競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

スプリンターズステークス(GⅠ) 出走馬カルテ② 2023

 

こんにちは。

 

こちらは、

 

 

の、続きになります。↑では3・5・6・7歳馬の7頭のカルテを作成しています。こちらのページでは4歳馬9頭のカルテを作成します。スプリンターズSは10月1日(日)に行われます。前日の9月30日(土)には更新を完了します

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

4歳馬

 

スプリンターズSでは勝率、連対率、複勝率全てトップなのが4歳馬でこの10年の成績は【3・3・3・16】です。データ的後押しが強いですね。でも、これは平均的な成績で今の4歳世代の強さを示すものではありません。セントウルSの時にも公開したサマーシリーズの年齢別データでは圧倒的な成績をこの4歳世代は残しています。セントウルSの結果を踏まえた最終的な数値は以下の通りです。

 

3歳:馬券実績なし
4歳:5勝2着3回3着2回
5歳:1勝
6歳:2着2回3着4回
7歳:2着1回

 

3歳馬が如何に弱いか、5歳馬が如何に不甲斐ないか、そして4歳馬が如何に圧倒的かが一目瞭然で分かります。しかも、千直のアイビスSD以外の1200m重賞は全て4歳馬が勝利しています。さらに言えば、この一年間ではスプリンターズSオーシャンS高松宮記念以外の1200m重賞は全てこの世代が優勝しているのです。

 

このようにとにかく4歳馬達が暴れまくっているというのが今のスプリント路線の現状です。スプリンターズSの出走馬もほとんどが4歳馬と言う状況でしてゲートの56.0%を占める始末。1~3着の独占とかもあり得るのではないかと思います。

 

アグリ

 

セントウルSはそれまでの先行策から後方待機策。これが見事にハマり上がり32.4秒とそれまで使った事のない末脚を引き出しました。こういう事が出来てしまうのが横山典騎手の凄いところです。そして、この結果は関係者を大いに喜ばしました。引退が迫る安田隆調教師は新しい一面を引き出してくれたと鞍上の手腕に感服していたようでした。また、馬主もこれは凄いと思ったのか、本来は長男和生騎手の代打騎乗だったのに次もお願いします!と本番での続戦がセントウルS終了の翌日ぐらいに決定したそうです。

 

ちなみに、同じ馬主のジャスティンカフェに騎乗した昨年のエプソムCで後方追走から1番人気で4着に負けた際、その騎乗ぶりに馬主サイドは激怒。即クビにしたという経緯があり、以降は疎遠な関係でした。アグリの騎乗は馬主の心象をリセットさせるものだったのでしょう。その証拠に次週の毎日王冠に出走するそのジャスティンカフェの騎乗も再び横山典騎手に戻す事が同時に決まったそうです。どこか調子の良い話ですね。

 

さて、話をアグリの方に戻しましょう。高松宮記念、チェアマンズSPと2戦しましたがGⅠでは壁を感じさせる内容で負けています。が、安田隆調教師としてはまぁそうだろうなと言う考えだったようです。その時点で勝ち負けと言えるまでの完成度はなかったようでして、この2戦で経験を積めればと考えていたそうです。

 

それにスピードを生かしたいタイプなので高松宮記念の不良馬場、チェアマンズSPの洋芝はこの馬のベストな馬場ではありません。それでもそこそこには走れていたので素質・適性が高い事はある意味証明されたと言えそうです。また、チェアマンズSPではレベルの高い香港スプリンター相手にスピードが通用せず、中段から競馬をすることになりました。控えたところでこの時は末脚は使えなかたのですが、セントウルSでは見事な末脚を発揮。だから安田隆調教師は「引き出してくれた」と言う言葉を使ったのでしょう。GⅠ2戦の経験が馬を進化させたのかもしれません。

 

今回は時計の出やすい野芝100%。秋の中山開催はこの馬には走りやすい条件と言えます。GⅠ2戦の敗戦をステップにここでのGⅠ奪取を目論んでいます。厩舎としてもこれが国内最後のGⅠスプリントGⅠ。本気にならない理由はありません。セントウルSもそれなりのデキにはありましたが、目標は次とはっきりと口にしています。ここで100%の競馬をする為の準備に抜かりはありません。横山典騎手がどう乗るかはまだわかりませんけど、厩舎としてはここが勝負駆けのタイミングなはずです。

