競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

皐月賞(GⅠ) 出走馬カルテ②

 

こんにちは。

 

こちらのページは、

 

の、続きになります。↑のページではディープインパクト記念組、スプリングS組の合計8頭を紹介しています。こちらのページでは共同通信杯組、若葉S組、別路線組の合計10頭を紹介していきます。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

共同通信杯

 

この10年で【5・0・2・9】と言う共同通信杯組の成績。中山のトライアル2走を圧倒する相性の高さを誇る。相性が良いというよりも、本当に強い馬が使うレースが共同通信杯だからだと思う。データを拠り所とするよりもそう言う顔ぶれがそろっていたかどうかで扱いを変えていく方が良いと思う。でも、今年はかなり難しい。勢力図も定まらず抜けた馬が最後まで現れなかった3歳牡馬路線では力関係を推し量るのが難解極まりない。ただ、4着馬がディープインパクト記念を、6着馬が毎日杯を勝っている。上位入線馬が次々と重賞を勝ったエフフォーリアが優勝した21年に近い現象が起きている。しかも、2・3着馬は皐月賞直行で必ずしも上位馬が走った訳でもないのだから凄い。今年の各馬もそれなりに強かったと見ておくべきかもしれない。

 

勝ち時計も例年と比べて速い方で好時計決着だった。それなりのペースで進んだ上での上がりの競馬になっており、持続性も瞬発力も求められた総合力の高さが求められた1戦。有力馬に有利な流れであったと思われる。負け組から重賞優勝馬が出ていたように、これらの上をいった上位入線馬の力量はある程度担保出来る。混戦模様だけに抜けた存在として扱うのは難しいところだが、上位扱いの可能な馬として良いと思う。ただ、2・3着馬は不利のあった馬なので結局はスムーズに立ち回れた馬が勝ったというレースでもある。優勝したファントムシーフが本当に一等賞だったかはまだ分からない。

 

1着:ファントムシーフ

・2歳馬が2000mのレースで33.5秒の脚を使うのは凄いと思う。この条件ではあまり目にする事が無い切れ味。追えばしっかりと伸びる馬。

・立ち回りは上手く、最終コーナーでの反応も良い。気性に難しい面もないので乗り方にも注文はつかない。評価は高めの方が良いと思う。

 

上記が共同通信杯出走時のカルテ。

 

発馬、立ち回りに不備も無くスムーズにレースを運べたことが勝因としてあげられる。この馬のパフォーマンスは特に問題はなかった。ただ、追い出してから2着馬を交わすのに手間取っていた感がある。ルメール騎手は追い出しを待ち、逃げた2着馬を可愛がる余裕も見せていたのだが、その割にグンとギアが上がる感じがなかった。追って追ってようやく間に合ったという感じで前に出たのはラスト100m前後ぐらい。こういう面は新馬戦、野路菊賞と2連勝した2戦でも見られていた。追い出してからの反応は少々鈍い。ホープフルSも一端は3着に浮上していたがスピードに乗りきらないところを3着馬に差されていた。条件を問わずしてゴール前の甘さが目につく。共同通信杯では交わせたが、それも2・3着馬に不利があってのものなので上がりの競馬を差し切れていたかは微妙な様な気もしてくる。持続力も、脚力もあるので成績欄は立派になっているが勝った3勝はどこか危うい。ただ、こういう馬は距離が長い方が良いと思うし、立ち回りで勝負できる中山2000mは良い条件だと考えられる。決め手勝負の度合いが薄まるので府中の1800mよりは良いと思われ、ホープフルSの負けもゴチャついた分立ち遅れただけだった。スムーズだったら2歳GⅠ以上に走れてよさそう。共同通信杯の勝利だけでは抜けた存在にはなれていないと感じるが、皐月賞の適性は高い方だと思う。

 

2着:タッチウッド

・逃げ切り勝ちした新馬戦は1000mの通過が63.1秒。後半1000mも後半59.1秒で凄い持続性を発揮したとは言えない。楽逃げでもあったので内容的には極めて普通。

