競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

マイルチャンピオンシップ(GⅠ) 出走馬カルテ②

 

こんにちは。

 

マイルCSもグランアレグリアから買っておけば大丈夫って年が2年続きましたので簡単でしたけど、そのアレグリアが引退し、春のチャンピオンソングラインの出走もありません。現在は絶対的な存在がいない路線です。しかし、出走馬のクオリティは高いと思われ、良い意味で主役不在の混戦です。ここで勝った馬がこれからのマイル路線を引っ張手いく存在となるでしょう。それだけに難しい1戦ですが、その分配当妙味に溢れます。人気サイドで決まってもある程度の配当を期待出来るのでやりがいのあるレースとなるでしょう。

 

近3年の1~3着馬は全てその時点でGⅠ馬だった馬に独占され、実績馬に有利な結果が続いています。中でも特に目立っているのが2・3歳時の世代限定戦でマイルGⅠ馬を勝っている馬です。9頭中6頭がこれに該当します。中長距離だと早期完結してしまうパターンや、早くに故障してしまう馬がも多いのですが、この路線では息の長い活躍をする馬が多いようです。

 

今年は5歳世代にサリオス(朝日杯FS)、4歳世代にソダシ(阪神JF桜花賞)・シュネルマイスター(NHKマイルC)、3歳世代にダノンスコーピオン(NHKマイルC)の4頭が2・3歳時のGⅠを優勝しています。近走成績からもこれらが人気を形成していくのでしょう。どれも注目すべき存在です。

 

なお、このレースをもって京都開催の代替GⅠは終了となる見込みです。マイルCSは近2年も阪神で行われていました。坂が儲けられている箇所は違いますが同じ外回りコースなので目立ったデータ違いはないようです。有利な脚質、リピーターが良く馬券になること、有利なローテション(府中重賞)など京都版とほとんど変わりがありません。コースが変わっていても過去10年データは有効だと思います。

 

更新順ですが、今年は毎日王冠の上位馬VS富士Sの上位馬VSスワンSの負け組といった構図のようです。これで17頭中の13頭をカバーできます。簡単な回顧を踏まえながらレース毎に更新していく方法が良いと思います。マイルCS20日(日)なので前日の19日(土)に更新を完了します。ページが長くなるようなら1ページ10000文字を目安に2枚、3枚と増やしていきます。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

11/10追記:ページ上段の前説部分は同じものを転用しています。①②の行き来はページにブログカードを貼っておきますのでそちらから移動されて下さい▼

 

スワンS(GⅡ)

 

スワンSの過去10年の成績は【0・4・2・23】となっています。10年エーシンフォワードがスワンS8着から優勝したのを最後に勝ち馬はいなくなりました。と言うか、過去20年でもスワンS組が優勝したのはこの1例だけです。天皇賞秋や、毎日王冠などから参戦して好走する馬が少なくないので距離延長のGⅠはやはり楽ではないのでしょう。むしろより短いスプリンターズS組の方が【2・0・0・6】と結果を出していると言えなくもありません。これもGⅡぐらいが精いっぱいと言う馬と、GⅠを狙っていたような馬との違いでしょう。スワンSがイマイチな理由は探せばいくらでも出て来ます。今年は上位馬の出走が1頭もおらず派手に負けた4頭が参戦しているだけ。この布陣でどこまでやれるでしょうか?

 

そんなスワンSは11年ぶりに1分20秒台を切る1:19.8の好時計が記録されています。こういう異常な時計が出てしまうので当然ペースが速かった、きつかったという事が言えてきます。テンの3Fは34.1秒とそれほど速くありませんが、このゾーンから外れる4F目まで速いラップが続いていました。4F目までのラップ構成は12.5-10.7-10.9-11.1となっていて、2~4Fの区間で32.7秒と言う超速ラップが刻まれていたのです。これはさすがに速すぎると思いますペースもきつく、息を入れる暇のない展開で先行馬が軒並み崩れ中位、後位の馬が飲み込む形になりました。今回の出走馬で言えば、先行ポジションで前を追いかけてしまった6着ロータスランド、10着ホウオウアマゾンにはキツい展開だったことでしょう。そう言う意味では展開次第で巻き返しの余地があるということになります。しかし、ポツン最後方だったマテンロウオリオンは展開ハマりの要素がありながら7着。これは負け過ぎの印象。ただ、これもはっきりした敗因があると思います。詳しくはマテンロウの稿で説明します。

 

6着:ロータスランド

 