 

既に3勝しているスプリンターズSです。仕上げのノウハウはどこの厩舎よりもあるでしょう。アグリ自身も春より身が入っているという話。もまれた経験を糧にしてこれまでよりは強い姿を見せてくれると思います。1200m未勝利なのは気になりますがチャンスは十分だと思います。

 

安田隆厩舎がロードカナロアで最後にスプリンターズSを勝ったのが13年。今年はそれからちょうど10年目。そして最後のスプリンターズS。勝てば感動的な見出しが並ぶことになるでしょう。

 

ウインマーベル

 

キーランドCは16着の最下位。これに関してははっきりとした敗因があるので仕方ない面もあるのですが、それにしても走らなさすぎだなぁという印象です。敗因から先に話しておくとまずは状態面。1週前追いの調教後に頓挫があり、予定の追い切りを1本とばしています。悪く無いデキとは言っていましたが仕上げ切れないところはあったかもしれません。また、スタート後に左右からバチンされて下がる不利。最後方付近の追走となっています。立ち回りで勝負するタイプなので末脚勝負では良いところがありません。直線に入る頃には手応えもなく、1度もガツンと来るところがありませんでしたが、この辺も仕上げの面が影響したのかも。厩舎側も次のGⅠに繋がればと言う認識があったのでこの1戦で馬が変わってくれるといいのですが。

 

昨年の活躍を思えば今年はもどかしい戦績です。ですが、春のシルクロードS高松宮記念は8枠を連続して引き当てた不運によるものなので馬が弱くなったとか、早熟とかっていう話にはならないと思います。京王杯SCは2着と巻き返しているように条件さえ整えばまだ重賞でやれる力は保持していると思われます。

 

しかしながら、好走したこの京王杯SCにこそこの馬の現在の適性を特定する材料があります。厩舎からはゲートでの反応や道中の行きっぷりがズブくなってきたと言う話がされており、今は1400mの方が良いという認識を示していました。キーランドCの走りを見ても1200mが忙しい感じは出ていました。今はこの距離ベストの評価が出来ません。

 

また、高松宮記念の特集時にも指摘しましたが案外持ち時計の無い馬なので時計の速い決着に対応出来る根拠がないのです。その点は陣営も認めるところでして、パンパンの馬場より渋った馬場の方が良い、だから高松宮記念は期待していると話ていました。純粋な時計勝負は歓迎しないクチなのでしょう。だから洋芝のキーランドCを始動戦に選んだのか?と考えると話の辻褄はあいます。スピードよりもスタミナで勝負するスプリンターというのが今のこの馬の姿かもしれません。

 

振り返れば、昨年の2着も馬場バイアス、枠、展開、速くなりすぎなかった時計面(1:07.8)など良いことてんこ盛りという恵まれた中で生まれた結果。好走するにはかなり条件が必要そうです。しかしながら、今年の馬場は速いし、雨の降らない週間天気予報、忙しいかもしれない距離適性など今年は有難くない状況の方が目立ちます。せめて内めの良い枠を引き当てないとかなり厳しい事になりそうです。

 

エイシンスポッター

 

1800mから使い始めて芝やダートを使いながら1400、1600mで常に大敗ばかりでしたが1200mに短縮したら一発回答。この時の単勝が3860円も付いていて。この時の2~4着馬は1・2・5番人気だったのですが本命ガチガチで決着するところをこんな馬が飛び込んで来たんですから馬券を買っていた人はすくわれないですね。

 

