競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

天皇賞・秋(GⅠ) 出走馬カルテ①

 

こんにちは。

 

こんなに難しい天皇賞秋は久しぶりですね。アーモンドアイから買っておけば間違いない年が2年続いて、昨年はエフフォーリア、コントレイル、グランアレグリアでガッチガチだった三強競馬。飛び抜けた馬が限られていたので馬券を外す方が難しいという感じでした。しかし、今年は高いレベルで拮抗した組み合わせ。力関係がはっきりとしていない3歳トップクラスが何頭もいるので余計に難しい。どれが勝ってもおかしくない面々で7・8番人気がGⅠ馬なんてこともありそうです。人気薄のGⅠ馬が勝っても当然良いわけなので実に難しい。こんなレースを3連単で当てようなんて人には頭が下がります。

 

また、今年の中距離路線は本当に面白いと思います。札幌記念ではジャックドールとパンサラッサの強力な2頭の逃げ馬が話題となりました。ジャックは控える競馬に転換出来たので無理に付き合う事はもうないでしょうが、今度は復帰したバビットがオールカマーを逃げて4着と好走。今年程逃げ馬揃いの年は記憶にないですね。札幌記念がそうだであったように逃げ争いだぁ~と盛り上がった時に限ってペースが落ち着いてしまう事が多々ありますが、だからと言ってこのメンバーでスローペースなんてことは無いと思います。どの馬が行くかはわかりませんが中身の締まったシビアな展開が予想されます。自力の無い馬には到底対応出来ないレースとなるでしょう。

 

天皇賞・秋は30日(日)なので前日の29日(土)に更新を完了します。ページが長くなるようなら1ページ10000文字を目安に2枚、3枚と増やしていきます。更新順は整理しやすいので年齢毎にまとめていくことにします。なお、カルテ分析は3歳戦までのつもりなので古馬戦はそこを割愛しています。

 

予想案はページ最下部にある専用ページにまとめてあります。ブログカードを貼っておきますのでそちらをご覧ください。

 

10/28追記:ページ上段の前説部分は同じものを転用しています。①②の行き来はページにブログカードを貼っておきますのでそちらから移動されて下さい▼

 

◆3歳

 

昨年エフフォーリアが優勝しましたがこれが19年ぶりの勝利でした。グレード制導入後の3歳馬の勝利は非常に稀な事象でして96年バブルガムフェロー、02年シンボリクリスエスの3頭しかいません。ちなみに、バブル、シンボリは藤沢元調教師の管理馬で、エフフォの鹿戸調教師はその弟子。藤沢流のノウハウだけが結果を出している点が面白いところです。

 

このように天皇賞(秋)は3歳馬が跳ね返されやすいレースでして、過去10年で【1・1・1・9】と成績はあまり良くありません。負けた馬には上記藤沢元調教師が管理したソウルスターリングや、イスラボニータ、サートゥルナーリアなど春のクラッシクを勝った馬も含まれていたり、後にこのレースを勝つジャスタウェイも3歳時に出走して負けています。フェノーメノサトノクラウンなど後のGⅠ馬も然りでした。今回出走する3頭が世代トップクラスであることに異存はありませんが、4・5歳世代との力関係は未だ未知数なのでチャレンジャー世代という扱いが妥当かもしれません。

 

イクイノックス

 

ダービー馬とは1戦1勝で対戦成績は五分、前走で皐月賞馬には雪辱し、菊花賞馬に先着を許した事もなく。これでこの馬だけが無冠と言うのは何というか。ただ、頂く冠は無くてもこの馬がこの世代で一番強いのではないかと思うのは私だけではないでしょう。ダービーの結果は4着馬までが抜けた存在であるとここまで評価してきています。が、厳密に言えば1・2着馬は3・4着馬より何枚か上だったなと言うのが実情でしょう。ドウデュースがいないならこの馬が3歳世代の総大将で良いと思います。ジオグリフ、ダノンベルーガと他の3歳馬と改めて番付評価をする必要は感じません。中山より府中向きな馬なので適性的な話ももう無用だと思います。

