競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

マイルチャンピオンシップ(GⅠ) 出走馬カルテ①

 

こんにちは。

 

マイルCSもグランアレグリアから買っておけば大丈夫って年が2年続きましたので簡単でしたけど、そのアレグリアが引退し、春のチャンピオンソングラインの出走もありません。現在は絶対的な存在がいない路線です。しかし、出走馬のクオリティは高いと思われ、良い意味で主役不在の混戦です。ここで勝った馬がこれからのマイル路線を引っ張手いく存在となるでしょう。それだけに難しい1戦ですが、その分配当妙味に溢れます。人気サイドで決まってもある程度の配当を期待出来るのでやりがいのあるレースとなるでしょう。

 

近3年の1~3着馬は全てその時点でGⅠ馬だった馬に独占され、実績馬に有利な結果が続いています。中でも特に目立っているのが2・3歳時の世代限定戦でマイルGⅠ馬を勝っている馬です。9頭中6頭がこれに該当します。中長距離だと早期完結してしまうパターンや、早くに故障してしまう馬がも多いのですが、この路線では息の長い活躍をする馬が多いようです。

 

今年は5歳世代にサリオス(朝日杯FS)、4歳世代にソダシ(阪神JF桜花賞)・シュネルマイスター(NHKマイルC)、3歳世代にダノンスコーピオン(NHKマイルC)の4頭が2・3歳時のGⅠを優勝しています。近走成績からもこれらが人気を形成していくのでしょう。どれも注目すべき存在です。

 

なお、このレースをもって京都開催の代替GⅠは終了となる見込みです。マイルCSは近2年も阪神で行われていました。坂が儲けられている箇所は違いますが同じ外回りコースなので目立ったデータ違いはないようです。有利な脚質、リピーターが良く馬券になること、有利なローテション(府中重賞)など京都版とほとんど変わりがありません。コースが変わっていても過去10年データは有効だと思います。

 

更新順ですが、今年は毎日王冠の上位馬VS富士Sの上位馬VSスワンSの負け組といった構図のようです。これで17頭中の13頭をカバーできます。簡単な回顧を踏まえながらレース毎に更新していく方法が良いと思います。マイルCS20日(日)なので前日の19日(土)に更新を完了します。ページが長くなるようなら1ページ10000文字を目安に2枚、3枚と増やしていきます。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

毎日王冠(GⅡ)

 

レコード決着となっています。1000m通過57.9秒のハイペースでしたが46.2-46.2の前後半が全くのイーブン。これだけ速い流れを失速無く走り切った内容は素晴らしいものです。上位馬は一様に高評価で良いと思います。

 

1着サリオスと2着ジャスティンカフェが同タイム上がりで最速でした。シャスティンは後方追走でしたが失速率の低い流れをここまで追いつめて来た内容は良いと思います。脚力の高さを十分に示したと言えるでしょう。サリオスの方は馬群の中で追い出せずに苦しい立ち回り。馬群をこじ開けてねじ込んできたのですが脚を使えたのは正味1Fだけ。一瞬で交わした瞬発力は目を見張るものがありました。ゴールで半馬身前に出ていましたがこれとて脚を余してのものでしょう。スムーズだったら圧勝だったかな?とも思えます。3着ダノンザキッドも良い走りでした。外枠発走でしたので馬群の中で脚を溜めるような事が出来ませんでしたが、外々追走3番手から完全に抜け出していました。ペースを考えれば非常に強い内容だったと言えるでしょう。当初の枠からスタートしていたらもう少しレース運びも楽だったのでは?巻き返しの余地ありの敗戦だったと思います。

 

なお、毎日王冠組の過去10年の成績は【2・1・2・19】となっています。勝ち数は他のレースと横並びで最多勝の実績ではあるのですがちょっとハズレが多いですね。複勝率20.8%は最下位になっています。また、昨年の勝ち馬シュネルマイスターが本番で2着となりましたが毎日王冠の勝ち馬がマイルCSで馬券になったのはこの10年でこの1例のみです。天皇賞秋に向かうケースもあるので全馬がマイルCSに出向く事もないのですが、シュネル以外に出走した勝ち馬は他に19年アエロリット、19年ダノンキングリー、20年サリオスといましたが、主だったところは人気を背負って負けています。ローテの印象はあまり良くない感じです。

