競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

高松宮記念(GⅠ) 出走馬カルテ②

 

こんにちは。

 

こちらのページは、

 

の、続きになります。4歳世代5頭、5歳世代4頭については↑のページに公開しています。こちらのページでは6歳世代の9頭について公開していきます。

 

予想案は各ページの最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

 

◆6歳世代以上

 

7・8歳馬も含めてこの年齢層から高齢馬としてまとめて扱っていきます。統計で見ると6歳以上の過去10年の成績は【3・5・4・83】となっています。ただ、7歳馬が1勝3着1回と走っただけで馬券になっているのは実質6歳馬だけ。6歳世代単独で見ると最強5歳世代と遜色ない数字を記録しています。若すぎず、老けすぎない6歳世代はまだまだ馬券の中心的存在と言えます。ここまで馬場との相関性の観点から触れてきたので6歳以上の馬についても確認してみたところ、稍重以上の道悪時の成績は3勝2着2回3着となっていて6歳以上の馬券実績の7割近くが道悪時に記録されたものとなっています。やはり、タフな馬場になるとキャリア豊富なベテランの出番が増しているという事になります。

 

ヴェントヴォーチェ

 

昨年の春にリステッド競走を勝ったことで高松宮記念に出走するプランもあったのですが、自重して休養に入り夏に賞金加算の為に頑張り、キーランドCで重賞勝利となりました。さすがに使い過ぎてしまったので厩舎側はこれで切り上げて放牧に出しました。が、オーナーサイドの強い要望によりスプリンターズSへ出走する事になり、急遽牧場から戻すことになりました。馬主さんにしてみれば春は我慢したんだからもう待てん!みたいになったのかもしれませんね。そう言う経緯があったので準備不足以前に馬はガス欠状態。GⅠ初チャレンジは11着とほろ苦い結果に。敗因は明確ですからGⅠの壁に阻まれた訳ではありません。スプリンターズSは度外視すべき1戦です。

 

リフレッシュしてオーシャンSから復帰となります。が、今度は本番を見据えた状態で馬を使っていたのでこのレースもまた完調とは言えない状態でレースに挑むことになりました。厩舎サイドも勝てるなんて全く想像していなかったようです。それが鮮やかな差し切り勝ちですから、さぞ驚いたことでしょう。

 

しかも、強い勝ち方だったと思います。中団後方から徐々に進出してきて直線は持ったままで先頭に並びかける力強いレース振り。追い出してからは2馬身半差をつける楽勝。1:07.4と勝ち時計も速く、中身も濃い。叩き台をこの内容で勝てる馬ってそんなにいないと思います。全く違うレースですけどドウデュースの京都記念の様な勝ち方だったと思います。この馬もGⅠ級だったりするのかもしれません。使ったことで調子を上げてGⅠに迎えます。どんな走りをするのか楽しみな存在だと思います。

 

ただ、不安材料がないとは言えないですね。重賞2勝は結局ルメール騎手で他に騎乗した西村騎手と福永騎手とは馬の動かし方が全然違っていました。ルメールは急かすことなく追走して、勝負所をすぅーと上がっていきます。だから最後の弾け方も全然違っていました。こういう乗り方を西村騎手に出来るでしょうか?この馬に一番多く騎乗している方なので馬の事は良く解っていると思うのですが、同じ事が出来ないと同じパフォーマンスにならないのではないかと思います。戦力ダウンの印象はどうしても大きくなってしまいます。さて、どうでしょうか?

 

最後に馬の適性を確認しておきます。

 

・持ち時計は1:06.8と速く、スピード比べはドンと来いと言えるでしょう。ですが、道悪実績もまぁまぁあって、洋芝北海道でも2勝と力のいる馬場への適性も非常に高い。天候に左右する事はないと思います。

・新潟を1勝しているのですが実はこれが直千競馬。なので左回りは実質初めてと言えます。これまでに回りの左右を気にする話は1度も聞いた事が無いので問題はなさそうですが、走ったらダメだったという事はあるかもしれません。

 

オパールシャルム

 

前走がちょうど30走目だった6歳の牝馬です。最近は体重の変動も大きく近8走の中で-16k、+18k、-18k、+10kと2桁の増減を繰り返しています。それまで以前にこう言う事はなかったのでここにきて馬の状態が不安定になっているようです。この期間はこの馬がちょうどOPに昇格してからとリンクしています。条件クラスの頃は関東の適鞍に合わせて府中か中山でばかり走っていましたが、OPに上がってからは初の関西遠征や交流重賞にチャレンジする機会が増えました。それで体重の増減が増えてしまったのだと思います。輸送や環境の変化に弱いという事かもしれません。中京への輸送も良い感じはしないですね。

