競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

菊花賞(GⅠ) 出走馬カルテ① 2023

 

こんにちは。

 

今年の3歳牡馬勢はレベルに疑問が持たれているからか凱旋門賞には行かないし、古馬とやっても敵わないと関係者が考えたのか天皇賞(秋)やJCに挑む馬もいません。有力馬のほとんどが菊花賞に出走することになりました。結果、皐月賞馬VSダービー馬の菊花賞対決が23年ぶりに実現します。これはこれで有難いと思います。オールドファンの血が騒ぎます。

 

年齢層の高いこのブログの訪問者の皆さんはよくご存じだと思います。昔よくあった議論に菊花賞で対戦する皐月賞馬とダービー馬はどっちが強いのか?というのがありました。たしかこれって皐月賞馬の方が強いんですよね。セイウンスカイとか、エアチャカ―ルとか皐月賞馬が二冠を達成するケースの方が多い。1990年台までは皐月賞馬もダービー馬も当たり前のように菊花賞に駒を進めていたのでよくされていた議論でした。

 

こういう事はずっとなかったのでなんか懐かしいですね。最後に菊花賞皐月賞馬とダービー馬が対決したのは00年のエアシャカールアグネスフライトの時でした。それからもうちょっとで四半世紀です。皐月賞馬はちょいちょい菊花賞に出ていましたが、ダービー馬はまぁでない。14年ワンアンドオンリー以来の9年ぶりですし、その前は01年ジャングルポケットが出走したのみで。そう言う意味ではダービー馬タスティエーラの参戦に感謝です。

 

果たして、勝つのは皐月賞馬か?ダービー馬か?はたまた第三の馬が勝って三冠を分け合うことになるのか?世代的なレベルは未だ判然としませんが、今年の菊花賞が面白い事は間違いないと思います。

 

皐月賞馬VSダービー馬の対決を前提にしているので、ディープインパクト、オルフェーブルなどの三冠馬や、ネオユニバース、メイショウサムソンなどの当時の二冠馬は抜きでカウントしています。

 

あと、オールドファン向けにもう1つ小話を。

 

京都新聞杯神戸新聞杯の両方をサトノグランツが勝ちましたけど、これは97年マチカネフクキタル以来ですね。今年の菊花賞は懐かしい話ばかり。この頃はどちらも菊花賞トライアルで秋に行われていましたが、マチカネはそのまま菊花賞馬になりました。サトノがそれに続くと面白い記録が生まれますね。あと、他に82年のハギノカムイオーが両新聞杯を勝っていたようですが、こちらは菊花賞で1番人気で15着に敗れています。

 

菊花賞(GⅠ)は22日(日)に行われます。前日の21日(土)には更新を完了します。更新順は頭数、文字数の関係で1枚目にセントライト記念とその他組の9頭を、2枚目に神戸新聞杯組8頭を更新します。トライアル組の2競走は分析・回顧も簡単に触れておきます。

 

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

セントライト記念(GⅡ)

 

10~12年の頃に2分10秒台が当たり前のように出ていたこともあったが、今はそこまで時計が速くなることはなく、2分11秒台で走れれば標準級。キタサンブラックディーマジェスティなどは2分13秒台であったので時計の遅い決着も目立つ。速さはあまり求められていないようだが、今年の2:11.4の勝ち時計は過去10年で最速で時計的には特に問題がなさそう。

 

ラップ・ペースを見ると60.1-60.3と言うマイルドな流れ。先行集団にいても前残りが可能だし、後方待機組でも力のある馬には不利にならない展開。ただ、上がりの競馬にはなっていてラスト3Fは11.7-11.7-11.0の加速ラップ。今年のレースはこの区間で力差が出た模様。脚力勝負になっていて最後まで脚を使えた馬が上位を占めた。特にフロック性はなく、1~3番人気の力のある馬が順当に結果を出した。

 