新馬戦の内容から評価出来るのは気性の良さ、コントロールの利いた走り、上がりの競馬から繰り出した34.0秒の瞬発力と言ったところ。

・弱い馬と言う印象はないが、判断は難しく、まだ経過を観察したい。

 

上記が共同通信杯出走時のカルテ。

 

スタートで立ち遅れて一番最後の発馬になった。でも、位置取りが悪かったのはこの一瞬だけ。すぐさまダッシュして1F目には中団、2F目には鼻を伺うところまで押し上げていた。1F目は12.9秒と速くなかったのでこの区間のリカバーは容易だったかもしれないが、以降は11.1-11.3と速めのラップになっているのでこの区間にハナを奪いに行くのは暴走だったと思う。こんな強引な運び方をしてラスト3Fが11.3-11.3-11.5とほぼ失速無しの上がりを記録するのだから凄い馬だと思う。スタートが決まっていたら最後まで粘り通していたかもしれない。また、ハナに立ってからは5F目に12.8の淀み区間を作っているので緩急自在な感じもある。こういう逃げ馬に武豊騎手は面白そう。コントロールの利いた走りは新馬戦も同様。それで最後に速い上がりを記録出来る。先行馬としては優秀な立ち回り。共同通信杯の結果から力があるのは分かったので、上手い事逃げれれば皐月賞でもハマるのではないかと思う。厩舎の話では使いながらよくなって来るタイプとの評価で、本当に強くなるのはこれからかもしれない。こう言う評価でありながら走る度に結果が伴うのだからポテンシャルは高そうである。不安材料は2走しかしていないキャリア不足ぐらい。ただ、中山初見参ながら新馬戦は阪神2000mで勝っているので特に問題にはならないと思う。モマれる競馬も共同通信杯で経験出来たし、意外と経験値が高い。けっこうやれるのではないかと思う。因みに、共同通信杯で4着だったタスティエーラも本馬と同じムーア騎手で新馬勝ちしていたが、ムーア騎手の2頭の評価はこちらの方が若干上であったようだ。

 

5着:ウインオーディン

・力んで走っている感じはあるが折り合い面や仕掛けてからの反応は及第点。

稍重でも33.1秒の末脚を使うようにとにかくキレる脚を確実に使う。タイトな展開や上がりのかかる展開でどうかは未知数も今回(新潟2歳)は親和性が高そうである。

・全3走で32.5秒、33.1秒、33.2秒と常に高速上がりを繰り出している。が、走った全てが上がりの速い競馬であり、この馬の末脚だけが突出していた訳ではない。

 

上記が共同通信杯出走時のカルテ。

 

共同通信杯は8枠からの発走。スタートをそろっと出て最後方までさがってから最内に潜り、ラチ沿いから中団まで押し上げる。ポジショニングを放棄して経済コースを進める味な競馬。ロスも大きかったが力を出し切れたレースではあった。使った上がりは最速でダノンザタイガーと同タイム上がりの33.6秒だった。やはり末脚は安定してキレる。これまで使った末脚のなかでは最も上がりがかかるものだったが、このペースでこれだけの末脚を使えた事は評価出来る。それまでは上がりが速くなって当然というレースばかりだったので持続性や地力の高さを測りかねていたが共同通信杯の様なレースでも脚を使ってくれたことでこの馬の能力の高さを感じる事が出来た。重賞級と言う評価がこれで成り立ったと思う。ただ、厩舎ではこういうキレ味があるから府中は良いという話でもあったので、中山でどういう脚を使うのかが見えて来ない。時計のかかるコンディションでどこまでキレる脚を使えるだろうか?稍重でも33.1秒までキレた馬で、ラストを高速化させることに長けたところがある。中山の荒れた馬場でも結構キレてしまうかもしれない。ただ、冷静に見ると使っている脚はそう長くないようにも思う。同タイム上がりだったザタイガーはポジションを取れていた馬で本馬よりは脚を擦り減らしていたし、進路取りがスムーズで無かったので脚も余していた。末脚温存の待機策だった本馬の末脚がこれを上回れていない点で少々物足りないものとなる。休み明けの割には良く走ったが、それはザタイガーも同様なのであまり関係がない。最後は結局上位馬と同じ脚色になっていた点でも末脚の航行距離に限界がありそうに思う。GⅠ級に交じるとこの馬の末脚でも際立ったものにならないかもしれない。もう少し位置取りを改善した方が良いだろう。