 

こんな状態で走っているのでOP昇格後の成績も不安定で近3走は成績もだだ下がり。先行力はまぁまぁ良いのですが重賞に入るとさすがに楽に行けないので直線で失速するのも早くなっています。また、多頭数でモマれる事も多いので厳しさばかりが目につくようになりました。これがハンデ戦で単騎濃厚とかなら残り目もあるかもしれませんが、GⅠの定量戦ではそう言う状況は望めません。強調材料はちょっとないですね。

 

なお、今年から全ての古馬GⅠで58kが定量となりました。それにより牝馬も56kを背負う事ななります。この馬はこれまで55kまでしか背負ったことがありません。斤量1つとっても不利な条件となっています。

 

キルロード

 

昨年17番人気で3着に大激走した馬ですね。重馬場で時計が高速化しなかったこと、インから乾いた馬場のバイアスが味方したことなど好走の要因はこの辺だと思います。ただ、それをフロックと言い切れないのはレシステンシア、ジャンダルムのすぐ後ろにいたのが本馬だったことです。2頭のGⅠ馬が大きく失速して6着、11着と敗れるなかこの馬が最後まで頑張ったのは評価しておかないといけないもしれません。ゴールの50m前までは先頭にいたのですから勝ちに等しいと思います。あまり馬鹿にしたもんではないなぁと思いました。

 

それにしても、この馬に対する競馬ファンの対応は間違っていますね。高松宮記念以降の3戦は6番人気6着→10番人気2着→5番人気12着。走ったらから人気になって、走らなかったから人気を落としてと非常に悪い循環です。こうなってしまうのは適性と馬の状態をよく吟味していないからでしょう。そうならないように、着外だったレースの敗因を簡単に触れておきます。

 

・函館SS6着は夏場に弱い馬でこの頃から夏負けだったそうです(だからスプリンターズSは回避)。本調子にありませんでした。

・シルクロードS12着は持ち時計が弱い馬で高速決着ではパフォーマンスが下がってしまうからです。この点は今回の陣営談話にも出ています。スピード決着だとキツイ。

 

このように弱味も結構あるのですが、それに該当しなければ阪急杯2着とちゃんと走れてしまいます。8歳の高齢ですが重賞級の扱いはしておくべきかなと思います。レース当日が昨年の様な道悪にでもなれば奇跡も再び起こるかもしれません。

 

本馬は骨折を何度か経験して、去勢もしてと軌道に乗るのに時間がかなりかかりましたが、今ようやくピークに至った感があります。左回りの方が走りも良いとの事ですし、夏負けする馬なので季節的にも秋GⅠよりは春GⅠの方が向いています。高松宮記念は条件的にも季節的にもこの馬のベストなレースになりそうです。適性に見合う条件が当日揃うようなら印は回した方が安全かもしれません。

 

ディヴィナシオン

 

オーシャンSを15番人気で2着に大激走。好走の要因はよくわからないですね。森秀厩舎は2頭だしでしたが、陣営が期待していたのは6番人気だったジャスパージャックの方でした。この馬で権利を取って高松宮記念に行きたいと話していたぐらいで、ディヴィナについては特に期待もしていなかったようです。厩舎ですらそう言う認識ですからこの馬を予想して拾うのは相当難しかったと思います。

 

強いて言えば展開的なハマりかな?と思います。3F通過33.4秒とこのコースとしたら標準か気持ち遅いぐらいのペース。これなら前にいる馬の方が有利なのですが、イン前で運んだ馬は直線で悉く伸びを欠いてしまう不可解な現象が起こりました。レースは外差し決着になっています。この馬も1番枠でしたが騎乗していた菅原騎手が絶妙なタイミングで外に切り替えることに成功。上手い事勝ち筋に乗ることが出来ました。1・3・4番人気が掲示板にも載れないような展開で頑張って追ったら止まった馬を交わす事が出来た、そしたら2着だったというものだと思います。ちょっとフロックっぽいですね。走破時計も至って標準的なものですし、上がりも1・3着馬の方が速かったですから時計的に推せる材料はないと思います。

 

スタートがあまり良い馬ではないので今回も後方から差すか追い込むかの競馬になると思いますがそれで何頭交わせるかといったところでしょう。GⅠだとオーシャンSほど前の馬は止まってくれません。前走の様にはハマらないと思うのですが…

 

トゥラヴェスーラ

 