でも、この1戦でこの馬の運命は決まった感じになりました。短距離の追い込み馬として際立った脚を見せています。テンにいけない馬なので後方からの競馬を続けていますがその末脚はほとんどが最速上がりで1200mに転向してからの9戦中7度も記録しています。それ以外も2位上がりが2度あり、上位3位に入れなかったのは中山のオーシャンSだけ。そのオーシャンSも3着に入っているので何かが劣った訳ではありません。どのレースでもレース上がりを1秒近く上回るので末脚に迫力はあり、不良馬場でも同様の末脚を発揮しているのでただのキレ味巧者という訳でもないようです。とにかく末脚だけは確実に使って来ます。

 

近2走のCBC賞セントウルSでは掲示板に載れていませんがいずれも開幕週の前有利なレースだったのでこの馬には不向きなレースだったことを思えば悲観する内容ではありません。

 

1200m戦全てを角田河騎手が騎乗していますがこの人のエラいところは絶対に外を回さないことですね。イン突きの意識が強く、外からマクって行った事は1度もありません。そうする事でコーナリングで一気に差を詰める事が出来ますし、ロス無く直線に持ってくるので末脚を全開に引き出せています。それに応える馬もエラく狭い所にも躊躇なく突っ込んいく逞しさは好感が持てます。だから前が詰まったり、捌ききれずに取りこぼしが発生しやすいのですが、それだけに力負けだった印象は1度もないですね。

 

また、今は本格化ムードにあるようで厩舎も大きな舞台に立たせようという気構えがあります。それを物語るエピーソドもあります。表向きにはオフレコとされていますので詳しくは話せないのですが、10月にオーストラリアで行われるジ・エベレストという、たしか昨年まで1200mでは世界最高賞金額だったGⅠレースがあるのですが、これに遠征するプランも考えていたようです。スプリンターズSには出走出来るかも微妙で、中2週と間隔も短いため両睨み的に考えていたようです。そう言う壮大な計画をしてみたくなるほど馬が良い状態なのでしょう。競走成績からは読み取れませんが馬は充実期にあるようです。

 

近2走は開幕週に泣きましたがスプリンターズSは開催最終週ですし、今期の中山は差しも決まりやすい。トウシンマカオの回避で漕ぎつけた出走ですが繰り上がりだと軽視するのは危険かですね。デキや条件はかなり良いので激走注意な存在と言えそうです。

 

ちなみに管理する吉村調教師は鞍上の角田河騎手をデビューの頃から後押しして来たのですが、あのスマホ事件直後のCBC賞でも馬主を説得してまで騎乗を継続させています。彼はこの恩に報いるべきでしょう。このレースでそれが出来るといいのですが。

 

キミワクイーン

 

2歳の頃から良い馬だと思ってちょいちょい推していたのですがクラシック路線から脱落して私の守備範囲からいなくなっていました。自己条件に戻り、適性高い1200mで順調に出世していたようで少々驚きました。見ていなかったレースは一通り確認してまいりましたが、この距離では安定した立ち回りをしていて印象は良いですね。先行していけるスピードもあるのですが、レースの流れに合わせた位置取りでしっかりとした末脚を使えています。函館SSで重賞ウィナーの仲間入りを果たし、OPでも問題無く戦えています。

 

ただ、この馬は持ち時計がなく、時計の速い決着に弱味があるかもしれません。負けたレースの敗因はおおよそ理解出来るので気にならないのですが、勝ち時計が1:07.4で決まったオーシャンSの負け方が負荷敵いなのでそう感じてしまいます。早めに先頭に並びかけ突き抜けるような手応えだったのですが逆噴射でもしたかのような失速で12着に敗れています。派手に負けていますので力不足な可能性もありますし、積極的に運びすぎて脚を使い切ってしまった可能性もあるのですが、この馬自身1分7秒台で走破したことがないので時計面に理由を求めるのも間違っていないように感じます。

 

重賞タイトルを手にした函館SSも予てより是非使いたいレースと話していたほどで時計のかかる洋芝に適性を感じていた節があります。それ以外にも時計がかかる状況になった際にこの馬向きという表現がこれまでも使われています。厩舎の過去コメントを総じると時計勝負は歓迎と言い難い雰囲気です。

 

速い流れに乗せていくスピードはちゃんとあるんですけど、それを持続させる能力が少々弱いということでしょうか?中山コースには実績がるのですが、今の時計が速い馬場状況を良しとするのかは別な問題である気がします。果たして、どうでしょうか?