 

1着:サリオス

 

2年前に毎日王冠を勝って以降はこの馬らしさが見られず4歳時のほぼ全てが不調期間となってしまいました。回復の兆しは今年初戦だった高松宮記念の頃から出始めていたのですが、高松宮記念は初めてのスプリント戦に馬が反応出来なかった事で大敗してしまいます。結果、早熟馬とかオワコン馬みたいな扱いに余計になってしまいました。それを受けた安田記念では8番人気の低評価を受けることとなってしまいました。しかし、調子事態はこの頃から随分とよくなっていた模様で、石橋脩騎手(高松宮記念騎乗)はまだ絶対に終わっていないと話していましたし、レーン騎手(安田記念騎乗)もグッドコンディションと馬の状態に非常に満足していました。

 

ただ、暑くなると体を減らす馬なので春先は馬体重と相談しながらの調整だったので攻めきれず調整に苦労していたようです。そう言う背景があり、この時点はまだ完調手前と言うところが本当のところだったようです。ですが、秋になると涼しくなるので馬体減の心配がなくなりました。思うような調教が出来るようになり、毎日王冠では能力を引き出せる下地作りを完璧に行えたとのことでした。現場レベルもここまで具合が良いのは3年ぶりぐらいかな?とかなりトーンが高くなっていました。毎日王冠はその期待通りの結果となり、毎日王冠以来の勝利を上げることとなりました。時計的なパフォ―マンスも3歳時に走った時より上がっていましたのでこれは完全復活と捉えて良いと思います。

 

適性的な話は特にする必要もないと思いますが、単純にマイルへの距離短縮はプラスですし、ここはGⅠ勝ちをした舞台と同じですからコース適性も気にする必要がありません。また、近年のGⅠ馬は直行ローテが主流となっていますが、この馬は500kを超える大型馬なので一度使った効果は大きいと思われます。また、若い頃の戦績を見ると天皇賞秋に回ってもおかしくない馬ですが、毎日王冠前からマイルCSへの出走は決定していました。競走馬の晩年に差し掛かりますから適性の高いところを選んで来たのでしょう。ここは予定通りの臨戦過程。それに合わせて状態面も上がっています。ここまでの経緯を整理すると無様な競馬をする可能性は極めて低いと思われます。

 

2着ジャスティンカフェ

 

マイル中心に条件戦を勝ち上がって来た馬なので春には安田記念に登録していました。ただ、3勝クラスを勝ったばかりだったので賞金除外でエプソムCに回った経緯があります。こう話すとマイラーが無理をして中距離に駒を進めた感じでしょうが、厩舎としてはこのタイミングで距離を伸ばしたかったのだそうです。結果が出れば天皇賞秋も視野に入っていました。なので、安田記念の除外は織り込み済みでエプソムCを目標に仕上げられていました。結果は4着といイマイチでしたが、これは後方ポツンから外差し馬場でインを突く愚行をジョッキーがしてしまったからでしょう。上がり最速は記録していましたからポジションやコース取りが違えば違う結果だったと思います。ただ、この時の騎乗はオーナーにとっては面白くなかったようで毎日王冠横山典騎手はクビとなり、福永騎手へ変更されています。

 

若い頃から完成すればGⅠでも通用する素材と関係者の期待は大きいものがありました。ただ、非常に乗り難しい馬だったそうで出世が遅れてしまいました。覚醒のきっかけになったのは横山典騎手。競馬を教えながらレースしたいたので馬が競馬を理解してくれたと安田翔調教師は話しています(この方はノリさん信奉者なので乗り換えたくはなかったのでしょう)。このように基本的に乗り難しい馬ですから福永騎手の続戦騎乗は良いと思います。前走よりも馬の理解が進んだことでしょう。控えてキレる脚を引き出すのがスタイルなので今の福永騎手との相性もばっちりだと思います。

 