この馬も8歳になりました。しかし、パフォーマンスはずっと安定しています。一昨年の高松宮記念に0.2秒差の4着と走って以降もGⅡ以上のレースを6走して、スプリンターズS時の0.3秒差が最大のタイム差です。他のレースは0.1秒とか0.2秒差の接戦でゴール前では必ず差し込んいます。この高齢でこれだけ走れてしまうのは、依然ピークの状態を維持しているからです。本格化したのが7歳の昨年と遅かったからでしょう。トモの甘さがなくなった事で高いパフォーマンスを発揮し続けるようになったそうです。いつも状態面が良く、馬は元気一杯でした。年齢の衰えを感じさせません。8歳を理由に評価下げるのはまだ危険かもしれません。

 

本馬は使える脚が短いので大外をぶん回して行くと脚が持たないので馬群を縫ってインから差して来るしかありません。この戦法を徹底しているので不利を受けやすいと言えます。厩舎サイドもそれで詰まったら仕方ないねというスタンスです。厩舎もハマれば来るからといつも話しています。要するに、運次第という事になります。運良く進路があったなら今年もゴール前で肉薄してくるかもしれません。

 

ただ、さすがにこの年齢なので時計勝負はきつくなって来ているようです。好走した近2年の高松宮記念がそうであったように道悪である事は重要で時計のかかるコンディションでこそ奇跡が起きると厩舎は考えています。厩舎からは道悪希望のコメントが今年も既に出ています。天候次第という事になるでしょう。

 

それとこの馬はこの時期になると鼻出血を毎年起こしています。2年前は京王杯SC後に、昨年は高松宮記念のレース中に。今年もどこかのタイミングで出血するのかもしれません。その影響がレース中になければいいなと思います。

 

ナランフレグ

 

昨年に当レースを勝って、スプリンターズSでも3着。距離の長かった安田記念でも勝ったソングラインに0.4秒差。昨年は一連のGⅠで存在感を発揮していました。開けて7歳。今年はどうでしょうか?

 

追い込み一辺倒の馬なので不利を受けやすい脚質です。昔は大外ブン回しで届きませんでしたが、昨年の当レースからインを突いたり、馬群の中を切り分けたりと言う戦法を取るようになっています。なので、もう運だけと言う感じで馬のストーリーが決まってしまった感じです。進路が取れれば高松宮記念スプリンターズSの様に着に来ますが、そうでなければ香港CやオーシャンSの様にどん詰まりで末脚を引き出すことなく終了してしまいます。こういう馬は腹を括りやすいですね。ちゃんと仕上げてレースに送り出すだけですから。やる事は決まっています。もし、雨降り馬場で外差し競馬になったとして本来のスタイルに戻せばいいので内外どこからでも狙えるので馬場バイアスに左右されないのは強味かもしれません。

 

ただ、前走時の中間に何かあったみたいですね。オーシャンSはステップレースでしたから本番を見据えて余力残しの仕上げではありました。だとしても、上手く調整出来ないようなことがあったらしく陣営のトーンは上がっていませんでした。スタートで出遅れてしまったのもその影響かもしれません。スプリンターズSの時は安田記念から4ケ月のぶっつけ参戦でしたが、今回は得意とは言えないオーシャンSわざわざ使って来ました。その間隔は約3ケ月。1度使わないと本番の仕上げが間に合わなかったのかもしれません。デキさえ整っていればいつも通りに走ってくれそうですが、肝心なそのデキがどこまで上げられているかが鍵となるでしょう。

 

ファストフォース

 

初めてGⅠに出走した21年スプリンターズS以降は3走してGⅠ、3走してGⅠ、そして今度も3走してGⅠと一定のローテが組まれています。と、こう書けば計画通りの印象ですが、ただ単に使い詰めなだけですね。まとまった休養はあまりとらないタフな馬です。

 

最近ですと昨秋のセントウルS2着、前走のシルクロードS2着が目立つぐらいで他は凡走と言う成績です。好走したこの2走は共に中京1200m戦です。が、これも偶然ですね。このコースで適性が高いというのなら昨年の高松宮記念でも掲示板ぐらいには載っていたでしょう。この2走はすんなりと先行出来たからこその好走です。年齢を重ねるごとにテンのスピードや二の脚が鈍くなっているので、多頭数であったり、同型の有無であったり、枠の内外などの関係で行けないケースが増えています。好走した2走は頭数や枠に恵まれた事で理想の先行策が適った結果と言えるでしょう。要するにモマれ弱いという事です。行ってしまうと粘りはそこそこですし、この距離で1:06.0の元日本レコードホルダーなので高速競馬への対応力も高い。自分の競馬が出来た時にはこれぐらいは走れてしまえます。今回も理想の形に持ち込む事ができるかどうかだけだと思います。

