組の近10年の成績は【0・0・1・8】。馬券になったのは18年3着のコズミックフォース。16番人気で入着した。この年は強烈なイン前バイアスが働いたレースだった。勝ったワグネリアンの福永元騎手は差し馬だった本馬を先行させたほど。コズミックも馬場の恩恵を最大限に生かし切っての好走だった。今年の勝ち馬パクスオトマニカも逃げ馬なのでこういう事が起こりうるのかもしれない。

 

が、近年はテン、中、終い良しの総合力の問われる展開なので終いの脚もしっかりと使えないと厳しく単純な前残りは発生しにくい。コズミックと同様には扱わなくて良いと思う。

 

プリンシパルSは16年以降ずっと2分を切っている。今年の勝ち時計の2:01.2は明らかに遅く強調出来るようなものではない。37.4-62.4秒のマイペースで行けた事が勝因。少頭数で競りかける馬もいなかったので楽な単騎の逃げだった。展開勝ちの馬なので評価は高く出来ない。

 

1着パクスオトマニカ

・瞬発力の差で負けた新馬戦以降は決め手負けを回避するために逃げ馬になっている。

・ペースの割に最後1Fの失速は小さくなく、逃げ馬としては並みな強さ。

・猛烈なラップを刻んだり、心肺機能の高さで後続を疲弊させるような逃げ方ではない。

 

上記がスプリングS出走時のカルテ。

 

逃げ馬が出遅れてしまったスプリングS。それでもレースの流れにはのって中団から5着まで上げてきた。逃げれなかったが競馬が破綻するような感じはなく折り合いもついて追走していた。そもそも新馬戦では2・3番手から競馬が出来ていた。決め手や瞬発力の無さを露呈して負けたのでそれを解消するために逃げていただけという馬である。気性的な逃げ馬ではなく基本的には逃げなくても良い。

 

成績欄を見れば分かるように中山の1800mぐらいがいい馬と厩舎では考えられている。だからスプリングSはメイチ走で皐月賞よりもこのレースを勝つことを目的にしていた。この事からも分かるようにクラシックを意識している馬ではない。ワンペースな逃げ馬でギアが上がらないことから厩舎も府中よりは中山の方が良いとういう考え。こういうコースを立ち回りで勝負するのが良いのだろう。

 

そんな馬が苦手とされた府中2000mのプリンシパルSを逃げ切ってしまったのは収穫である。ただ、これも上述したように展開勝ちに過ぎない。7頭立ての少頭数なうえ、相手関係も相当弱い。単騎で行けて、ペースも落とせてと言うことのない状況。かなり恵まれていた。33.6秒で上がれた事は良かったがそのラスト3Fは11.2-11.1-11.3とギアが上がった感じはなく厩舎の言うようにワンペースな走りだった。馬に変化は見られずこの馬が強かったという内容ではない。

 

距離も1800~2000mぐらいが限界な感じがあって延長して良いという事はないと思う。だからだと思うが厩舎としては逃げにこだわるつもりはないと言っている。外めの枠を引いていることもあって内の先行馬を見ながら行っても良いと考えているそう。距離に自信のない逃げ馬はよくこういう采配をする。本当に逃げないかもしれない。そうなると決め手の無いこの馬が馬券になる可能性は極めて低いだろう。

 

この馬の適性からすると福島のラジオNIKKEI賞が視野に入っていないはずはないと思う。クラシックにそこまで意欲も無いのでここは記念的な出走で夏の福島に向けて余力を残すということも考えられる。

 

UAダービー

 

前代未聞の前走ドバイ。遂にこんな日が来たかと言う感じ。前例のない事に言える事はない。

 

ドゥラエレーデ

 

まず、好走した近3走の前提にあったのは追える外国人騎手が騎乗していたことである。決め手不足の馬が東スポ杯2歳Sで0.2秒差に走れたのは強引に馬を動かせるムーア騎手の功績が大きい。ホープフルSで波乱を呼んだがこれを勝ち切れたのも後にブレイクする事になるムルザバエフ騎手(独のリーディンジョッキー)の功績。先行馬を最後まで粘らしてしまう事が本当に上手い騎手だった。ドバイの前走もクリスチャン・デムーロ騎手が上手く乗っていた。無論名手の導きに応えた馬はエライが世界の名手を連続して配せた点は無視のデキないところである。坂井瑠騎手も若手としてはかなり達者な方だが上記3騎手にはまだまだ及んでいないと思う。この点は大きなマイナス材料になりそうである。

 

また、適性面で府中好走の根拠は示せていない。札幌の洋芝でも決め手負けを繰り返した馬で勝ち上がりはダート戦。GⅠ勝利も冬枯れの中山2000mで上がりの速さが問われない条件だった。ダートを求めて海を渡った前走はもう言うまでもない。芝の高速決着に堪えうる適性はここまで1度として発揮されていない。ダービーの舞台で出来る事は先行して脚を使い切るぐらい。ハイペースでも粘り込める強靭さはあるのでそれでどこまで粘れるかだろう。しかし、何度も話しているが近年のダービーには決め手も重要。優秀な持続性能に優秀な瞬発力が要る。前者はこの馬にもあるが、後者はほぼない。持ち時計もないので適性は不十分と言わざるを得ない。

 

そして、これはそもそも論だがダービーに出走する予定の無い馬だったはず。ドバイを使ってケンタッキーダービーへと言うのが年初に発表されたこの馬のローテション。ドバイのレース後に球節が腫れてしまったのでケンタッキーダービーを自重している。脚元不安が早めに解消されたのでここへというのが出走の経緯。海外遠征後の1戦である事を問題視する必要は今更ないが一度緩めてしまった馬体を再調整されている点で順調さは欠いていると思われる。

 

日本ダービー(GⅠ)の予想案はこちら▼