 

若葉S

 

今年の若葉S稍重だったので勝ち時計がかなり遅い。このレースは道悪で行われる事が多いので、馬場差は同一ではないが近年の稍重年と比較してみると

 

・ヴェロックスが勝った19年(稍重)
∟36.9-62.2=2.02.1、後傾1.4秒

 

・デシエルトが勝った22年(稍重)
∟36.5-60.8=2.00.2、後傾2.2秒

 

・ショウナンバシットが勝った23年(稍重)
∟38.6-64.0=2:02.7、後傾5.3秒

 

となっており、今年は明らかにパフォーマンスが低い。ペースが極端に遅いので時計が速くならないのは仕方ないが、それに内容が伴わないのも仕方ない。例えば、デシエルトの記録は抜けて優秀だがこれは逃げて記録したものである。このペースで行ってラスト1000mは59.4秒だった。今年の2着馬ラスハンメルも逃げ馬だったがそれで記録したラストは58.7秒とあまり変わらない。1000mの通過差が3秒以上もあったことを踏まえるとラスハの持続性能には疑問符が付く。それとハナ差だった勝ち馬ショウナンバシットも同等の評価となり価値が高まることはない。

 

稍重状況だった事を考えると、後半に58.7秒以上に加速するのは物理的に不可能だったかもしれない。だとしてもそれだけ前が楽を出来たという事を逆に裏付ける。後半のスピードが速くならない前提のレースを64.0秒で行けたのは本当に恵まれていたと言える。中身の伴わない上がりの競馬に大した価値は見いだせない。展開の恩恵を受けた1・2番手の馬がそのまま雪崩れ込んだだけという味気ない若葉Sであった。

 

そもそも、道悪競馬で5.3秒も後傾することが不自然でとてもレースと言える代物ではない。ショウナンもラスハもやれば強いのかもしれないが、今年のレースからGⅠ通用の根拠を見つけるのは不可能である。

 

1着:ショウナンバシット

 

2億8,600万円もしたノーザンFの生産馬。ここまでの戦績は5戦3勝で複勝率は100%を維持している。ここまでの2敗の勝ち馬は新馬戦のベラジオオペラと、すみれSのシャザーン。皐月賞で再戦となる。新馬戦はべラジオと互角に動けていたし、すみれSは進路を失くし追い出しが遅れたものなのでこの2頭と勝負付けが済んでいるとは言い切れない。これらと競った事がこの馬の強さを表しているとも言えそう。むしろ、評価が難しいのは勝った3勝の方。2勝目の1勝平場と3勝目の若葉Sはかなりのスロー競馬によるもので展開の恩恵を多分に受けて勝ち上がっている。また、6頭、8頭といずれも少頭数であり、強力な馬を打ち負かして来た訳でもない。相手に恵まれていた点は指摘せざるを得ない。内容が良かったのは1勝目の未勝利戦ぐらいだが、2歳12月の未勝利勝ちを皐月賞での好走根拠にあげられるはずもない。プロフィール的には強い可能性も感じられるのだが、実際のレースでそれを証明しているとは言えない。評価も判断も難しい。評価を難しくしている要因は重馬場でのレースが多いこと。時計的な価値が見えにくいので実力の程を測りかねてしまう。道悪になるなら強力な加点材料だが、そうでないと何とも言えない。また、2200mを2戦もしているのも気になる。皐月賞を目指す過程でわざわざ非根幹距離の2200mを走るような馬はいない。強い馬が出走してくる事が無いため弱メンになりやすい。よって、賞金加算しやすいので中途半端な馬が好んで出走してくる傾向がある。同距離のすみれSの歴史がそれを証明している。3勝の実績だけなら上位に入るがその3勝の内容が少し疑わしい。いずれにせよ、トライアルや一連の重賞戦線を勝ち抜いてきた馬を差し置いてこの馬に高い評価を下す事は出来そうにない。混戦なのでこの馬ぐらい走れていれば足りてしまう可能性もあるので本当に困るところだ。