昨年のサマーマイルチャンピオンでその流れでマイルCSには昨年も出走していました。十分なマイル実績がありながら春にお試し感覚で高松宮記念を使ったところ2着と好走。それもあってか、本来はこの秋もセントウルSを目標とされていました。蹄に痛い所が出ていたので調整が間に合わず断念となったのですが、この背景を聞くと秋もスプリントGⅠを視野にしようとしたのかもしれません。この馬自身がいきなりのスプリント戦で好走出来たようにこの路線の充実度は低く、マイルより相手が楽だからと言うのがあるようです。高松宮記念もそう言う理由で参戦していました。調整が間に合うようならスプリンタースSに本当は出たかったのかもしれません

 

スワンSの敗因は回顧部分で触れた通りだと思うのですが、蹄の問題で調整に頓挫があった事も敗因の一つとなるかもしれません。今回の調整次第、展開次第ではありますがスワンSよりマシな競馬が出来そうな状況ではありそうです。ただ、昨年のマイルCSも、今春の安田記念も特に不利もなく、調整も上手くいった状態で完敗の内容。どちらも決め手の無さが露呈した格好で負けています。相手関係的に厳しい戦いとなるのは否めません。

 

ここ1年分ぐらいのカルテを根気よく見直したところ必ず出て来るのが道悪と言うキーワードです。ここまで稍重以上の道悪を5戦経験しているのですが3勝2着2回のパーフェクト連対。高松宮記念2着もこの中に含まれており、条件戦を道悪3連勝で一気にOPに昇格しています。良馬場のGⅠでは決め手に劣るのは厩舎側も分かっているようで、昨年も天気の悪化があればと言う話をしていました。以上のことから、雨が降って初めて検討のテーブルに上げればいい馬だと思います。道悪になって上位勢との決め手の差が縮まらないと話にならないと思われます。

 

7着:マテンロウオリオン

 

展開ハマりのスワンSで負けたこの馬の敗因は乗り方に尽きます。

 

ここで思い出して欲しいのが初勝利を決めた万両賞です。スワンSと同じ阪神1400mで行われたレースでした。実はこの時の乗り方も、その時使った上がりもスワンSとウリ二つなのです。どちらも最後方をポツンと追走しています。万両賞の上がりが33.4秒、スワンSが33.5秒。ほぼ同じレースをしたと見てよいでしょう。しかし、結果は真逆と言って良いものでした。万両賞は大外一気の末脚で差し切り勝ちを決めました。が、スワンSは大外一気をしたけれども末脚は不発。2つのレースは似て非なるものですがこれこそが阪神1400mの特徴なのです。

 

能力差が大きい2・3歳戦なら能力だけで外マクリで勝負を決める事も出来ます。しかし、力が拮抗している古馬重賞でそれをやっても差しは決まりません。差しが決まらないレースではないんですが、インをロス無く回ってきてインを差す、もしくは直線だけ外に出すという乗り方をしないとこの条件では差しは決まらないのです。実際、今年の1~3着馬もそうやって差してきています。マテンロウの様な大外マクリがこの条件で決まる訳がないのです。故に、この馬こそ前走度外視の馬だと思います。

 

なんでそんな乗り方をしたのか?と聞かれれば、それが横山典弘だからとしか答えようはありません。多分、叩き台のレースで脚を測ったとか、夏の成長を確かめたとかの理由だと思います。いずれにせよ、スワンSの内容・結果をそれほど重く受け止める事はないという事です。馬が弱くなった訳ではありませんので取捨は慎重にした方が良いと思います。仮にスワンSと同じ乗り方をしたとしても外回り条件の阪神マイルなら無いとは言えません。前走だけで見限る必要はないでしょう。

 

ダノンスコーピオン、セリフォスの走りからNHKマイルC2着の本馬も通用する可能性はまだあります。夏の成長が顕著で春より力強くなっていると言いますし、本番を意識した叩き台でしたので上積みもそれなりにあるはずです。変わって良い馬だと思います。

 

10着:ホウオウアマゾン

 

この馬の最大の特徴は阪神コースが得意と言う事に尽きます。ただ、若い世代の馬達は京都を知らないなので阪神に特化してしまっているだけなのでしょう。単純に右回りが得意なのかもしれません。と言うよりも、この馬は輸送がダメなので府中に持っていくとイレ込んでしまい競馬になりません。NHKマイルC東京新聞杯安田記念といつもこれで負けています。厩舎ももう東京には持っていきたくないと泣いてたことがあります。なので、阪神が好き、右回りが好きと言う事でも本当はないかもしれません。輸送の少ない中京では2歳時に勝っているので回りの左右も関係ないんだと思います。まとめますと関西圏なら大丈夫と言う事です。