ソールオリエンスの横山武騎手は併走していたコスモサガルマータが所々で外に張ってきたことで乗りづらく、それを不満に思っていたようだが、不利と呼べるようなものではない。目立ったアクシデントは無かった。結果は能力を反映したものと受け取ってよさそう。これを前提にするといろいろと見えてくるものがある。

 

ホープフルSを勝った8着ドゥラエレーデは当時負かしていた4着セブンマジシャン、5着キングズレインと久しぶりに対戦して逆転を許した。力関係に変化がみられるところだが、そのセブンにしろ、キングズにしろ春二冠は未出走だった馬で、皐月賞・ダービーに出走していた2着ソールオリエンス、3着シゃザーンには完敗の内容。やはりクラシック出走組と出れなかった組には明確な力差があったようだ。

 

ただ、脚力の高さは問われたが、菊花賞で必要な持久力や持続力は問われていないので、本番に直結するかと言えばそこは微妙。このレースを好走したから本番で有力と言えるような材料はあまりない。

 

なお、菊花賞の登録に勝ち馬レーベンスティールの名がないが、まぁこうなるだろうと思っていた。まず距離が長いのであろう。後方から進めて際立つ末脚を披露したラジオNIKKEI賞のレース振りをみて、あれならもう少し距離を伸ばしても大丈夫だろうと陣営は話していた。この言からするともともと距離延長に慎重な考えがあるようだ。3000mを敬遠したのだと思われる。また、ダービー馬タスティエーラの菊花賞直行が発表していた頃には菊花賞の鞍上はモレイラ騎手でと水面下では決まっていた。同クラブのレーベンが使い分けられた形にもなったのだろう。

 

2着:ソールオリエンス

 

京成杯はレースの内容や出走馬の質が悪いので評価を高く出来ないが、瞬時にギアがトップに入る瞬発力の性能は素晴らしかった。→皐月賞でも豪脚炸裂。助走区間もなしにギアトップ出来る瞬発性能はとても素晴らしい。

皐月賞でもコーナーで膨れてしまう。中山での走りの質は相変わらず悪い。重賞2勝しているが、中山コースを器用に立ち回れる馬ではなかったということになる。

皐月賞では京成杯から3ケ月振りで動けずに後方に置かれてしまったという。休み明けは注意。

・横山武史騎手曰く、この馬はリバティアイランドより弱いそうだ。

・ダービーでは京成杯皐月賞の様にビュっと加速する感じは弱かった。中山の2戦は消耗戦だったであの脚を使えたのだろう。上がりの競馬でよーいんドンだと他馬並みの瞬発力になってしまう。地力の問われる展開の方が脚が際立つ。→不向きな展開で2着なら負けて強しで良い。

 

上記がセントライト記念出走時のカルテ。

 

スタートが決まって徐々に前に取り付いていき、好位を取ろうとしていたところ、1コーナー手前でコスモサガルマータが外に張って来たので少し引いてしまい、結果コーナリングで中段後方の位置取りになってしまった。これで前との差が大きくなり、直接的な敗因となった。

 

また、最終コーナーでもコスモが外に張ってきたので距離ロスが大きくなり、前との差はさらにひらいてしまった。勝ち馬の走りは素晴らしかったが、この馬も力で負けた訳ではなく、スムーズだったら勝ち馬と際どい叩き合いになっていたと思われる。

 

加速ラップで前有利な展開を後方から差してこれたこの馬の脚力は相変わらず凄い。鞭が入ってからの反応も機敏で一気に加速出来てしまう瞬発性能の高さも春と変わらない。皐月賞馬としての力は存分に発揮しており、2着でも評価は全然落ちない。

 

成長の余地を大きく残して春を終えたが、夏をこして成長はかなり進んだらしい。セントライト記念の馬体重は460kだったが、この数字は前走のダービーと一緒で、新馬戦の馬体重とも同じだった。その他の2戦もいずれも462kで、馬体重の変動はずっとない。ので、見た目の成長はほとんどないのだが、中身のデキが全然違うという話。つくべき所に筋肉がついたことで、トモに厚みが出たのだそう。その結果、一完歩ごとの迫力が増していて、飛びの力強さが春よりも数段良くなっているということ。