 

2着:ラスハンメル

 

2歳の7月に新潟1800mでデビュー。これがレース上がりが32.5秒と言う上がりがとんでもなく速いレース。そこで決め手負けしてしまったので以降は先行して早めの競馬をしたり、決め手勝負にならないような条件を選んで出走している感じがある。発馬も上手いので楽に先行していけるので積極的なレースで活路を開いている。なお、状態が落ちていた3走目と距離が長かった4走目は度外視した方が良さそうである。また。デビュー時518kもあった馬が休養明けの4走目で+26kも増えていた。前走の若葉Sは-10kと絞っていたが、まだ絞れそうな感じがあるので上積みがありそうな状況。前走以上に走れて良い可能性はある。先行して4角先頭と言うのが好走のパターンになるが、どんなにスローで行っても最後は小さくない失速をするタイプ。持続性はそれほど高くない。追い比べで強いタイプでもないので余程恵まれないと若葉Sの様にはいかないと思う。GⅠで強調出来るような性能があるとは思えない。

 

別路線組

 

ダノンタッチダウン(朝日杯FS2着)

・気合をつけながらでないと好位をキープ出来ず、徐々に下がり置かれ気味。コーナリングも上手いという感じはなかったのでまだまだ完成途上という走りだった。

・レース中ただ1頭末脚を33秒台まで加速して前残りの展開を差し切る。末脚の鋭さに素質馬の片鱗。

・大事に乗り過ぎているのでいつも直線だけの競馬。よって、末脚以外に褒められる点が無い。展開の恩恵は受けているのでそれでも勝てないのは位置取りの問題。自在性をみせないとGⅠでは厳しくなる。

 

上記が朝日杯FS出走時のカルテ。

 

まず、朝日杯FSについて。同条件のホープフルSから前哨戦を挟まずに皐月賞に直行してくる馬は増えてきたが、マイルの朝日杯FSから直接するケースは珍しい。この10年で【0・1・0・1】。馬券になったのは朝日杯FSの勝ち馬サリオス(20年)。3着馬だったレッドベルオーブ (21年)は8着まで。2着だった本馬はどういう結果を残すだろうか?それにしても朝日杯FS組の凋落が止まらない。まさかドルチェモアまであんなに負けるとは。次走を済ませた朝日杯FS上位組はいずれも着を大幅に低下させ木端微塵。ここまで何度も触れてきたが、朝日杯FSのレースに強さを保証するようなものはなかったし、出走馬のレベルにも戦前から疑問が噴出していた。そう言う懸念を上位に走った各馬が証明しているようで悲しい。本馬の評価もこれに倣うべきだろうか?