 

今回の鍵は古馬との力関係だけになります。ただ、これはやってみないと解らないので何とも言いようがありません。しかし、アプローチの手段が1つだけあると思います。それは3歳で天皇賞秋を勝ったエフフォーリアとの間接的な比較です。エフフォに類する能力を確認できたら十分評価の対象にできると思います。そこで、昨年と今年のダービーのパフォーマンスを比べてみようと思いました。2頭はどちらもダービーの2着馬ですし、昨年のダービー馬シャフリヤールも今回いるので近2年のダービー比較で検証するのは有効的だと思います。

 

とは言え、今年はダービーレコードが更新されたので比較するまでもなく、結果は目に見えています。しかも、昨年とはコンマ何秒かの違いではなく時計にして2.6秒も速い。いくら馬場差があったとは言えここまで差が開くものでしょうか?とても同じ条件のレースとは思えません。次元が違う的な話になってくると思います。

 

それでも、もう少し詳しく見てみましょう。2頭の使った上がりに目を向けてみたいと思います。昨年はエフフォ&シャフリが同タイム上がりで最速を記録していましたが、この2頭はレース上がり33.9秒に対し33.4秒を記録しました。これに対し、今年のダービーはイクイノの使った上がりが最速として記録されています。レース上がり35.2秒に対して33.6秒でした。レコード走だったのでペースは全体的に速く厳しいものだったので上がりのかかる消耗戦になっていました。にもかかわらず、イクイノはエフフォ、シャフリが使った上がりと0.2秒しか違わない脚を使ったことになります。これはとんでもないことだと思います。

 

断っておきますが、私は昨年のダービーもレベルは高いものだと思っています。だから昨年は3番人気ながらエフフォーリアを本命に抜粋していました。ですが、今年のダービーレベルは比べ物にならないぐらい昨年を凌駕しています。自分でも違和感はありますが、昨年のエフフォ&シャフリに関してはこのペースでその程度の上がりしか使えなかったの?という風になります。いや、それでも十分スーパーホースなのですが、今年のイクイと比べてしまうとそれぐらい見劣ってしまうという事です。小さく見積もってもイクイが示したダービーのパフォーマンスはエフフォ&シャフリを大きく上回っています。

 

エフフォはダービー後に成長幅が大きかったのでまんま比較するのもどうかと思うのですが、以上のことからイクイノが昨年のエフフォ以上のパフォーマンスを発揮してしまう可能性は高いと思われます。だとすると、2年続けて3歳馬が天皇賞(秋)を制してしまうかもしれません。

 

なお、ダービー後に脚が腫れていたとの事でしたが屈腱炎と言う診断には至りませんでした。牝馬のスターズオンアースやジオグリフの様に骨折して手術した訳でもないので特に問題は無いと思います。力を発揮出来る状態か?春からの成長は?など、まだ確認すべき点はありますのでその辺を見極めてから最終的に決断したいと思います。

 

ジオグリフ

 

ダービーは7着でした。ラスト300mではドゥデュース、イクイノックス、ダノンベルーガと一緒にこの馬も外から併せ馬みたいに伸びて来て、そこから50mも走ると前にいたアスクビクターモアもこの一団に加わり猛烈な追い比べとなりました。ジオもそのまま上位争いを演じてくれれば恰好良かったのですが、この馬だけ脱落してしまいました。その原因は2点考えられます。一つ目は距離。2歳時からノドに不安のある馬として言われていました。だから陣営も距離延長には慎重な姿勢を取っていました。レース自体もきつく厳しい展開でしたから最後にそれが堪えたのかもしれません。この点に関しては距離が短縮されて2000mになる事で解決できる問題です。2つ目はコース形態。内回り、小回りは2戦2勝の上レースでのパフォーマンスも高い。ですが、直線の長い府中の共同通信杯とダービー、外回り条件だった朝日杯FSでは物足りない結果になっています。決め手の問われるコースではこの馬程度の末脚では優位性を保てないのだと思います。立ち回りや機動力を生かせる中山の方が向いていたというのはあるでしょう。2000mで再びGⅠを狙うなら今秋の府中GⅠではなく、来春の阪神GⅠなのかもしれません。もしくは、暮れの香港国際競走とか。中山巧者として知られたウインブライトは中山と似ているコース形態と言うことで良く香港に遠征しGⅠを2勝しました。ジオ陣営もその後の選択肢として香港を考えているようです。ここを使って次メイチみたいな事はあるかもしれません。