 

また、左右のバランスも良化してコーナリングに不安がなくなったと横山武騎手は嬉しそうに話していた。レース中に受けた最終コーナーでの不利もこの馬自身はタイトにコーナリング出来ていて、京成杯皐月賞で見せた膨らむクセは出ていない。このように全体的に走りの質は良くなっていた。この馬もパワーアップしていて、能力番付はトップを維持していると思われる。

 

菊花賞の条件に関してはやってみないと分からない点が多い。まず初の関西圏の輸送なので、平常心を保てるか?と言うのはあるだろう。そこまで従順な気性はしていないようなので、長距離輸送が悪い影響を与える可能性はゼロではない。

 

また、菊花賞適性に強気になれる材料もない。3歳馬同士なら距離はこなせるとは思うのだが、これに関しての厩舎の評価がちょっと微妙。菊花賞の適性ならこの馬よりも同じ厩舎のキングズレインの方が上だろうと手塚調教師は話していた。身内からそのような言葉が出るようでは菊花賞がベスト条件と言う評価はとても出来ない。

 

ソールオもこなせない事はないと思うが、菊花賞ドンと来い!の馬は今年は結構多い。能力差だけでそれらを凌駕出来るといいのだが。

 

6着:ウインオーディン

・32.5秒、33.1秒、33.2秒、33.6秒と常に高速上がりを繰り出している。末脚だけはとにかくキレる。

・上がりが速くなって当然と言うレースばかりだったが、共同通信杯ぐらいのペースでこれだけの脚を使えれば重賞でもやっていけそう。

・速い脚を使えるコースに適性ありと厩舎では考えていて中山よりも府中向きと言う評価になっている。

阿賀野川特別2着は収穫が大きい。新潟の小回りコースで機動力を発揮して3~4角でマクり上げた立ち回りはこれまでにないスタイル。自在性が出て来たのは良い。

・何度か走った重賞を見ると使える脚は意外と短い。阿賀野川特別も逃げ馬を交わせそうで出来なかった。中途半端に脚を使うよりは直線ズドンの方がいいのかも。

・春はまだ成長しきれていなかったそうで本格化はこれからと言う話だった。

 

上記がセントライト記念出走時のカルテ。

 

後方3番手から進めて直線勝負。映像では外から良い伸び脚を見せて着を上げて来ていたが、実は前との差を全然詰められていない。勝ったレーベンスティールや2着ソールオリエンスはこの馬以上の末脚を使っているので逆に突き放されているということ。使った上がりは4位だったがこの程度の末脚では位置取りの不利は挽回出来ない。4着馬とも同タイム上がりであったので末脚は際立っていない。この程度の脚しか使えないとなると乗り方は考えた方が良い。少なくとも後方待機からの直線勝負のスタイルを捨てないとこの組み合わせでは難しい。また、前走の阿賀野川特別でもそうだったが、外を回して突き抜けられるほど脚は長くないので、大外回しの競馬も良くなかったと思う。距離適性は分からないが、ロングスパートになる京都外回りはこの馬の適性からズレていると思われる。前を行く馬の大半が失速しない限りこの馬の末脚で上位を伺う事は出来ないと思う。

 

その他

 

タスティエーラ(日本ダービー1着)

・先行しながら差し馬並みの末脚を使う。タイプとしてはエフフォーリアにかなり近い。

・直線追い出してからもたついたり、勝負所でスブい面がある。瞬発的な性能が高くないのだと思われる。

・末脚の量はかなり豊富だと思われる。追えば追うほど伸びるところがあり、加速は弱いが長く脚を使えるので諦めずに追っていればチャンスが出て来る。

・かなり外目を先行して距離ロスの大きい立ち回りだし、消耗戦で展開的にもきつかった皐月賞で2着。ラスト2Fを加速ラップで抜けてきた。このレース運びで脚が溜まっていたとは思えないが、それでも余力がたっぷりだったのだろう。体力無尽蔵と言う感じ。