 

ジャスパークローネ

 

今年のサマーチャンピオンです。こんな単純な話でいいのかなぁとおもうのですが逃げれば無敵、逃げれないとダメという典型的な逃げ馬の成績です。近5走だけ見るとそれがはっきりとわかります。逃げた4戦は全勝。逃げれずに番手で行った函館SSは最下位入線のケツ。両極端な結果はすがすがしく感じます。

 

それにしても競馬は本当に面白いですね。ちょっとしたきっかけで馬の運命が大きく変わります。この馬はそう言うミラクルの体現馬と言ってよいでしょう。CBC賞を7番人気で勝っていますがこれは当初の予定にないレース。本当は函館SS後も北海道で続戦するつもりだったんですけど、使おうと思っていた青函Sが賞金除外となり、しょうがないから栗東に戻したという経緯。馬は使うつもりで調整していたので1週スライドして出走したのがCBC賞だったということです。しかも、逃げ馬が開幕週の重賞を使えるのですから素晴らしい。ハンデ戦で斤量も恵まれましたし、競りかけて来る馬もいなかったので展開的にも楽な単騎。馬場、斤量、展開と全てが味方した勝利。本当ならその後も北海道でもがいていたかもしれない馬が幸運の連鎖でスターダムを駆け上がってしまいました。この強運は無視できないかもしれません。

 

それにCBC賞だけなら見事なフロック!ということで済むのですが、北九州記念まで勝ってしまいます。これで難しくなりました。この北九州記念の内容も悪くないんですよね。開幕2週目だったので馬場に恩恵はありましたけど恵まれたのはこれぐらい。CBC賞を勝ったことでハンデは2番目に重い57kを背負っての勝利でこの馬の実力と評価しなければならないところです。CBC賞が1:07.2、北九州記念が1:07.3とどちらも好時計での逃げ切り。この時計で走れてしまう馬の評価を低くする材料は基本的にはないですよね。

 

好時計が出ているという事は道中のペースは当然流れている訳でして前走は32.9秒で飛ばしています。このペースで逃げ切られてしまうのですから後続はしんどい。結構なペースで飛ばして行っても簡単には止まらないんですから逃げ馬として強いという事は間違いないと思います。

 

重賞勝ちの2戦は楽に単騎で行けた事が勝因として大きいので、こういう場合逃げれるかどうかをまずは考えなければいけません。が、それも杞憂に終わりそうです。

 

セントウルSを逃げ切ったテイエムスパーダにはCBC賞北九州記念の2レースで既に勝負ありと言う感じになっています。スタートセンス、二の脚の速さはテイエムよりはるかに秀でているのでテイエムにこの馬のハナは叩けないと思います。また、北九州記念にはモズメイメイも出走していましたがやはり簡単にいなしているので逆転は難しいと思います。それこそモズメのスパーダッシュ(葵S)が再現された時ぐらいしかこの馬がハナを譲るシーンは思いつきません。でも、武豊騎手も話していましたがあんなスタートは二度は出来ないと思うというほどで、奇跡のレベルの話です。普通に出たならやはり厳しいでしょう。

 

以上の事から、今回もジャスパーがハナにたってしまうんではないか?と思います。スパーダ、モズメがそれでも絡んでくるなら厳しい事にはなりますが、ハナを譲れないのはジャスパーも同様。簡単には引かないと思います。逃げ候補3頭とも潰れるか?と言う感じではありますが、ハナを取り切った馬に残り目は生まれると思うので、そう言う意味ではジャスパー有利な認識でいたいと思います。

 

状態面に関しては正直上積みはないと思います。サマーシリーズを3戦していますから。でも、森秀厩舎はいつもこんな感じです。ジャスパーも3歳時の葵Sの後にまとまった休養を取り、9k月後の3月に復帰させてからは月イチのペースをちゃんと守って今回6走目。状態はずっと維持されていますし、前走時も馬が良くなったと上積みを感じていたぐらいです。計画的に使われていますので極端な落ち込みは今回もないと思います。逃げるだけ逃げたら粘るだけという頑張り系の馬は状態が悪くなければ走ってしまうケースは珍しくないですからね。