 

なお、ちょっと触れましたがノド鳴りの件については特に手術はしておらず、改善の為に何かをしたという事もありません。皐月賞まではレースに行って影響が出たという事が無く、2歳時から競走には問題ないとなっています。影響が出ない条件を選んで出走しているうちは特に気にする必要はないと思います。

 

問題は騎手サイドにあるかもしれません。今回は福永騎手の連続騎乗となりますが、当初から望まれた騎乗ではありません。本当なら短期で来日予定だったスミヨン騎手が騎乗する予定でしたが来日そのものが無くなってしまったので福永騎手でそのままみたいになっています。さらに言えば、福永騎手によってダービー馬となったシャフリヤールの鞍上はクリスチャン騎手です。このようにサンデーRとしては最初から福永騎手を乗せるつもりがなかったという事です。それだけ今の福永騎手の評価が低くなっています。消極的ですぐ控えてしまう福永騎手の競馬ぶりに不満を持っている競馬関係者は多くいて、乗り替わったらずぐ勝てたという例も少なくありません。かつて控えすぎて干されたレジェンドがいましたが、福永騎手もそう言う状況に今あるのかもしれません。その評価を払拭するよう好騎乗となればいいのですが。

 

ダノンベルーガ

 

右後肢に弱い所があるという事で走りは左回りの方がスムーズである。厩舎ではそう言う考えがあって皐月賞も出否をギリギリまで迷っていた馬でした。皐月賞には結局出ていい内容の4着と走ったことで私は勘違いしてしまいました。今思えばそう言う弱点があることこそがこの馬の完成度や本格化の程度を表していると考えるべきでした。左回りの府中では見た目にも鮮やかな末脚を披露して後の皐月賞馬を負かしていましたが、ダービーではその末脚を持ってしても通用しなかったんだなと思います。上がり順は3位と上位のものでしたがドゥデュースやイクイノックスとは少し差があって脚力レベルに差を感じさせました。ダービー4着と言う結果はその時点でのベストパフォーマンスであったように思います。

 

裏を返せば未完成の状態でこれだけの成績を残していることがこの馬のポテンシャルを表しているとも言える訳でして、夏の成長で右後肢の弱点が改善されていればイクイノとの力差もグンと詰まって来ます。逆転がないとも言えないでしょう。ですが、どうも大した成長があった訳ではなさそうですね。堀調教師の話では良くも悪くもなく、身体的な変化は乏しかったようです。堀調教師は客観的なもの言いをする方なので信用して良い話でしょう。パフォーマンスに大きな違いは現れないかもしれません。ただ、使える脚の量からすれば2400mよりも2000mの方が良い脚を使えると思いますので全く無いとも思いません。距離短縮によるパフォーマンスの向上は想定しておくべきだと思います。

 

◆4歳

 

4歳馬の過去10年の成績は【3・6・4・27】となっています。面白いのは5歳馬とは3着数が一緒で、勝ち数・2着数が全くの逆の数値になっている事です。つまり3着内の数は全くの同一でして、どちらから入ってもデータ的にはOKです。

 

ただ、もう忘れがちな話ですが、現4歳世代は昨年秋から春先まで上の世代を相手に重賞を勝ちまくった世代でして「今年の4歳(3歳)世代は強い」という風潮になっていたはっずです。逆に、現5歳世代はコントレイルとデアリングタクトだけが強かった三冠馬世代でその他は大したことないねみたいな感じでした。そう言う話を思い出すと世代の総合力では4歳世代のマウントが利いていた気がします。

