競走馬カルテ

2・3歳重賞の出走馬を分析・記録していくブログです。

スプリンターズステークス(GⅠ) 出走馬カルテ①

 

こんにちは。

 

定期的に二桁人気が激走するGⅠレースですね。この10年で1勝2着3回3着4回と結構な頻度で人気薄がやって来ます。特にこの半数が近4年に集中しているので今年も警戒を怠れません。来る前提で予め目星をつけておく方がいいかもしれません。

 

近4年でやって来た二桁人気馬は

 

18年2着ラブカンプー(②②)

13年3着ラインスピリット(③④)

20年3着アウィルアウェイ(⑯⑯)

21年3着シヴァージ(⑤⑤)

 

と、ほとんどが先行馬でした。直線最後方から追い込んだアウィルアウェイの20年は当時もブログで指摘しましたがラチ沿いがボロボロだった年でしたから例外的に捉えて構いません。そもそもスプリンターズSは先行有利のイン前競馬になりがちです。後方待機から追い込めたのはレッドファルクスやグランアレグリアなどGⅠ馬に限定された脚質だと言えます。穴馬も前を行く馬か、内に潜んでいるケースばかりです。

 

どうしてそうなるかと言えば、この時期の中山競馬場の馬場状況が良いからでしょう。1年を通して時計が最も速くなるのがこの時期なのでスプリンターズSも1分7秒台前半の速い決着が普通です。時計の出やすい馬場はイン前競馬が定石ですから人気薄の脚質もこれに該当する馬が必然的に多くなるのだと思います。

 

たった3頭だけのチョイスで大的中だったオールカマーを見て今年もそうなるのかな?と私は思いました。どれも人気薄だった1~3着馬は皆ラチ添いを通って来た馬ばかりです。あのデアリングタクトですら外から詰める事が出来なかったのです。

 

さらに、このカマー週からB→Cのコース変更がありました。イン前有利の傾向は殊更に顕著です。そして、スプリンターズSのコースはオールカマーと同じ外回りコース。向こう正面からゴールまで同一のコースを利用します。短距離と長距離で性質はまるで違いますが、コースから受ける影響は変わらないでしょう。天気の影響がなければ同様の事象が発生するのではないでしょうか?

 

よって、スプリンターズSは枠や脚質を意識した予想が良いと思います。

 

レースは10月2日(日)になりますので、1日(土)までに各馬の更新を完了します。なお、ページが長くなるようなら途中から2枚・3枚と分けるかもしれません。1ページ10000文字を目安に更新していきます。その際、予想コーナーは最終ページに更新すことに致します。

 

9/27追記:前走レースが限られているので馬名順ではなく、前走別に分けて更新していくようにします。下記変更済みです。

9/30追記:ページ上段の前説部分は同じものを転用しています。①②の行き来はページにブログカードを貼っておきますのでそちらから移動されて下さい▼

 

 

 

 

北九州記念

 

北九州記念からは2着タイセイビジョン、3着ナムラクレア、7着テイエムスパーダ、17着ジャンダルムの4頭が参戦します。本番から適度な間隔があるので近年ではモズスーパーフレアが好んでこのローテを採用していました。が、【0・1・1・16】と好結果が出ているとは言い難い。今年の4頭はどうでしょうか?簡単にレースを回顧しておきます。

 

見た目のイメージだと3着ナムラクレアの末脚が際立っていて脚を余した印象を受けます。ここで注目すべきはこのクレアの末脚は上がり最速ではなかったという事です。上がり1位はインから追い込んで2着したタイセイビジョンで、上がり2位はインから末脚を伸ばして優勝したボンボヤージでした。実はクレアの末脚は上がり4位で上位3位にも入っていないのです。

 