とにかくキレる脚を使るのがこの馬の長所で昨年の5月から7戦全てで33秒台の末脚を使っています。3走前には32.9秒まで上がりを高速化しています。なので、良馬場希望の厩舎話は常に出ている感じです。切れ味勝負の馬なので出来るだけ良馬場でやりたいとの考えは理解できます。毎日王冠週には週中の雨で馬場状況が心配されましたが、良馬場が濃厚になるにつれトーンが急上昇していました。とは言え、重馬場だったエプソムCでも33.5秒の上がり最速を記録していますので厩舎が心配するほどの事はないのだと思います。だとしても、不安材料が無いに越した事はないので良馬場なら評価を何割か増す方がいいでしょう。

 

また、上がり最速キャラではありますが毎日王冠ではサリオスと同タイム上がりでの最速でした。そのサリオスはまともに追えていませんでしたからスムーズだったらジャスティンが最速を記録していなかった可能性は高いと思います。やはりレースグレードが上がるとこの馬並みの脚を使えるGⅠ級はいくらでもいます。末脚が武器の馬ですがGⅠレベルでその優位性を保てるかどうかが鍵となるでしょう。

 

3着:ダノンザキッド

 

賞金を加算しないと今後ヤバいと言う事で夏から使っているのですが好走はすれど3着、3着と1円も加算出来ないままでした。今回はゲート割れだったので出走が適って良かったと思います。この馬も勝ち星から遠ざかっていますが、マイルCS安田記念もどちらも0.2秒差の好走で普通に通用しています。ムラなところがあるので中山記念の様なポカもあるのですが、マイルに限れば凡走らしいものはありません。

 

特徴らしい特徴はないのですが、昨年の様に速い上がりが求められる瞬発力比べでも毎日王冠の様に持続力が問われる展開でも走れます。ただ、ギアが入るのに時間を要すタイプなのである程度のポジションから早めに仕掛け、脚を使い切る乗り方が向いているとは思います。後方から一気に差を詰めてくるような脚は使えないと思うので積極的なポジショニングが重要です。また、道悪適性はある方みたいです。超巧者と呼べるほどの実績はありませんが稍重だった関屋記念では32.9秒の末脚を繰り出しています。パワータイプと言うことなんでしょう。馬場の良し悪しに関わらず一定の末脚を使う事が出来ます。関屋記念の戦前から厩舎サイドも道悪歓迎のコメントを出していました。他が苦にする分だけ有利になるという認識で良いと思います。総じて言えるのは、良馬場でも道悪でもタフな条件・展開の方が力強い走りが出来るという事です。GⅢやGⅡで取りこぼすのはそう特徴の結果だと思います。GⅠならレースの内容がタフになりますからこの馬にはGⅠの方が力を発揮しやすいのではないかと考えています。

 

今回のヒントはやはり鞍上問題と言うべきでしょう。同厩の3歳マイル王ダノンスコーピオンと比較すると優先度の低さが如実に表れてしまっています。ダノン=川田騎手は今更説明の必要のない鉄の繋がりです。これまでも何度かあったのですがこういうケースは川田騎手の好きな方に騎乗して良いという風潮があります。それだけ関係者の信頼が高いということです。その川田騎手がダスコの方に騎乗していることからどちらで勝負しているかは明白です。キッドの方は毎日王冠で戸崎騎手が騎乗していますが、この時は川田騎手がレイパパレに先約があったからで特別な意図はありませんでした。この時にクセの無い馬なので乗り替わりが問題になる事はないだろうと厩舎は話していました。今回も乗り替わりを問題にしなくても良いでしょう。ですが、今回はその意図がはっきりと表れていますのでダスコ以上の評価はしづらいと言わざるを得ないですね。

 

9着:ハッピーアワー

 

あえて言う事もないのですが、中央競馬では正直もうしんどい状況で関係者も選り好みせず、適性度外視の姿勢で出れるところに出走させて出走手当を稼いでいるという状況です。GⅢやリステッドでも競馬になっていない現状ですからGⅠでどうのこうのは考えていないと思います。

 

富士S(GⅡ)

 