 

実際、世代交代の進まないスプリントGⅠ(春秋共に高齢馬の勝利)を除けば、今年の古馬GⅠはフェブラリーS天皇賞(春)、ヴィクトリアM、安田記念宝塚記念と主だったところは全て4歳世代が勝利しています。データ的に3歳世代が劣勢ですから今年の主役はこの世代と言うことになるでしょう。現役最強馬(菊)、昨年の年度代表馬(皐)と中心核はいませんがダービー馬とオークス馬が健在です。今年の中心は4歳馬だったりするのかも。

 

ジャックドール

 

秋の目標は天皇賞(秋)と言うことです。金鯱賞を勝つまでの5連勝が全て左回りであったので当然そうなります。大阪杯札幌記念とここ2戦は右回りを走っていましたが陣営曰く右回りでも問題無いとの話てです。GⅠで5着、GⅡで優勝ですから確かにその通りでしょう。むしろ、拘っていたのは2000mの距離の方でコースの周り方に特別注文はないそうです。とは言え、左回りの2000mと走り慣れた条件のGⅠチャレンジは力の入るところでベストな条件と考えて良いと思います。この条件に近い毎日王冠を前哨戦にしなかったのはレース間隔が短くなってしまうからだそうです。厩舎の考えでは大阪杯の敗因も金鯱賞からの中2週だったと考えているようです。それで8月の札幌記念をステップとする事にしました。

 

ただ、その札幌記念はあまり良いレースではないですね。1分59秒台前半が標準的なレースでかかっても2分をコンマ何秒超えるぐらい。それが今年は2:01.2と言う決着。2秒近く時計がかかっているのは感心出来ません。先行してこの程度だった1・2着馬は精一杯走った結果なので責めれないですが、この程度を交わせなかった他がだらしないと思います。天皇賞(秋)を予想するにあたり札幌記念の内容で印を上げる気にはなれません。

 

このことから思うことはやっぱり右回りのレースだとそんなに強くないなという事です。ジャックの場合、コーナー4つの条件は少し忙しいように思います。ダイナミックなフォームで走る馬なので広々としたコースの方が走りの印象が良いと感じます。右回りの近2走に捕らわれるのではなく、5連勝した左回りの走りを再評価すべきではないでしょうか?金鯱賞をレコード勝ちしているようにスピード能力は元々高いですし、府中コースでは1:57.4 の好時計もあります。スペック的には勝ち負け可能でしょう。前走で控える競馬で結果を出していますから同型との絡みももう考えなくて良い。自分のリズムで走れれば良い所はあるはずです。

 

シャフリヤール

 

イクイノックスの稿で今年はダービーレコードを更新したという話をしましたが、更新されたダービーレコードを記録したのがこの馬でした。この世代のダービーもレベルの低いものではないですね。それだけ3歳世代が凄いと言うことなのでしょう。

 

さて、国内戦は昨年のJC以来となりますので、近走の状況を良く把握しておりません。今回は評価の難しい存在だと思います。特に気になっているのが馬体重です。今どのくらいなのでしょうか?昨年のJCで446kで、ダービーを勝った時が444k。目に見えた成長を感じれずにいます。厩舎サイドも昨秋時点でその辺を物足りなく感じていました。もう4歳の秋ですから馬体を大きくしていて欲しいところです。

 

ダービーとドバイシーマを勝っており、JCも3着と2400mで高い適性を見せています。でも、ひょっとしたら2000mぐらいがベストの馬ではないかと思っています。と言うのも、ダービー出走時に厩舎からはやってみないと解らないとか、福永騎手も3歳馬同士なら何とかなるという感じの話しかなく、この距離でドンと来い的なニュアンスは感じませんでした。次にJCに出るようなら2400mの適性分析はしようと思いますが、話が長くなるのでここは割愛します。ただ、実際ダービー以外の2400m戦は物足りなかったと思います。逆にシャフリのレースで最も凄みを感じたのがやはり毎日杯です。3歳のあの時期に1分43秒台を記録するような馬は今後も現れないと思います。そのぐらい猛烈なレコードだったと思います。そのスピードとそれを可能にする持続性能こそこの馬の最大の強味の様に思います。その特性を存分に発揮するならやはり2400mよりも2000mの方がいいのではないでしょうか?