 

そんな朝日杯FSにおける本馬の走りには良いところと悪いところがあったと思う。それまでは後方待機で直線勝負だったが、前走は序盤から押し気味に進めて中団後ろぐらいで競馬が出来た。また、大外一気の強気な競馬ばかりであったが馬群を切り分けて前を捉えに動けていた点もこれまでに見られなかったこと。それまでは馬の状態に合わせてレースで無理に動かさなかったのだが、やればちゃんと動けるという事を確認出来たのは評価しておきたい。ただ、勝負所での機動力はまだ弱く映った。すぅーと上がっていくような感じがなく、川田騎手はしごいて押し上げていた。肝心なところではまだまだ動ききれていない。こういう性能は皐月賞では欠かせないもの。2Fの延長については分からないが、立ち回りや器用な走りを見せていないのでこの点は不安材料となるかもしれない。勝負所で力強く回ってこれるかが鍵になる。サリオスの様に能力の高さで克服してしまう可能性もあるが、朝日杯FS組のレベルを思うと能力的な優位性も見えにくくなっている。積極的に評価出来る材料は少ない。これならいっそのこと、いつも様に後方待機でマクりに賭けてもらった方がいいかもしれない。皐月賞はこういう競馬が多々決まるレース。末脚の破壊力が高いのは間違い無い事なので、最大の長所を活かす競馬をして来ればチャンスは生まれるかもしれない。また、この馬の大事な点は成長度。本格化は先と言う事は常に言われていたことで、前走時でも馬はまだまだ完成途上だった。4ケ月の間に大きな成長があれば上記の限りではなくなる。より動けたり、より破壊力のある末脚も使えるかもしれない。その点はレース前に測りきれないが、厩舎の評価から感じ取る必要はあると思う。                    

 

ソールオリエンス(京成杯1着)

・ペースは超スローで時計も遅い。数字面で評価出来る材料はない。

・走りの質やレース振りには素質馬の片鱗。510kの大型馬で走りも雄大。スケール感は隠しようがなかった。

 

上記が京成杯出走時のカルテ。

 

まず、京成杯について。近10年で【0・0・1・4】という成績。その前の10年でも3着が一度あるだけ。データ的には10年スパンで3着1度というペース。直行馬の成績は芳しくない。ただ、1月始めのレースなので出走馬は皐月賞前にレースを使うケースがあるので直行する馬そのものが少ない。母数の少ないデータに信憑性はない。ただ、近年は2歳暮れのホープフルSの重要性が高まっているので本当に強い馬はそちらに回るケースが増えた。京成杯そのものに形骸化の兆候があり出走馬が集まらない年も多い。今年も9頭立てと1勝クラスでも厳しいというメンバーが集まったレースだった。レベルの高いレースだったとは言い難い。2着馬が毎日杯6着、3着馬がスプリングS6着と相手が強くなった事で着を低下させていて、4・5着馬も1勝クラスで好走レベルまで。出走馬のレベルは押並べて低い。走破時計も例年と比較して1秒前後遅く、暮れのホープフルSとも0.7秒遅く、数字的な裏付けも弱い。中山2000mは時計が速くなりにくいので時計比較の意味はあまり重要ではないが、少なくとも京成杯がハイレベル戦でなかったという事は言って差し支えない

 

以上の様な京成杯を勝った本馬をどこまで評価すれば良いかがが難しい。4コーナーで大きく膨れた時は場内もどよめいたが、そこからの末脚は見た目に鮮やか。エンジンもすぐに再点火して後続に2馬身半。コーナーのロスを考えれば強い内容だった。瞬時にギアがトップに入る瞬発力の性能は高く評価出来る。しかし、それで差せた相手は弱く、スローペースにもかかわらず先行勢が失速してしまった実の無い内容。これも事実であろう。仮に、皐月賞で同じような立ち回りになったとしても、今回のメンバーは京成杯の様には止まってくれない。ロスを覆してまで差し切るのは不可能だと思う。この内容で人気になってしまう構図はシンザン記念を勝ち、桜花賞で2馬人気の支持を受けたライトクオンタムと同じ現象。勝ちっぷりだけを評価して、本質を見過ごすのは宜しくない。有力馬の1頭に数えなければいけない馬だが、まだまだ完成途上で本格は先と言う話。それでこれだけ走れている点は十分な評価が必要だが、完成度で他馬に劣る可能性も考えておかなければならない。

 

フリームファクシ(きさらぎ賞1着)