NHKマイルCが1:32.3。安田記念が1:32.3。そして富士Sが1:32.0。同条件の春GⅠより速い時計での決着でした。それだけに過去の富士Sの中でも2番目に速い走破時計が記録されています。NHK、安田の好走馬がそろって好走したのも納得で力通りの結果だったと見て良いでしょう。マイル戦らしく序盤からペースが流れた展開で1000mの通過は57.8秒とこれは安田記念以上のハイペースでした。それでも後半に極端な失速は見られずレースの終盤も力は問われておりタフなレースだったと思います。今年の富士SはGⅠレース並みの内容だったと考えて良さそうです。故に力差が如実に出たレースだったと思います。馬体を併せて入線した1~3着馬から少し離されてしまった4・5着馬の2頭は少々地力で劣ったかな?という印象を受けました。

 

ラスト300mぐらいのところで先行集団と中段以降に控えていた待機組が綺麗に入れ替わることとなりました。3着ダノンスコーピオンがやや前に位置していましたがその他のセリフォス、ソウルラッシュ、ピースオブエイト、エアロロノアの4頭は大体同じような位置で追走していました。ので、ダスコが真っ先に抜け出すのですが後続の恰好の目標になったと思います。斤量も背負っていましたからセリフォス、ソウルからクビクビの3着は立派な内容で負けて強しだったと思います。

 

1着:セリフォス

 

デビューから一貫してマイル戦を使われています。近3走はNHKマイルC4着→安田記念4着→富士S1着と府中ばかりを走り、走破タイムは1:32.6→1:32.4→1:32.0と0.2秒づつ詰めながら好走を続けています。皐月賞馬、NHKマイルC馬、ダービー馬が集っていた朝日杯FSで1番人気だったのはこの馬です。セリフォスもGⅠ級の逸材である事は間違いありません。3歳6月の時点で古馬GⅠ4着はその証明と言って良いでしょう。先を越された同期に一日も早く追いつきたいところです。

 

本番を前に一度使った事は良かったと思います。NHKマイルCはぶっつけ本番でしたが伸びを欠いて負けています。陣営としてはしっかりと仕上げた自負があっただけに物足りない結果でした。しかし、次戦の安田記念では一度使ったことで良いガス抜きが出来たとた叩いた効果が大きかったようです。4着と結果は同じでしたが伸びて差を詰めて来た内容はNHKマイルCにはなかったものなので叩き2戦目の効果は結果にも表れていたと思います。今回も前走以下と言う事はまず考えられません。富士Sも本番を見こしてオツリを残した仕上げでしたから上積みは期待出来る状況です。普通に上げてくるでしょう。

 

この陣営は同齢のマイル王者ダノンスコーピオンをとても意識しています。朝日杯FSでは0.1秒差先着、NHKマイルCでは0.3秒差負け、そして富士Sでは0.1秒差先着と2頭はいつも接戦で確かにライバル関係と言って良いと思います。その為、2k軽い状況で出走出来る富士Sで負けたらヤバい事になるとかなり意識していました。ダスコにだけは負けられないという気持ちは非常に高かったようです。然して、ダスコに先着を果たし富士Sを優勝したのですが今度は斤量差がなくなります。ダスコは増減なしですが、セリフォスは2k増となります。この差を何かで埋めなくてはいけません。

 

斤量差を埋めれるとしたら大幅に強化された騎手変更以外に考えられないと思います。今回はレーン騎手が騎乗します。最初からレーン騎手と決まっていた訳ではないのですが、富士Sを使う負けから本番は外国人騎手になる事は決定事項でした。ここは勝負と言う意気込みの表れでしょう。実際、強力な援軍だと思います。レーン騎手はリスグラシュー有馬記念を制してからGⅠ勝ちはありません。しかし、2着・3着にはちょいちょい顔を出しています。特に今年は人気薄での好走が目立ちます。オークスを10番人気で2着、安田記念を8番人気で3着、宝塚記念を5番人気で2着、エリザベス女王杯を5番人気で2着など。これは馬券を買う我々にも強力な援軍となりそうです。この方が騎乗するだけ2・3割増しのパフォーマンスが期待出来るのではないかと思います。

 

2着:ソウルラッシュ

 