レースの当週は外差しがバンバン決まっていたので内よりも外と言うイメージが騎手に蔓延していました。ですが、1:06.9の好時計が記録されたようにインコースがダメと言う事でも無かったのです。クレアは8枠だったので最初から外に回る競馬を意識して進めいていました。直線でインに切り替えてきたのですがこの分だけロスが生じてしまいます。上がり順で遅れを取ったのもそのためで、脚を余した原因もこれに尽きる話です。クレアに限らず勘違いして外に行った馬の中には力を出せずに負けた馬が多数いたと思われます。

 

この結果が能力通りでなかったことはセントウルSの結果を確認すれば明らかです。インコースを通って好走したボンボや4着モントライゼが10着、7着と着を落として負けています。16番人気、17番人気と超人気薄で北九州記念を好走したのですが別定GⅡで本来の評価通りの結果となりました。このように北九州記念はフロック性に満ち溢れたています。力を出せずに負けた馬を積極的に見直すべきでしょう。

 

タイセイビジョン(2着)

 

昨年のスプリンターズSは12着でしたがこの時は短距離転向3戦目だったので仕方ない面もあったでしょう。以降のレースでは確実に圏内に食い込むようになっておりこの路線の安定勢力に成長しています。これだけ走れていればもう有力馬に数えるべきだと思います。3歳までに重賞2勝、GⅠ2着と能力面の担保は遠い昔に確保済みです。少なくとも昨年のような箸にも棒にも掛からないような結果にはならないと思われます。

 

北九州記念の2着は通ったコース、上がり最速を記録と結構ハマっていたので本当は勝っておくべきレースでした。が、勝ったボンボとは6kも斤量差がありましたからハンデ戦らしい負け方で悲観するには及びません。トップハンデ57kの2着は力の証。でも、北九州記念の2着よりもその前走CBCの2着の方がこの馬の強さをより感じれると思います。これもやっぱりハンデ戦でした。超高速馬場のトップハンデ57kは厳しいのではないか?と訝しげに見ていたのですがそれでもちゃんと2着に上げて来ました。前の止まらない展開と馬場を後方からよくも追い込んだものです。勝ち馬テイエムスパーダとは3馬身半差でしたけどそれこそハンデ差でしょう。2頭の斤量差は9kもありましたから。不向きな展開でよくこれだけ追い込めるものです。展開不問の追い込み馬と言えそうですが、これはつまり脚力だけで他馬を圧倒しているという事です。力上位に数える有力馬の扱いが良いと思います。

 

脚質は後方待機の追込み馬なので不利を受けやすいのが玉に瑕です。追い込もうにも進路が無いなんて不安は常に付きまといます。それでもこの馬が推せるのは大外にぶん回さないでイン突きにこだわった乗り方をいつもしているところです。スプリンターズSの大外急襲は頻繁に決まるものではないのでこの馬の乗り方なら抜けて来れるかもしれません。なお、今回は川田騎手→福永騎手に鞍上が変更されます。川田騎手とはとても手が合っていて厩舎も頼りにしていました。ので、福永騎手でもこの変更はプラスにはならいかもしれません。

 

ナムラクレア(3着)

 

2歳時からこうなるだろうと言われていましたが適性通りスプリント路線に転向し成功を納まています。春は桜花賞までクラシックを行きましたがこれを最後にすぐに休養に入ります。スプリンターズSを目標に逆算してサマースプリントから使われています。厩舎の言うところでは3歳同士とスペシャリストが集う古馬スプリントは全然違うものとのことです。3歳限定のスプリント重賞葵Sを使わなかったのはその為で次走に古馬混合重賞を選択しています。本番までに古馬戦の流れに慣らしておきたいと考えたのでしょう。陣営が如何にGⅠ制覇を目標にしていたかが伺えます。また、セントウルSではなく北九州記念にしたのは本番まで十分な間隔が取れるためであり、弱メン相手にサマーポイントを稼ぎたかった訳ではありません。結果的にサマーチャンピオンにはなりましたがあくまで副産物であり、スプリンターズSをピークで迎えるために練られたローテションだと言えます。準備万端でレースを迎えることになるでしょう。

 