 

ただ、阪神だと崩れる事が少ないのは事実で、デイリー2歳S2着、アーリントンC1着、阪神C2着、マイラーズC2着と2~4歳にかけて重賞で常に好走しています。昨年のマイルCSでも直線の良いところまで粘っていて5着に好走しています。内回りでも外回りでも結果を出しているのでこのコースなら評価を上げなくてはなりません。これだけ走れていれば有力馬に数えられてもいいのになと思います。また、アーリントンCが重馬場、マイラーズC稍重と道悪適性も示しているので天候に左右されないのも強味となるでしょう。

 

スワンSは激流に巻き込まれてしまったのもありましたが、出負けしていたのでリカバーするのに余計に脚を使ってしまったことも原因の1つだと思います。この展開でもスタートから流れに乗れていればあそこまで負ける事も無かったのではないか?と思います。よって、阪神で崩れたのは本格化前の朝日杯FSとこのスワンSの2鞍となりました。敗因ははっきりとしているので見直しが必要でしょう。実績的にも力が足りて良い馬なので前走だけで見限ってしまうのはもったいないかもしれません。

 

4歳秋で馬も充実期にあるようでここにきて体つきが大きくなって来たと言います。厩舎ではこれからがこの馬にとっての本番だと考えていて、ピークはこれからです。直近の馬柱が汚れてしまっているので手は出しづらいですがこういう馬の激走には注意したいところです。

 

11着:ベステンダンク

 

10歳馬ですね。さすがに言うことはありません。得意の京都が復活までもう少しです。坂の勾配やコースのレイアウトはいじっていないので好走していた頃と変わりません。頑張ってもう少しだけ現役を続けられれば良い事がきっと待っていると思います。

 

◆その他

 

ウインカーネリアン(関屋記念1着)

 

今年のサマーマイルチャンピオンです。この陣営はサマーシリーズ開幕前から制覇を目標に準備していましたので夏に全力投球していたことになります。この路線に限らず夏に力を使い果たしてしまう事がサマーチャンピオンが秋GⅠで走らない理由とされています。一応、3ケ月の間隔があるので態勢を整える事は出来ると思いますが、調整面が1つ課題となるところです。

 

また、サマーチャンピオンが秋GⅠで馬券になれない理由に相手関係があると思います。夏に使ってくる馬の能力はお世辞にもGⅠ級と言えない場合が殆どです。弱い馬相手に勝ってきた実績では頂上決戦では心許ないところ。ぱっと思い付くところでサマーチャンピオンが秋GⅠで馬券になった馬にタワーオブロンドンとハクサンムーンがいます。これらはその以前にGⅠで入着経験があった点で共通しています。やはり、秋のGⅠで存在感を示すならそれなりのパフォーマンスをその時点で見せているべきでしょう。今回のウィンカーネリアンはその点どうなんでしょうか?この馬も皐月賞4着馬なので資格なしとは言えませんが、それでいいのかと言えば微妙な感じも致します。前走の関谷記念もスローの前残りの競馬なので強さを担保出来るものはありません。控えめに言っても試金石と言うのがせいざいだと思います。

 

馬の方は成績が示す通りここにきて充実しています。爪の不安で長く休養していましたが、馬には成長を促す効果があったと鹿戸調教師は話します。関屋記念を勝ったらGⅠが見えて来ると話していました。トップマイラーたちとの手合わせが無いのでその全様は測りかねますが、厩舎の反応からすると素質、能力が全く足りないという事もなさそうです。

 

シュネルマイスター(スプリンターズS9着)

 

スプリンターズSに出走して9着。ですが、サンデーRもグランアレグリアみたいな期待を持って使った訳ではなく、適当なステップレースが無かったので定量で出走できるGⅠを使っただけでした。なので、厩舎サイドも1200m向けの仕上げはしていないと特別な1戦である事を否定しています。使って本番を迎えられるようにとマイルCSを見据えた調整がされています。目的が勝つことでも賞金を稼ぐことでもありませんでした。だから、結果はどうでも良いものでしょう。レース振りを振り返ることも必要ないと思います。使った後が順調ならそれで最高です。負け過ぎていたのでメンタル的な影響をちょっと気にしましたが、春もドバイ8着から巻き返していましたのでそういうのも大丈夫だと思います。

 