 

テイエムスパーダ

 

2走前の北九州記念(13着)の敗因ですが、「馬がマイナーな気分になってしまった」と言う今村騎手のコメントから真意をくみ取るのは難しいですね。何言ってんの?って私は思いました。馬鹿にしているのではなく純粋に文章を理解出来ません。英語なのか?日本語なのか?それでも言わんとする事を私なりに推測して馬がナーバスになったとかの気性的な問題で走るのを自ら止めてしまった感じかな?と想像したのですが、前走のセントウルSがあの勝ち方。全然そんなことないじゃん。やっぱり今村語は難しいと思いました。

 

ただ、私もこの馬を間違って解釈していました。日本レコードを記録した昨年のCBC賞は48kの軽ハンデに恵まれたからだと決めつけていました。斤量が増量されて以降は全くよいところがなく、定量でも厳しいんだろうなと高をくくっておりました。が、定量GⅡだったセントウルSを勝利したことでその認識は改めなければなりません。

 

結局、生粋の逃げ馬だという事なんでしょう。自分のペースで気分よく言って粘り腰を発揮するタイプなんだと思います。しかしながら、この馬は逃げ馬のくせしてスタートが上手くないので出遅れたり、ダッシュも付かずに最後方を走っていたレースさえあります。近走は番手に行ければ御の字と言う感じで逃げる事も出来ませんでした。

 

ただ、このスタートに関してはちょっとした変化があります。管理していた五十嵐元調教師が2月で引退、厩舎は解散し、木原厩舎に転厩しています。木原厩舎の新しい担当さん曰く、「前の厩舎では甘やかし過ぎだったみたい」「ウチはそう言うことは無いので厳しくやっています」と調整方法に違いがあったようです。今では以前よりもしっかりと負荷をかけられているようで、その効果でスタートが抜群に上手くなっています。転厩緒戦のCBC賞から先行争いで負けることはあってもそれらの馬と互角にゲートを飛び出していけるようになりました。CBC北九州記念では上述ジャスパークローネの二の脚の速さに敵わず2番手の競馬でしたが、そのジャスパーのいなかったセントウルSで久しぶりにハナを奪う事が出来ました。楽な単騎も適い、スパーダ自身も久しぶりに気持ち良く走ったのではないでしょうか?33.5-33.7のイーブンペースで逃げ切りです。勝ち時計1:07.2も普通に好時計ですが日本レコードホルダーならこんな時計は朝飯前ですね。自分の形で運べればまだまだ重賞でやれる力がある事がこれで分かりました。

 

しかし、2戦2完敗のジャスパーとの対決はこの馬に有利ではありません。ジャスパーの序盤の立ち回りはスパーダ以上に達者なのでジャスパーを制して本馬がハナを奪うのは至難の業だと思います。逃げれば渋太い反面、行けなければとても脆い。直接対決は避けたいところでしたが。あいにくこの2頭は同年齢なのでこの先もジャスパーが目の上のたんこぶとなりそうです。

 

とにかくまずは序盤の局地戦を制さないとスパーダに勝機も残り目もなさそうです。他にロケットスターターのモズメもいます。自分の形がはっきりしたスパーダ陣営も気持ち的には譲れないところ。果たして、どこまで突っ張っていくでしょうか?これはこれで興味深いところですね。今年のスプリンターズSは超激流に備える必要がありそうです。

 

ナムラクレア

 

高松宮記念の特集時にも言いましたけどこの馬のパフォーマンスはずっと高いままですね。時計勝負にも強いですし、良馬場の切れ味比べも大丈夫。かたや、高松宮記念の不良馬場やキーランドCでの洋芝の重馬場などタフな条件でも末脚上位。スピードも合ってスタミナ的なタフさもある。また、コースを選ばずにいつも安定した立ち回りで条件を選びません。欠点らしいものは思い付かないですね。

 