 

あいにく2000mは未経験なのでその適性はまだベールに包まれていますがやってみたらこれまでで一番強かったという可能性はあるかもしれません。仮定の話しか出来ないのでこの辺にしておきますが今回は未知の魅力がある面白い存在だと思っています。あとはやっぱり成長次第ですね。存在感が薄れてきていますのでダービー馬の威厳を改めて示して欲しいところです。

 

ノースブリッジ

 

この馬のバロメータ―的指標となるのが岩田騎手。栗東所属の騎手ですがほれ込むほどの馬が美浦にいればその馬に調教をつけるためわざわざやって来ます。この話は前のブログでも度々しましたが、例えばシャドウディーヴァの主戦を努めていたころに良くこういう事がありました。本馬もそういう馬で大事な所は岩田騎手が調教をつけに美浦にやってくるのです。今回の調整も岩田騎手が付きっ切りで面倒を見ているようです。既に重賞勝ちしてるので今更ですが、重賞級の評価を関係者から得ていたということでしょう。

 

なので3歳の頃から度々重賞にチャレンジしていました。GⅠを目指してトライアルに挑む事もあり大きいところを目指して使われてきました。しかし、4番人気だった青葉賞の敗戦から距離は長くない方が良いという評価が定まり、セントライト記念の結果から菊花賞も断念します。以降は中距離中心に使われており現在に至ります。3勝クラスを走っていた頃にジャックドールと同じレースを走っているのですが、その時の人気はこちらの方が上だったことはミソかもしれません。この馬もその後連勝で重賞勝ちをしていますから、ジャックとは意外と差が無いのかもしれません。

 

逃げ馬だったこともあるので脚質は典型的な先行馬です。いけないと脆い。馬券から漏れた事は4度あり、内2度は距離が長かった3歳時のトライアル2走で、残りの2度が出遅れた4走前と前走の毎日王冠です。適性距離で走っても先手を取れないと良い所がありません。先行馬のくせに度々出遅れるなよとは思っちゃいますが。出遅れてもレースが破綻することは無いのですが、態勢を挽回出来るほどの末脚はつかないので着外で終わります。先行馬が繰り出す脚としては悪くないのですが、後方で控えて乗っても末脚の威力が増すことはなく、使える脚が一定であるようです。ポジションを生かして前々で押し切る競馬が現状では最良の乗り方になります。

 

末脚性能に関してもう少し補足しておくと、キレる脚が使えないようで上がりはかかった方が良い感じがします。道悪の成績が良かったり、ハイペの消耗戦など上がりがかかる展開に良績が集中しています。この特徴はGⅠ戦になると決め手の無さとなって現れてしまうでしょう。例年の天皇賞(秋)だったら悩ましい弱点として扱わなくてはなりません。ですが、今年はパンサラッサ、バビットと行かなければダメな強力な逃げ馬が存在しますのでタフな消耗戦になる可能性もゼロではありません。2頭の逃げ争いの結果にもよりますが、そうなった時にこの馬の好走確立が上がって来ます。

 

なお、エプソムC勝利後のこの夏は放牧に出さず在厩でみっちりと調教が積まれています。かなり仕上げて毎日王冠を使っていました。エプソムCと同条件の重賞だったので陣営も意識して取りに行っていたようです。本番よりこっちと言うパターンですね。秋2戦目の上積みはあるでしょうが、大幅な上積みはあまり無いかもしれません。

 

 

マリアエレーナ

 