デビュー勝ちして以降鳴かず飛ばずの時期が続きましたがこの間に負けた相手がジャックドールとか、テーオーロイヤルとか。このことからわかるように中距離、長距離のレースをしていたので仕方ありません。ノドに弱い所もあり結果は余計に出ませんでした。転機となったのはマイル路線に転向したことなのですが、それに合わせて体質が強化、ノドの不安も解消、加えてこのタイミングで試したブリンカーの効果もテキメンでらゆるものが噛み合って一気に素質が開花しました。マイラーズC優勝も含めてマイル転向後は無敗の4連勝を成し遂げています。

 

厩舎側も高い能力を確信していた期待馬でした。その厩舎曰く、この馬のアピールポイントはパワー、体力に自信があるとの事です。単純に道悪で強いという事もありますが、タフな展開でも底力で好走してしまうのだそうです。こういう長所はめげずに走った中長距離時代の名残りなのかもしれません。だから、GⅠの様な厳しい展開の方が力を発揮出来るのではなないか?厩舎ではそう考えています。安田記念では馬群から抜け出せなかった事が敗因で力負けではありません。ここは改めて期待のかかるところでしょう。

 

パワータイプというだけあって時計のかかる状況での好走が目立っていました。4連勝中の3勝が道悪だったこともあり、安田記念は速い馬場への対応が疑問視されていました。その安田記念が不完全燃焼の結果だったのでこの疑問は秋へ持ち越されていたのですが、安田記念以上の好時計で富士Sを走れたことでこの疑念も晴れる事になるでしょう。弱点かもしれなかった不安材料が解消されたのは予想する立場からするとあり難いところです。欠点らしいものがいよいよなくなってきているので、あとはトップマイラーとの力次第となります。

 

富士Sはパフォーマンス的に安田記念に劣りませんのでこの馬もトップクラスの一角に数えていいかもしれません。優勝したセリフォスとの斤量差も小さくなるので逆転も可能なことでしょう。本番を見据えた仕上げでしたから状態面のUPも確実です。状況的にこの馬が上位に入着する可能性は小さくないと思います。厩舎の期待にここで応えても不思議ないかもしれません。

 

3着: ダノンスコーピオ

 

セリフォス陣営がそうであるようにこの馬の陣営もセリフォスは意識すべき存在であるようです。NHKマイルCの時にはセリフォスは逆転出来ない相手ではないという話をしていて強敵として強く意識していました。力差がある訳ではなく、条件次第であっちが勝ったり、こっちが勝ったりと言う関係性で捉えています。2歳の頃から幾たびも戦っているだけに良いライバル関係が出来上がっています。安田記念を4着と走ったこのライバルを物差しにするとダスコも古馬GⅠで通用の目途を立てる事が出来るでしょう。2k重い斤量で走った富士Sの内容からも有力な候補の一角に上げて良い馬だと思われます。

 

ダノン軍団の3歳馬の中では共同通信杯を勝ったダノンベルーガと双璧の評価で、この馬も当初より期待、評価の高い馬でした。ただ、スコーピオンの3歳戦は順調に使えていたという感じがありません。詳細は省きますが、共同通信は調整途上の段階で使い、その反動から調子を落としてアーリントンCでは6分程度のデキ。NHKマイルCは前走より良くなったという評価にとどまり絶好調だった朝日杯FSのデキにはなかった模様です。それで結果を出して来たのであえて言う事でもないのですが、順調であったならもう少し上のパフォーマンスを発揮していたかもしれません。

 

これに比べれば秋の使いだしは至って順調。前走は叩き台の出走だったので勝ち負けにこだわりは見せず、8分9分の調整で本番に余力を残しています。それで負けて強しの3着は能力のある証拠でありましょう。もともと叩き良化の傾向がある馬なので本番に向けて思惑通りに上げてくると思われます。調整過程が春とは段違いであり、今回は力を遺憾なく発揮してくるのではないかと思います。

 

4着ピースオブエイト

 