ただ、このままだとメイケイエールと同じ道をたどってしまいます。前哨戦は強く、負けたことがありませんがGⅠでは結果が出ません。GⅠだからハードルが高いのは当たり前なのですが、それにしても前哨戦が強すぎるのでそう言うパフォーマンスをGⅠでも発揮して欲しいと思います。有難くないレッテルが定着する前になんとか頑張って欲しいです。

 

馬は4歳になってからずっと調子が良いですね。しかも3歳時より強くなっています。以前は爪や体質の問題で坂路でしか調整出来なかったのですが、今はコースで追えるようになっていて、コース調整の方が今は中心となっているようです。これには意図があって、スプリンターでもスピードばかり鍛えていてはダメだと昨年のスプリンターズSを負けて思ったのだそうです。長く脚が使えるように馬を改良しようと今年になってからコースで追う機会を増やしているのです。その効果はレースにもちゃんと出ているように思います。

 

高松宮記念、キーランドCは道悪競馬だったのインを避けて各馬が大きく外に進路を取るので距離ロスが大きかったです。しかも、2戦とも外枠を引いていたのでその外々を追走。他の馬より殊更に距離ロスが大きかったと思います。それでも末脚は最後まで衰えず2着、1着と勝ち負けの競馬。並みのスプリンターと比べたらスタミナ面に大きなアドバンテージがあると言えます。これこそがコース調教変更による効果なのではないでしょうか?

 

でも、近走では大味な競馬ばかりしていますが、3着だった桜花賞の様に狭苦しい競馬でもへこたれる事無く脚を伸ばして来ます。内の良いところを引けば突き抜けちゃうんじゃないの?って思います。

 

また、この陣営はレースでは装備しませんが調教ではブリンカー着用で調整しています。その効果でしっかりと走ってくれるのでより負荷をかけた調整が出来ています。1本毎の調整の中身が濃いのでどんどん強くなっているという印象です。

 

そのせいだと思うんですけど、叩き台のつもりで調整したキーランドCのデキがかなり良かったそうです。ヴィクトリアMよりも良いデキだよと厩舎サイドは話していました。高松宮記念をメイチで使った後なのでヴィクトリアMはデキは落ちていたんですけど、それでも割りと良い状態を維持出来ていたと当時は話していました。キーランドCがその時よりも良かったとなるとほぼGⅠ仕様に近い状態に仕上がっていたということになります。

 

だったら上積みは少ないんじゃないの?という解釈をしても良いと思いますが、厩舎はあくまで次が本番と余力残しの状態であったことは強調していました。この話が本当なら充実度は春よりも上がっていると考えた方が自然です。とにかく馬は充実しています。この状態で欠点もないとなるとやはり馬券の中心としなくてはいけないんだろうなって思います。GⅠ制覇のチャンスが大きい1頭で良いと思います。

 

マッドクール

 

デビューから3・3・1・1・1・1・3・1着だった馬が前走CBC賞で負けました。直線で失速して9着。それまでの安定感が嘘だったかのような負けっぷり。これだけ負けると特別な理由がありますね。レース当日に熱中症っぽい症状が出ていたそうです。今年の夏は暑かったですからね。まぁ、度外視でいいと思うんですけど、これはこれでアクシデント。そこからしっかりと立て直せたかが焦点となります。状態次第としておきたいと思います。

 

そこを除けば、重賞級の馬として扱って良いと思います。前走を除けば成績は安定していますし、レース振りに不安になるような材料はありません。対戦成績的にもここ出走の馬と互角以上の記録も残していますから、それらと比較して下に扱う理由もないですね。スピード勝負にも強くて昨年夏の小倉で1:06.9の時計があります。スプリンターとしての素養は問題ないと思います。

 

ただ、競馬振りが正攻法過ぎますね。ハイペースを楽に先行していくスピードはあるのですが、ラストの失速は大きいタイプで消耗戦や我慢比べで強さを発揮しています。今の中山は時計が速いのでこの点は良いのですが、先行馬にはキツい馬場状況なのでラストも加速出来るようでないと残り目は期待しづらいかもしれません。