 

でも、前走を見ると末脚の精度が上がっている感じが致します。2走前に出遅れたことで後方から追い込む形になったのですがそこで良い末脚をみせました(4着)。この経験が良いスパイスになっているかもしれません。シルクロードSの4・5番手のポジションは良かったと思うのですが、依然のフォースだったらそこから脚を伸ばせていなかったと思えます。ここにきて新味を出しているのかもしれません。その点は厩舎も気づいていなかったようなので、前走の走りを見てまた馬の評価が変わっているかもしれません。「もうピークを過ぎたかも」と弱気な話もしていた前走でしたが、違ったモチベーションで出走してくる気がします。

 

ボンボヤージ

 

昨夏、16番人気で北九州記念を勝利しています。厩舎にしてみれば、これはまさかの勝利だったそうで、関係者も全く期待していなかったそうです。ハンデ、枠順、馬場状況、展開など思い付く限りの全てが最高にかみ合ってしまたと陣営は謙虚に振り返っていました。だから、この勝利をきっかけに天狗になるようなことも無く、秋もGⅠに出走することなく長めの休みに入っていました。今回は1度使って本番と言う型通りのローテションで2歳時の阪神JF以来のGⅠ出走となります。

 

上記の厩舎の評価が全てと言う感じで、それを証明するかのようにセントウルS10着、京都牝馬S12着とそれ以降の2戦で成績を大幅に下げることになりました。セントウルS定量でしたし、ハンデ戦京都牝馬S北九州記念を勝利してしまったがために当時の51kが56kまで加算されていました。恩恵がないとこんなものなのでしょう。

 

能力的なものも十分足りてなそうですが、適性面から見てもちょっと厳しいかもしれません。まず、左回りで結果が出ていません。ここまで4走していますが新馬戦の9着が最高着順でした。中京1200mのセントウルSを2走していますが、レシステンシアに0.9秒差、メイケイエールに1.3差と圧倒的に負けています。加えて、道悪はまるでダメなタイプですね。3年前の2勝クラス時代に福島の稍重でヴェントヴォーチェ相手に0.2秒差の4着と言う結果があるのですがそれ以外はいい所がありません。自身が勝利した北九州記念でさえ、その前年に稍重で10着と大敗しています。

 

これだけダメ条件が揃うと僅かな可能性も残らないように思います。厳しいという言葉以外に出て来る言葉はないですね。高松宮記念は力通りに決まらない事の方が多いので、出走全馬に可能性がある!と言いたいところなのですが、さすがにこの馬にこの言葉は送れないと思います。

 

ロータスランド

 

昨秋はマイルCSぐらいがピークだったみたいです。その後に使った阪神Cは仕上げが難しくなっていたようで万全のデキに持っていけませんでした。そこから、徐々に体調を上げて行く過程にあったのが適鞍の京都牝馬Sでした。そこを叩いて調子を上げて来れると良いのですが。

 

前走時は覇気の様なものがこの馬本来のものではないと厩舎から泣きが入っていました。だからだと思うのですが、行きっぷりの良いこの馬が出負けして最後方からの競馬となりました。やはり、前走時も本来のデキにはなかったのかもしれません。これをどこまで上げてくるかがまずは肝心です。

 

ただ、最後方から競馬をしたのは鞍上の故意だと思います。戦前、内目の枠で脚を溜める競馬をしたいなんて厩舎は話していたのですが大外枠に入ってトーンが下がっていました。そう言う背景があったので、先手を取れなかった鞍上が後方待機に切り替えたのかなぁと思います。結果、これが成功して上がりはなんと32.8秒。こんな素晴らしい決め手を発揮するとは思いませんでした。結果は3着でしたが新味が出たと捉えれば収穫は大きいものです。行きっぷりが悪くなった変わりに、新しい武器を手に入れたかもしれません。良い方向にベクトル修正できたのではないでしょうか?

 

道悪は5戦してオール連対。新しい脚質でレース中の選択肢も増えました。陣営が希望した真ん中の枠も引いています。状態も前走よりは上がっているでしょう。全体的なムードは今年もよさそうですね。これなら昨年2着の雪辱を果たすかもしれません。

 

なお、鞍上の岩田騎手ですが前走がテン乗りでした。しかし、馬の事は良く理解していたという事です。息子の望来騎手が主戦を努めていた馬だったので父としてロータスの事も良く見て、自分なりに研究していたのだそうです。だから、いきなりあんな戦法を取れたのでしょう。2戦目ならよりこの馬の良いところを引き出してくれると思います。これもプラスになる材料ですね。

 

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