 

上記がダービー出走時のカルテ。

 

ダービー時の調整はいつものしがらきではなく、距離が近いという理由で天栄で調整されていた。これはダービー時にも触れたが、タスティを間近で見るのが初めてだった天栄のスタッフはその仕上がりの良さに唸っていたそう。将来的なポテンシャルはスキルヴィングの方が上だが、現状の完成度だとタスティには敵わないと感じたそうだ。春の時点での完成度の高さが伺える。ただ、この馬も晩成型であり、ダービーが完成形ではない。春より強くなっている可能性はある。

 

ダービーは上がりの競馬になった事で先行ポジションからいち早く抜け出したこの馬に展開が向いていたのは否めない。ただ、これはレーン騎手が最高だっただけで、本来は瞬発力勝負で弱いところがあり、共同通信杯はそれで負けている。タフな展開を体力勝負で好走するのが望ましいタイプで一番強い競馬をした皐月賞が本当の姿。展開が向いたとは言え、ダービーもこの馬向きの流れではない。むしろあれで良く勝てたという印象の方が強い。ダービーの内容をフロック視するのは良いと思うが、不向きなレースを勝ち切った事も評価しておく必要はあると思う。

 

距離については正直分からない。春の時点で菊花賞の話などされていないし、長距離向きな話も特にされていない。3000mの距離については全くの未知数。ただ、体力勝負に強く、追えば追うほど伸びる馬なので乗り切れる可能性も十分に感じる。皐月賞や府中の新馬戦の様にタフな競馬でも早めの競馬から加速ラップが踏める馬なのでスタミナや心肺機能はかなり高い。長距離をこなす下地は十分に感じる。

 

コースについては、府中より中山の方がこの馬向きであると堀調教師は話していて、決め手勝負になりやすいコースがベストではないそう。あいにく京都はそう言うコースなので、ダービーこそ凌いだが今回もそうとは限らない。決め手のある馬に交わされる可能性は大きくなると思う。しかしながら、ロングスパートをしやすいコースでもあるので、府中よりは京都の方が走れる感じはある。

 

デビューの頃はズブさもあったぐらいで、促したり、気合を付けて追走している時もあったほどで前進気勢は弱いくらい。折り合いとかは気にしなくても良いだろう。

 

関西圏のレースは初めてとなるが本馬のメイン外厩滋賀県のしがらき。京都隣県にしょっちゅう輸送をされている。輸送は全く気にならないだろう。初の長距離輸送になる皐月賞馬より有利な点である。

 

今回は強そうなステイヤータイプもいて、本馬がそれらに優るポイントは少ない。ただ、能力面ではヒケを取らず、不安材料も思ったほど多くない。思っていた以上にやれそうな感じはある。

 

ノッキングポイント(新潟記念1着)

・中山だと勝負所ですぅーっと上がっていけない。小回りコースの機動力には疑問が残る。大箱コースや外回りの方が向いていると思われる。

・追い出してビュっと加速出来るタイプでもないようで、追って追って末脚をMAXにするタイプのようだ。

・マイルだと速力不足やキレ負けしていた。ルメール騎手の進言で毎日杯で距離延長に挑み結果が出た。距離は伸びて良いタイプのようだ。

 

上記がダービー出走時のカルテ。

 

毎日杯から距離延長して軌道に乗って来た。毎日杯を走った印象から1800mでもまだ足りなかったという認識がされており、距離適性はもう少し長いよう。ダービーを0.2秒差で走っているように陣営の評価以上に長めの距離に対応している。が、好走と思われたダービーの結果を受けベストは1800m~2000mと言う認識で固まった。ダービーの2~4着馬あたりと同じ位置取りで運びながら伸び負けた感じになったのでそう言う解釈になったのかもしれない。新潟記念後に菊花賞出走を即決しなかったのも距離適性を気にしたからかもしれない。