北九州記念は3着と敗れましたが冒頭触れました通りコース取りを見誤った騎手の失敗です。不利が無ければ楽勝していたであろう末脚を見せています。その前走だった函館SSでも圧勝でしていましたからこの馬の力もちょっと抜けている感じです。

 

夏の3歳馬は秋競馬以上に斤量面に恵まれるのでその恩恵が薄れる本番は軽視の材料になりがちです。しかし、クレアに関して言えばそれはあてはまらないのでその認識は改める必要があります。なぜなら、北九州記念のハンデ53KはスプリンターズSの規定斤量と同じ斤量だからです。さらに、2着だったタイセイビジョンは57kでしたがこれもスプリンターズSと同じ斤量。つまり、北九州記念スプリンターズSと同じ斤量差で勝負しての結果なのです。その内容も接戦であり、不利が無ければ勝ちきっていたようなレース振り。本番に限りなく近い形で優勢の結果を示した言えるでしょう。既に斤量面が不利になる根拠は解消されておりこの馬にとっては無用の問題なのです。よって、残された不安材料は関東初見参となる輸送ぐらい。それをクリア出来れば大願成就も夢ではないでしょう。

 

余談ですが、主戦騎手の浜中騎手にとって函館SSの50kはシビアな斤量でした。普段51kまでしか乗らないようにしているので減量がかなりきつかったという話が伝わっています。この馬を手放したくないためい採った行動ではありますが、浜中騎手の思入れの強さを物語っているエピソードです。それだけ能力に惚れ込んでいるのでしょう。その馬の大目標のレースですから力が入るところです。

 

テイエムスパーダ(7着)

 

北九州記念で負けるまでは小倉は4戦して3勝2着1回の準パーフェクト。1度の2着もナムラクレアに負けただけでした。小倉のコース適性が非常に高いのです。格上挑戦、乗っていた鞍上、48kなどCBC賞制覇は何かと話題を集めましたが元来はそう言う馬です。コース適性や馬場適性が非常にマッチしてのCBC賞制覇であったのでしょう。なので次走の北九州記念は展開面、斤量面で不利条件が重なり7着と敗れます。ペース自体はCBC賞よりも遅かったのですが逃げ争いがあったので楽ではありませんでした。斤量も3k増で燃費も悪くなっています。ラスト1Fぐらいまでは頑張っていたのですが最後は力尽きました。CBC賞で負かしたタイセイビジョン、アネゴハダは据え置きの斤量だったのですがこれらにも逆転されています。不利な条件が重なった事でCBC賞の結果は再現されませんでした。今回はそこからさらに条件が不利になりますので気前の良い事はさすがに言えないですね。

 

また、ローテションもしんどいと思います。本来CBC賞は予定になく自己条件を使うつもりでした。が、状態の良さと相手関係から急遽繰り上げたのですが結果的に中1週の強行軍となっています。今年は1・4月以外は全ての月で競馬をしており、5月の葵Sからは4ケ月連続出走中です。3歳馬なので成長力で上積みはあるのでしょうか、大事に成長を促されている感じがありません。これには理由があって、初重賞制覇がテイエムプリキュア阪神JFだった五十嵐調教師が来年2月定年の予定です。積極的に重賞や大きいところを狙うのにはそう言う背景もあるのでしょう。この使い方で重賞を勝てたのですから悪く言うものではないのですが、GⅠ出走にあたり状態面を期待出来る状況にはないと思います。

 

ただ、悪いことばかりではありません。今回は展開面が有利になる可能性があります。単騎が適いそうな組み合わせだからです。この馬はモマれ弱いという特性があるので外目の枠の方が良いみたいな事はいつも言っています。それを解消するために国分騎手も、今村騎手も意識して逃げの姿勢を徹底したのです。テンのダッシュが速いのでそれが可能な性能も有しています。今回絡むとしたらファストフォースぐらいでしょう。ただ、ファスフォスも今はリズム重視の番手先行が多いので競り合いには発展しないと思います。逃げ馬の成績は近10年で2着2回3着1回と悪くなく、このレースでは穴の開くポジションです。同じ下りレイアウトの小倉と中山はテンの入りもほぼ同じですから、得意の小倉戦みたいに持ち込むのは簡単だと思います。ゴール前の急坂を上れるかは分かりませんが、インコース有利の馬場状況が味方すれば残り目には注意が必要かもしれません。