前走の小倉記念を5馬身差の圧勝。これは松山騎手の好騎乗によるものです。ハイペースで逃げていた馬がラスト2Fぐらいでバテてしまったのが控えていた組には誤算で脚を余してしまったからです。これを見越して松山騎手が奇襲を仕掛けた格好です。加速ラップを引き継いでそのまま失速することなく駆け抜けてしまいました。着差が大きくなったのは展開のアヤによるもで、2着以下とは5馬身差ほどの力差は無かったでしょう。スーパーホースが誕生した訳でないのでこの着差にビビる必要はないと思います。

 

ただ、マリアの走りそのものはやっぱり凄くて、先行総崩れのレースを押し切ってしまった内容はかなり優秀です。この馬自身も相当強かったと思います。加速ラップを簡単にまくってしまった本馬の瞬発力やそれを最後まで持続させた持続力も実に素晴らしい。小倉記念で示したこの馬の力は府中でも通用するものでしょう。また、かつてから左回りの方が得意とされていた馬なので天皇賞(秋)は適性十分な舞台となります。あとはGⅠ級との力差次第となります。

 

3歳の秋以降にこの陣営からGⅠを意識するような話は出ていません。ただ、それ以前にGⅠを意識して盛り上がっていたことがありました。昨年の秋華賞ですね。あいにく抽選で漏れてしまいましたが、秋からの成長度とそのポジションから出ていれば面白いという関係者は多かったようです。前走に引き続きマリアに騎乗する松山騎手もその1人です。当時6番人気だったアールドヴィーヴルで秋華賞に参加していましたが、出走出来るならマリアの方に乗りたい希望を持っていたそうです。もう1年以上の前の話なので今回の根拠にするのは適当ではありませんが、当時を振り返ると能力が全く無いという事もなさそうです。

 

実際、秋華賞を除外されて使った新潟牝馬Sを勝利しましたし、以降の重賞競走でも好走を続けました。やはりそれなりに走っていたなと言う印象です。さすがに牝馬限定重賞や真夏のGⅢ程度と比較出来る相手ではありませんが、その素質を軽視するのも違うような気がしています。

 

ユーバーレーベン

 

シャフリヤールの0.2秒差5着と走ったドバイシーマC。通過タイムの公式発表がないのでレース映像からの目算になりますが、1000m通過は65秒前後の超スローでした。世界の一流馬がこのペースはお世辞にも良いとは言えません。先行して勝ったシャフリに凄みを感じるものではありませんでした。このペースを後方から猛然と追い込んだレーベンの方が負けて強しの印象になります。

 

そんな馬が札幌記念で見せ場もないまま11着に大敗。ドバイの翌週には札幌記念始動を発表していたので準備万端な調整過程で状態面に問題はありませんでした。しかし、レースの走りにはらしさが感じられず明らかに動けていませんでした。上がりのかかる展開も向いていたはずなので不可解な負け方です。管理する手塚厩舎からは3着だったウィンマリリンも出走していましたがレース前の感触ではこちらの方が良かった感じで、レーベンに関しては「ヤル気スイッチが入れば」と言う言葉を口にしていました。ここから察するに、休み明けはダメなタイプかもしれません。オークスも使いながらよくなっていたようですし、ドバイシーマC前に使った弱メン相手の京都記念を5着に負けたのもこれで説明が付きます。

 

だとすると、大きな変わり身が今回はあるかもしれません。安易な低評価も出来なくなりました。中間の調整は馬の気配の変化に特に注意した方が良いと思います。4歳の秋なので極端な能力落ちは考えづらいですから、ヤル気があれば前走の様な事はないはずです。また、ペースが速くなると破壊力が威力を増しますので末脚には魅力を感じます。実際、札幌記念もジャックとパンサの演出するハイペースを陣営は期待していました。これにバビットが加わりますから展開がハマる要素が高くなります。巻き返しが無いとは言い切れなくなりました。取捨の判断は慎重に下したいと思います。

 

 

天皇賞・秋の予想案はこちら▼