 

その新潟記念の内容は微妙。レースラップの構造は悪くはないのだが、夏の新潟にしたらペースも時計も上がりも遅い。過去10年では下から2番目の勝ち時計。1分57秒台走破が例年の標準で1:59.0の勝ち時計はちょっと抜けて遅い。また、新潟記念は有力馬がこけたレースで2着に8歳馬、3着に人気薄という結果。信頼性に欠ける印象が強く、過大評価には気を付けたい。

 

因みに、新潟記念好走後に菊花賞に出走した馬は1:57.5で優勝したブラストワンピース(18年)が菊4着、1:59.3走破で3着のフェーングロッテン(22年)が菊15着。新潟記念における時計の優劣と菊花賞の結果は今のところ連動している。

 

馬の特徴を確認しておくと、追い出してビュっと加速することはなく、追って追って末脚をMAXにするタイプ。よって、好走した近3走が直線の長いコースだったのは偶然ではない。と言うのも、マイル中心だった頃から3~4角の動きが弱く、機動性に乏しい。ダービーで初騎乗だった北村宏騎手も勝負所でのズブさを指摘している。長い脚が使えるのでロングスパート出来る京都は合っていそうだがその下り区間は3~4角にあたるのでここで動けるかどうかが課題となりそう。

 

また、手前の関係から左回りの方が良いとされている。右回りもこなせない事はないが、勝負所のズブさが酷くなるかもしれない。

 

以上のことから距離適性も京都適性も右回りなコースなのも、いろいろと噛み合っていない様に思われる。菊花賞適性を高くは感じられないが、果たしてどうだろうか?

 

最後に蛇足だが、騎乗する北村宏騎手は夏にいぶし銀的な活躍でにわかに脚光を浴びている。だが、北村宏騎手のダービー騎乗が決定したのはレースの2日前。ぎりぎりまで騎手保留となっていたのは有力騎手の馬に回避でもあればすぐスイッチできるようにと馬主サイドが保留にしていたからだ。ベテラン中堅騎手の悲哀さがにじみ出ているエピソードである。北村宏騎手には是非発奮して頂きたい。

 

トップナイフ(札幌記念2着)

・レースを使う度にスタートや行きっぷりが良化している。

・ラストに加速するギアは無い感じ。ワンペースの競馬を常にしている。ただ、加速はしないが、減速もない(止まらない)。

・緩急の有るレースよりも、タイトな持続戦で良さが出るタイプと見ていい。

・逃げ、先行、差しと自在性があり、操縦性も高くなった。今ではトリックスターの思いのままに動く。

・好走パターンは立ち回りで勝負して短い直線で一脚使うスタイル。決め手勝負になる舞台では上位馬の末脚には敵わないと思う。

 

・上記がダービー出走時のカルテ。

 

逃げた方がいいと調教師が話していた馬だが、皐月賞もダービーも後方から競馬をする事になった。ただ、上がりはいずれも2位で爪痕は残していた。皐月賞ははっきりと出遅れたものだが、ダービーはスタートでちょっと躓いただけ。それで横山典騎手はレースを諦めてしまった感じ。位置取りは皐月賞よりもさらに悪く、後方2・3番手、4コーナーでは最後方で直線をむいている。ダービーはヤラズっぽい。春二冠を度外視する必要がある。

 

札幌記念2着で能力のあることを改めて感じさせた。ただ、その札幌記念も仕上げは進んでいなかったし、厩舎もあまり期待していなかった模様。鞍上の横山典騎手が同厩舎のマテンロウレオに騎乗していたのもそういうことらしい。2着と走れるとは思っていなかったようだ。力のいる馬場で思い通りに走れなかった有力馬が続出したことや、掘れた馬場を嫌って各馬がインをあけていたので、そこを通ったらハマった感じ。逃げ馬がバテるのも早く、楽に先頭に立てたこともよかった。札幌記念は相当噛み合っていたと思う。仮にこの馬が勝ち馬と同じ天皇賞(秋)に出走しても同じような活躍は難しいのではないか?札幌記念の走りにはフロック性が含蓄しているので過大評価には注意したい。