無傷の3連勝で毎日杯を勝ち勇躍ダービーへ駒を進めて来ましたが距離が長く、不利も重なり大敗となりました。以降は2000mの小倉記念、1600mの富士Sと徐々に距離を短縮しています。ラスト1Fで伸びが止まった小倉記念。最後まで伸びきれていた富士S。近2走を比べると距離はこのぐらいが良いのでしょう。1600~1800mが好走ゾーンと言う事になりそうです。

 

能力面の話をするとシルクRの中でも元々の期待値はそれほど高くない馬であったようです。今にして思えば優勝した毎日杯は3着ドゥラド―レスがへぐったレースであり、2着ベジャールはその後ラジオNIKKEI賞セントライト記念と大敗続き。レースの結果に疑問符が付きそうです。これは厩舎も認めていて「恵まれた面が強い」と地力で勝った自信は持っていなかったようです。なのでダービーも掲示板があれば上出来と言うトーンで勝負気配のない1戦でした。そのトーンは富士Sでも似たようなもので今後の選択肢が広がるレースが出来ればと試金石的な物言いでした。厩舎の話を総合するとGⅠを意識するような扱いはここまでされていません。イメージとしては、正月の金杯とか来夏のサマーシリーズ辺りが妥当な馬という印象を受けます。

 

実際、前走も上位3頭には力負けの感が強いのでGⅠ級とは差があると思います。適性があったとしても今回のメンバー相手に地力勝負で勝ち負けに持ち込むのは厳しいのではないでしょうか?毎日杯がそうであったように何か恵まれる必要があるでしょう。ただ、どういうケースで恵まれるのかが判然としないので予想では狙いづらいというのが本音です。

 

5着:エアロロノア

 

笹田調教師は伊藤雄厩舎時代からエアの馬に携わっています。馬主との縁も深く今ではエア軍団の主戦厩舎でもあります。そういう背景もあり以前からエアの馬で重賞を勝ちたいと語っていて、特にエアメサイアを祖母に持つこの馬への思い入れは殊更に強くなっています。師はこの馬も重賞を勝てる力があると思っているので本格化した今年は積極的に重賞競走にチャレンジしてきました。その臨戦過程からも出走するだけと言う消極的な姿勢で挑んではいないでしょう。

 

この馬もソウルラッシュと同じで昨年に3連勝でマイラーズCに挑んでいました。が、勝ち切れず5着。今年のマイラーズCも5着。そして前走の富士Sでも5着。重賞競走を走ったのはこの限りではありませんがとにかく5着がこの馬の最高着順です。重賞ではややパンチ不足な現状です。ただ、前走に関しては見直せる余地があります。まず体の緩い馬なので1度叩いた2戦目で引き締まるタイプなため、休み明けはあまり得意ではありません。また、エンジンのかかりが遅い馬なのでブレーキを踏むことなくスムーズに回って来る事が好走の条件です。富士Sでは他の上位馬が外を回していたのに対し、こちらはインから馬群を捌く競馬。抜け出すのに少々手間取っています。こういう運び方ではこの馬のエンジンでは加速しきれません。トップスピードに至る前にゴールしてしまいました。それで5着ならそう悲観するものではないでしょう。今回は上がり目を期待出来る状況なのでスムーズだったら富士S以上の走りが可能です。

 

上記の点を踏まて安田記念を見てみましょう。向こう正面ではいつでも外に出せるところで競馬をしていて外から進出し、直線で大外というレース運び。この馬の力を最大限に引き出せる乗り方をしています。結果は7着でしたがそのタイム差は0.2秒にすぎません。使った上がりは最速でした。この時は最後方追走であったのでその分だけ負けた感じでしたから、富士Sの様な中段ぐらいで運んで、安田記念の様なスムーズな競馬が出来れば面白いところです。これだけ噛み合えばとはなって来ますが、それが出来ればGⅠで入着なしとは言い切れないでしょう。阪神マイルもOP2勝の実績がありコース変わりも問題なく、前走以上の状態に馬が出来て来ますから、乗り方次第の可能性は持っていると思われます。少なくとも、地味な印象だけで無印にして良い馬ではないでしょう。なお、今回は安田記念の時と同じ7枠発走になります。好走条件はやはり揃っている印象です。

 

 

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