むしろステップ競走と言う考えに好感が持てます。ノーザンF&サンデーRの馬ですからぶっつけでマイルCSと言う選択肢もあったろうと思います。そうすれば暮れの香港へGⅠを連戦で来たろうにと思います。つまり、一度叩いたという事は最大目標がこのレースであると言っているようなものです。春はドバイへの輸送で失敗し、不完全燃焼なレースが続きましたから秋は準備万端進めて来たという感じが凄く出ていると思います。ここは反撃必死の舞台です。

 

そもそも、この馬の春の不振がマイル路線に混迷をもたらしたようなものです。本当だったらこのレースも断然の1強競馬だったかもしれません。グランアレグリアに0.1秒差まで迫った昨年のマイルCSや、完調手前であれだけ走った安田記念からもこの馬の力はやはり抜けているでしょう。ルメール騎手に戻ったのも大幅なプラス材料です。不安材料は1200mを使った悪影響ぐらいで、それで折り合いの難しさを出した時かな?と思います。が、それで大きく崩れるのも考えづらいと思います。そうなったとしても2着とか、3着とか入着順が多少悪くなるぐらいだと考えています。こんな馬を2番人気で買えるのは勿怪の幸いと言うものです。

 

ソダシ(府中牝馬S2着)

 

近2走は敗戦を続けていますが能力落ちの様な話はここまで一切なく、むしろ今年になって気性面の課題が解消されて来た事で馬は充実期を保っている状況です。アーモンドアイやグランアレグリアの様な絶対感はありませんが、牝馬のクラシックウィナーならこれぐらいが普通だと思います。阪神マイルはGⅠを2勝した舞台ですから自分の走りが出来ればここでもそう差は無いのでは?

 

札幌記念を使った頃には完全にマイラーになっているとの事で表向きのコメントとは裏腹に関係者の期待は大きいものではありませんでした。また、古馬になってからコーナー4つのコースよりもワンターンのコースでスピードに乗せて押し切るようなレースがベストと言う風になっています。それだけに府中牝馬Sはギリギリの好走ゾーンでしたが、最後に差されてしまった走りを見るとあと1Fが長かったという負け方。本当に完璧なマイラーとなってしまったようです。このように好走の範囲がかなり狭くなってしまっていますが、ここは間違いなくソダシが好走出来る条件と言えるでしょう。負けが込んでいますが改めた評価が必要です。

 

前走に関してですが、マイルCSの叩き台として上がっていた候補に毎日王冠府中牝馬S富士Sの3択でした。本番までの間隔と相手関係を見据えて府中牝馬Sを使われています。あくまで前哨戦でしたが割としっかりと仕上げていたようで結構作られていました。大幅な上積みをここで期待していいかは微妙なところだと思います。斤量が軽減される分だけパフォーマンスを上げられますが、骨っぽい相手に牝馬限定戦で見せるような強さを発揮出来るかが争点となります。

 

ファルコニア(京成杯AH1着)

 

解散前の角居厩舎に管理されていた馬でしたが当時の厩舎の評価が非常に高かったのを覚えています。それで3歳時に重賞を何度か使われていましたが勝ち切れずクラシックに乗る事は出来ませんでした。高野厩舎に転厩後もその評価は変わらなかったのですがやはり中々勝ち切れずパンチ不足なOP大将みたいな存在でした。この間、重賞3着が4度もあったように決め手に欠けるタイプなのでしょう。立ち回りで勝負する器用な先行馬と言う感じです。いつも勝ち負け圏内のところで運んでいて、最終コーナーでは手応え良く回って来ます。が、追い比べでいつも負けてしまいます。この決め手の無さが残念な感じです。

 

こういう馬なので前走で初重賞制覇を達成したからと言って、根本的な何かが変わったとは思えません。京成杯AHも何とか叩き合いに持ち込めたから根性でどうにかなりましたが、突き抜けて勝った訳ではないので決め手の無さは相変わらずだったと感じます。決め手の重要度が絶対的に必要なGⅠで評価を高くする材料は少ないのではないでしょうか?決め手の無さを補うためには乗り方に工夫が必要でしょう。鞍上に頼る部分が大きくなります。主戦の川田騎手がダノンスコーピオンに騎乗するため今回は池添騎手に替わっています。インディチャンプ、グランアレグリアなどテン乗りで大仕事をした方なのでその点は問題を感じませんが、この2頭がそうであったように決め手優秀なタイプで怖い方だと思います。強引に押して行く必要のあるファルコの様な馬と手が合うかとなるとこれは少し微妙の様に思います。上手く導く事ができますでしょうか?

 

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