 

2歳の頃からコンスタントに使われて、数も消化しているが、意外にも厩舎では晩成型の評価。ダービーの時点でも完成は先と話していた。成長の余地を残しているらしい。が、その成長は札幌記念の時点であまり確認出来ていない。春とはあまり変わっていないようで、厩舎側から期待の高さを伺わせるような話は特になかった。ただ、そう言う意味では上がり目がある。成長も多少は進むのかもしれないし、春や前走よりは良い状態で出走してくると思われる。

 

長距離適性は微妙な所。どの馬も大概そうだが3000mドンと来いの根拠はない。GⅠに積極的に使う厩舎なので出走理由はそれだけで、適性度外視で使っている感じもありそう。まぁ、やってみないと何とも言えない。ただ、タフさで勝負するところがあるし、バテる感じも無いので3歳同士ならと言うのはある。マイナスにはならないかもしれない。

 

近走は後方追走であったり、先行したりと脚質にブレがあるが、逃げた方が良いと厩舎では考えていた馬でこの馬が先導する事になる可能性もある。この20年で逃げ馬は1勝3着2回で勝ったのは21年のタイトルホルダーだけ。普通に考えれば厳しい。ただ、25年前にそれをやってのけたのがこの鞍上な訳で、2年前のタイトルホルダーはその息子が騎乗していた。横山家のDNAはやはり怖く、本家なら尚更である。果たしてどう出て来るだろうか?

 

パクスオトマニカ(レパードS15着)

・瞬発力の差で負けた新馬戦以降は決め手負けを回避するために逃げ馬になっている。

・ペースの割に最後1Fの失速は小さくなく、逃げ馬としては並みな強さ。

・猛烈なラップを刻んだり、心肺機能の高さで後続を疲弊させるような逃げ方ではない。好走する時は自身に有利な展開に持ち込めた時に限られる。

 

上記が日本ダービー出走時のカルテ。

 

ダービーで大逃げみたいになっていた逃げ馬。ただ、この馬のペース自体は全く普通のものだった。この馬も右隣枠の落馬で不利を受けたクチで、序盤からビュンビュンと飛ばせた訳ではない。徐々に前に行きハナを取っている。60.4-61.1秒でちょっと遅めのスローペース。だから向こう正面に入るまで1・2馬身のレースを取っていたにすぎない。ペースはそこから緩んでいたので本来ならあんな大逃げの形にはならない。それでも後続を離した形になったのは2番手以下が行かなかっただけ。それが今年のダービーをだらしなくしてしまった理由である。

 

マイペースで行って、これだけ楽な展開はそうそうない。この馬に力が合ったら大楽勝していたはず。13着の結果は見た目のイメージ以上に弱い印象を受ける。結局、力が無いから後続にあれだけなめられたのだろう。

 

ダービーに置ける弱さの理由は偏に距離適性である。厩舎評では1800m~2000mとされている。また、最もベストな条件は中山1800mで立ち回りで勝負した方が良い馬で、春は本番度外視でスプリングSをメイチで使っていた。決め手勝負になりやすい府中では何かに恵まれないと厳しいタイプ。ダービーを走れる適性を有していたとは言えない。クラシックの頂点に記念で出走しただけと言う感じのようだった。

 

こういう馬なのでさらに距離が伸びて、決め手も問われる京都コースの菊花賞になんで登録してきたのだろう?と思ったが、姉は牝馬ながらに菊花賞で3着したディヴァインラヴだった。あぁ、そう言う事かと思った。でも、それでどうにかなるものだろうか?今回は適性面からして厳しいレースである。

 