 

それと逃げたい馬が何頭もいる組み合わせも有難くないでしょう。逃げ馬を交わす事は出来たとしても後続に交わされやすくなってしまうと思います。直線でグンと加速出来るタイプではないのでこの展開から脚を使うのは難しいと思います。

 

情報的には厩舎の期待度は高いですね。出走していたシルクロードSCBC賞なども大きい舞台に進める為に賞金加算をしておきたいと頑張っていました。でも、池添学厩舎のこういう期待はいつも空回りする事が多いですね。古くはメラグラーナとか、最近ですとプラダリアなんかがそうなんですが、〇〇の為に結果が欲しい!と言う時に限って良く負けている印象です。厩舎力がちょっと弱い印象があります。今回はアクシデント明けで、しかもGⅠ。ちゃんと仕上げて使う事が出来るでしょうか?

 

ママコチャ

 

池江厩舎は中距離、マイルと徐々に距離を短縮させてスプリントGⅠを獲った昨年のジャンダルムを成功例として、長めの距離で走っていた馬をスプリント路線で大成させよう!みたいな事をやっています。このママコチャもそういう意図で前走の北九州記念で初の1200m戦に使っています。また、同じ金子HDで同じように路線変更していたゾンニッヒをキーランドCに使い分けてあわよくばGⅠへと目論んでいました。この2頭はスプリントGⅠでも通用する素材だと池江厩舎では考えられていたという事です。

 

ちなみにこの厩舎にはセントウルS3着馬スマートクラージュもいるのですが、こちらの場合はGⅠでは厳しいと最初からスプリンターズSには使わない方針が決まっていて11月の京阪杯に使うつもりでいます。力が無ければGⅠに拘らない適材適所戦略をを行う訳ですから、ママコチャやゾンニッヒはGⅠでも通用すると厩舎が考えているのが分かります。あいにくゾンニッヒは賞金を上積めなかったのでこの場にいませんが、ママコチャが厩舎期待の1頭である事は間違いないことでしょう。

 

この馬は条件戦をノンストップで突破してマイル中心に使われていました。当時騎乗していた松山騎手も4歳になればマイルのGⅠを勝てる馬と素質を高く評価していて、厩舎もその適性を認めていました。こういう馬を距離短縮して1200mに使って来るのは勇気のいる決断です。

 

ただ、マイルも上手く走っていましたがソダシの下だけあって前進気勢が強いのでマイルでは折り合いを欠くシーンも時々見られていました。阪神牝馬Sではモロに掛かり制御不能な感じの暴走となっています。折り合えていたとしても走りがワンペースでギアがグンと上がることもない。走りに余裕がないのでマイル適性はやっぱり微妙だったと思います。それは短距離適性の裏返しともとれますからこの路線変更は馬にプラスになっているのでしょう。

 

重賞実績もそれを象徴していて、マイルの2戦は5・9着とイマイチ、1200~1400の2戦では3・2着と堅実。短距離部門でパフォーマンスを上げています。1400mでしたが3馬身差で圧勝した勝ち時計は日本レコードと同タイム。北九州記念も0.1秒差の2着と初スプリントを一発回答。短距離適性の方が間違いなく高いと言えそうです。

 

以前も話した事がありますが、1200mに短縮した先行馬が流れに置かれる事で脚が溜まり、先行していたスピードを末脚に転嫁してくる事が良くあります。ママコチャもマイルを2・3番手で行く馬でしたが短距離のここ2戦は5・6番手と位置取りを下げています。この距離では折り合いを欠きませんから追走もスムーズで4角を絶好の手応えで回ってこれて、今は末脚で勝負出来る馬になりました。

 

1200m戦はまだ1戦だけなので手放しでこれは凄いと言えませんけど、この路線でやっていく資質は十分に秘めていると思います。GⅠで相手は厳しくなりますが、ほぼ4歳世代同士での戦いであり、明確な力差を感じさせる馬は極僅かです。混戦になればこの馬が入着している可能性もゼロではないと思います。

 

スプリンターズS(GⅠ)の予想案はこちら▼