・気性が前向き過ぎるようで前進気勢が強い。使う度に折り合いが悪くなって来ている。

・折り合いを欠きながらでも、追い出してからちゃんと反応してシッカリとした脚を使えているので評価を低くくする必要なない。

・デビューから2000mに拘って使われていて府中・阪神・中京と特徴の異なる舞台で結果を残している点は評価出来るところ。

 

上記がきさらぎ賞出走時のカルテ。

 

まず、きさらぎ賞について。このレースを勝っても大成する馬はほとんどいない。皐月賞との関連性も薄く【0・0・1・6】と馬券になれたのは16年3着サトノダイヤモンドのみ。この3年は中京2000mで行われ、皐月賞よりの条件だったがそれでも好走馬は出てこなかった。きさらぎ賞も隙間重賞的な性格があるので強い馬が集まりにくいため、GⅠで好走する馬が出現しにくいのだと思われる。ただ、今年のきさらぎ賞は時計的な価値が大きいようである。中京で行われた3年の中では一応最速となる走破時計を記録している。また、今年のきさらぎ賞は開催12日目の最終週に行われたものだが、1ケ月後の開幕週に行われた金鯱賞きさらぎ賞より0.1秒遅いものだった。馬場状況の悪いなか古馬GⅡ以上に走れた今年のきさらぎ賞は例年と一味違うかもしれない。

 

好時計決着だったきさらぎ賞を本馬は先行2番手から記録したので評価は高い。2着馬以外はかなり弱いメンツだったが違う次元の走りをしているので出走馬のレベルが低いのは無関係。決定的な着差もつけているので本馬はちゃんと強かった。行きたがる気性が強いので厩舎も折り合いを教えることに重点を置いて調整してきたが、川田騎手曰く、馬の成長に合わせて力強くなっているので余計に力むようになってきたとのこと。この気性のまま皐月賞を迎えることになりそうだ。ただ、ここまでの4戦はペースがそれほど速くなく、この馬でなくてもかかりそうなペースであった時もあったほど。しかし、皐月賞ならペースが流れやすい。我慢させることなく折り合いは自然とつくこのではないだろうか?ダービーでは分からないが、皐月賞なら案外やれるかもしれない。コーナー4つの条件も走り慣れていて、勝負所では自ら動いていける機動力もある。皐月賞の条件はかなりマッチしているように思われる。厩舎側の評価も入厩時から高く、デビュー前からソダシと互角の併せ馬がデキたいたほど力強かった。早めに賞金を加算できるようにときさらぎ賞を選んでいたほどで、クラシックは当初から意識されていた。2000mに拘った使われ方からも皐月賞は狙っているはず。メイチに近い仕上げかもしれない。なお、この馬の教育係だった主戦の川田騎手はダノンタッチダウンに騎乗する。これはダノンの馬と言うのもあるが、師匠の安田隆厩舎の管理馬である事の方が大きいだろうと思われる。師は既にラストイヤーで残された期間でGⅠ勝ちを諦めていない。ただでさえ絆の厚い師弟なのでこの状況で他厩舎の馬を優先するはずがない。ファクシを見限ったというのは考えづらい。

 

シャザーン(すみれS1着)

 

まず、すみれSについて。大昔に遡れば勝ち馬にはフサイチコンコルドキングカメハメハといったダービー馬の名前が出てくる。だが、こと皐月賞に関しては厳しい結果が続いている。すみれS創設以来皐月賞で馬券になれた勝ち馬はいない。その理由は簡単で皐月賞を目指している最中にわざわざ非根幹距離の2200mを使ってくる馬なんていないから。よって、強い馬が集まらず、弱メン相手に勝ちあがったところで一線級の集まる皐月賞には通用しない。近年でもキタノコマンドール、サトノルークス、レクセランス、ディープモンスターと言った無敗馬や連勝馬が勝ち上がって皐月賞で話題になるが全く走れなかったのはそう言う理由である。すみれS勝ちというだけで九分九厘軽視して構わない。だが、しかし。今年の勝ち馬シャザーンはどうなんだろうか?