なお、話す必要はなさそうなので大差殿負けだった前走のレパードSについては簡単に。ダート戦は1度試してみたかったそうで以前より適性を感じていたらしい。手頃なレースがあったので使ったと言う感じで特に意味はない。結果はお気の毒と言う他ない。行こうとしても行けず、逃げどころから先行することもままならない。勝負所の加速にも対応デキずに手が虚しく動くだけだった。ダートの流れに乗ることが出来ずに逃げ馬が最終コーナー最後方。鞍上の諦めも早く直線は流すだけ。度外視と言うか、見なかったことにしてあげたい。

 

ドゥレッツァ(日本海S1着)

 

新馬戦3着後に4連勝中。前進気勢は弱く、気合を付けていないとポジションが取れず、馬なりで追走させると後方に置かれる。ところどころでズブさも目立ち、エンジンの掛かりも早くない。新馬戦で負けているのもヨーイドンだったから。タイプ的には2戦目で負かしたサトノグランツと似ている。この馬もグランツもスパっと切れないので、この時の叩き合いはいつまでも続きそうな感じだった。

 

好走パターンもグランツ同様でタイトな持続戦で末脚を引き出す事が出来る。瞬発的な加速は弱いが、末脚を引き出すことに成功すればどこまでも伸びる感じで、32秒台の高速上がりも引き出せる。そう言うところもグランツに似ている。幸い、そう言うレースに恵まれて来たので連勝街道を来れたがスロー競馬の瞬発力勝負になると厳しくなる可能性がある。

 

こんな感じの馬なので菊花賞には向いているだろう。生来的なズブさを解消出来るので長距離戦の潜在的な適性が高いと思う。また、持続戦ばかりを勝ち上がって来ただけあってレースの中身はどれも濃い。加速ラップを何度も差し切っているし、上がりは常に最速脚。こういうレースばかりだから持ち時計も優秀。持続性オバケみたいなところがあるので地力は相当に高い。

 

なお、これまたグランツ同様で着差はいつも僅かで突き抜けて勝ったことは無い。この馬もまたゴール前まで冷や冷やするタイプであろう。ただ、キャリアを重ねたことで勝負所での立ちまわりや反応はグランツより良くなっていて、こちらの方がスムーズさがある。その点でグランツより有利かもしれない。後は追ってどこまで末脚を伸ばせるかになるが、この点に不安はなく、クラシックの上位勢力との力差次第。

 

なお、前走日本海Sの翌日に行われたのが同条件の阿賀野川S。勝ち馬は京都新聞杯の3着馬でレース内容はほぼ互角であった。また、京都新聞杯の2着馬には前走で直接対決で破っているし、勝ち馬サトノグランツも直接対決で下している。春に行われたレースではあるが京都新聞杯組とは力差が互角であるか、それ以上と言う直接・間接の比較が出来てしまう。

 

ダノントルネード(日本海S8着)

新馬戦では毎日杯やすみれSの勝ち馬も負かしている。皐月賞までの既成勢力ともそれなりに走れている。→それらはクラシックでトップクラスに力差を感じさせて負けているのであまり威張れない。

・1・2・2着と連対率は100%。負けた2戦も直線が狭くなったり、出負けで位置取りが悪かったりと力負けと言うレースは無かった。

・立ち回りや追っての反応、折り合いなどは優等生に入る部類だと思うので重賞に入っても普通に対応出来ると思う。

 

上記が京都新聞杯出走時のカルテ。

 

5月の京都新聞杯2着後に一息入れる。この馬はデビューから3ケ月の等間隔でレースに使われているので前走は8月の中旬。その前走は3勝クラス(日本海S)で案外な結果に。勝負所では既に手が激しく動いていてそこから押し上げて行く事ができなかった。直線で早々に手応えがなくなり、完全に脱落した。敗因は弱いか久々のどちらかになるが、さて、どちらだろうか?