 

新馬戦はレース上がりが32.5秒の超上がりだったので32.4でもキレ負けた2着。これはあまり気にならない。2走目、3走目で連勝中だがこれらも1000mの通過が64台のドスロー競馬だった。この馬のレースはいつもこんなのばかり。だから持ち時計はどれも遅い。強さの根拠になるような経験がない。のだが、パーツ毎に見ていくと侮れないところがある。2走目の未勝利勝ちはスローを2番手で行っていたので展開の恩恵は受けていたが、後半を57.8秒で駆けた点で評価が高い。最後の1000mを失速無しで駆けた持続性は高めに見積もる事が可能。未勝利クラスではレベルが2・3枚は違っていた印象。しかも、重馬場で記録したものなので評価はさらに上げられる。3走目のすみれSは少頭数のスロー競馬だったのでレース価値は低い。が、レース上がりが33.8秒だった上がりの速い競馬を最後方から差し切ってしまったのはかなり優秀である。阪神の内回り条件で33.1秒の切れ味はほとんど見た事のない快記録。交わす時の破壊力は圧巻だった。先行、追い込みと脚質に幅があり操縦性の良さを感じさせる。追い出してからの反応も素晴らしいものがあり、追っている時の走りはスケール感もある。瞬発力が高いのは明白だが、スピードもパワーもある点で地力の高さは感じられる。皐月賞なので人気にはならないが、例えば完成度の低い馬が勝った京成杯や、気性難が勝ったきさらぎ賞などに出ていればこの馬も人気上位になれていた馬だと思う。ソールオリエンス、フリームファクシと比べても何かが劣っているようには思えない。むしろレースで確実に動いてくれている点でこれら2頭よりも信頼性が高い。主役不在の年だからこそ、すみれS勝ちのこの馬にも警戒が必要になってくる。    

 

マイネルラウレア(若駒S1着)

 

2000mを連勝中の無敗馬。DI記念、毎日杯と出走回避続きで結局皐月賞直行になった。順調さを欠いている感は否めない。一言で言えば、妙な強さを持つ変な馬である。ズブいタイプで後方で競馬を進めており、勝負所で詰めれる機動力も無い。走りもバラバラしていて器用さは感じられなり。最終コーナーはいつも最後方で周ってくる。のに、勝ってしまう。2レースともこれはダメだろうというレース運びなのだが直線だけで差し切ってしまうのはなぜか?しかも、新馬戦が5.5秒、若駒Sが3.9秒も後半が速くなった超スロー戦。どちらもほぼ加速ラップで4角最後方の馬が勝って良いレースではない。のに、勝ってしまうのだから凄い。上がりの競馬で極上の瞬発力を発揮しているかと言えば、そんな事も無く、追って追ってようやく間に合っていると言う現状。基本ズブいので瞬時にビュンと加速することも出来ない。エンジン点火に時間がかかるタイプ。とにかく競走馬としてあまり良い性能があるとは思えない。それでも負けていないのは最後1Fの伸び脚だけが異常に速いからだろう。もうダメだというところでグンと伸びてしまう。アタマ差、ハナ差といずれもタイム差無しで入線しており、まるでゴールを知っているかのように最後だけグイっと伸びてしまう。規格外な強さを感じてしまう。ただ、2走とも勝ち時計が遅く、速さが求められない展開だから出来た芸当だとは言える。2戦とも上がりの競馬とは言え、レース上がりは35.5秒、34.4秒とそれほど速くない。この程度の上がりだから差し切れたというのはあると思う。また、直線が長い条件だったのも良かったのだろう。そう考えると中山コースは適性ベストと言う感じはあまりない。良馬場だったら普通に厳しそうだが、道悪で時計がかかるとやってきてしまうかもしれない。

 

皐月賞(GⅠ)の予想案はこちら▼