 

ここまで3ケ月のインタバールを定期的に取り入れている馬なので今回だけ仕上がりに問題があったとは考えづらい。3勝クラスだったので相手も弱くはないのだが、3歳馬が1・5着と走っているのでこの馬だけがだらしなく負けた印象になってしまう。この日本海Sは好時計決着したレースでレベルが高い。それに対応出来ずに負けたという見方をして良いかもしれない。タイトなラップが続いた持続戦だったのでこのような流れを乗り切るには距離は長いのかもしれない。特別な理由でも無い限り、評価を低くする必要がありそう。

 

また、ここまでの話からすると一線級とは力差があるのかもしれない。この馬はリバティアイランドも担当している腕利きさんに世話をされている。その担当さん曰く、完璧に仕上げて、これで負けたら弱いという事!と言いながら使われた京都新聞杯で負けている。言葉通りならやはり弱いから負けたのであろう。

 

また、馬主ダノックスサイドの評価もあまり高くなかった模様。上述した3ケ月ローテもタッチダウンとか、ザタイガーなど期待馬が優先されて、本馬は使い分けられていただけなところもあったらしい。

 

そして、この馬は川田騎手と縁の強いダノンの馬主で中内田厩舎の馬である。川田騎手も2戦目までは騎乗したいた。が、3戦目には勝ち馬フリームファクシに、4戦目には勝ち馬サトノグランツに川田騎手は騎乗していた。やはり重賞ウィナーと比べるとこの馬が劣っているのだと思われる。

 

リビアングラス(阿賀野川特別1着)

・3月11日にデビューして3戦2勝。デビューして2ケ月と経たないが順調に駒を進めている印象。

・500kを越す馬体でデビューして徐々に馬体は絞れてきたがまだ動ききれていない。追って鈍かったり、直線でフラ突いたりと粗削りな面が目立つ。

・突出した長所は見当たらないので現時点ではどう評価していいかが分からない。ただ、追ってバテない感じはあり渋太い走りをしている。

 

上記が京都新聞杯出走時のカルテ。

 

3走前から逃げ馬になっていてその逃げ方も良い。

 

京都新聞杯は向こう正面の早い段階で4着馬が競りかけて来て最終コーナーまで雁行状態。厳しい展開だったが直線で相手を突き放し、ゴール前ギリギリまで粘り、クビアタマの3着で入線している。

 

前走の阿賀野川特別では1000m58.9秒のまぁまぁ速いペースで逃げながら、中間にペースを落とす事もなく、ラスト2Fでさらに加速して逃げ切った。

 

2走とも楽な逃げではなかったが失速率を小さくして逃げ切っていて逃げ馬としては強い部類。地力の高さを感じさせた。

 

なお、前走の阿賀野川特別は、9番人気3着ナムラクレセント、13番人気3着ポポカテペトル、10番人気3着ユーキャンスマイルなど勝ち馬が菊花賞で度々穴をあけていて、08年の勝ち馬オウケンブルースリ菊花賞馬になった。菊花賞とは縁のある新潟の条件戦である。リビアンも人気が無ければマークすると面白いかもしれない。

 

この阿賀野川S(2勝クラス)の前日土曜日に行われたレースが同じ新潟2200mの日本海S(3勝クラス)で勝ち馬は上述のドゥレッツァ。いずれも好時計だがリビアンの阿賀野川Sの方が0.1秒速い。クラスが違うのでどちらが上とは言い切れないが、阿賀野川特別の価値がかなり高いことは間違いがない。

 

ドゥレッツァを尺度とすれば、京都新聞杯で遅れを取ったサトノグランツとも互角の計算が成り立ってしまうし、京都新聞杯もグランツとはタイム差無しの入線。これらの馬との力差はそんなに無い。

 

3月デビューだったように成長が遅く、京都新聞杯の頃は成長途上だったそう。間隔を空けて成長は促されたようなのでこの馬自身も強くなっているはず。力差が逆転していることもあるのかも。意外とやれそうである。ただ、3000mドンと来いという感じは現状は受けない。気性に問題はないので折り合いは大丈夫だと思うが、距離はやってみないと分からない。

 

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