 

なお、国分騎手は五十嵐調教師の弟子。この厩舎が今後GⅠに出走出来るかどうかは分かりません。そう言う想いを背負って国分騎手は絶対に行くと思います。テイエムで始まり、テイエムで終わるなんて綺麗な終わり方には注意したいものです。

 

ジャンダルム(17着)

 

この馬がスプリント路線に転向したのは昨年の春ごろからでした。池江調教師としてもこの路線でやっていける手応えをはっきりと感じていましたし、騎乗した福永騎手、浜中騎手は口をそろえてGⅠを勝てる馬と評しています。ベテランのホースマンがこれほど評価していたのですから力は秘めているのでしょう。が、今年は大敗が目につくようになり級に弱くなったなという感じです。

 

前走北九州記念は17番枠だったので外へ外への意識が強かった騎手達の勘違いで余計に外に振られてしまったところもあるのですが、直線に入って全く伸びる事がなく競馬を止めてしまっている印象です。この止めてしまうという現象は今年のシルクロードS高松宮記念などでもみられたものです。ハイペを先行したからとか、ハンデが重かったからなどの理由はあるのですが負けっぷりがひどくなっているのは事実で印象はよくないですね。能力落ちの様な話は一度も出た事がないので馬が弱くなったと断じることもまだ出来ないので判断に困ります。

 

ただ、よくよく思い出してみるとこの馬は中山専用機みたいなところがありますね。中山ではホープフルS2着、弥生賞3着、京成杯AH3着、オーシャンS1着など。その他にもOP特別を2勝しています。中山の成績は【3・1・3・4】で距離を問わずに走ります。3勝のうち1200mを2勝と当該条件のコース適性にも申し分ありません。中山ならと言う怖さがちょっとありますね。また、厩舎曰く休み明けよりも2走目の方がいいのだそうです。確かにオーシャンSも2走目でした。3走目だった高松宮記念も最後は止まっていましたが0.4秒差まで頑張っていました。使ってからの方が良いというのはあるのでしょう。今回は2走目の中山コース。現状推測できる好走条件は揃っていると言えます。強く推せるところではないですけど奇跡を起こす可能性がゼロじゃないのかもしれません。

 

キーンランドC

 

北九州記念の翌週に行われたこのレースも同じような現象が起こりました。インコースが荒れ始めた事で当週の競馬は馬群が一塊で外を回る競馬が目立っていてキーンランドCもそういう競馬となりました。ですが、勝ち馬ヴェントヴォーチェはインコースを切り裂き、3着の逃げ馬はラチ沿いで粘り通してしまいます。外を回さずインコースを狙えた馬が上位に来ています。2週続けてこんなことが起きるのかと私は驚きました。1番人気トウシンマカオも距離ロスが響き直線を向いた時にはコーナリングで出来てしまった差は絶望的になっていて4着までが精一杯。比較的人気の馬が上位に来ているので全てにおいてフロックだとは言えませんが、勝つべき馬は別にいたかもしれません。勝ったヴェンヴォは6番人気だったので恵まれていた可能性は認識しておきたいところです。同じような競馬で北九州記念を優勝した15番人気ボンボヤージは次走で力通りに大敗しましたが、ヴェンヴォも同じ轍を踏んでしまうのでしょうか?

 

キーンランドCの勝ち時計1:09.1は昨年の勝ち時計と同タイム。その時の1着レイハリアが今年は10着、2着エイティーンガールが今年は6着。エイティーンはコース取りを間違っただけと言う印象でしたが、昨年優勝した時に51kだったレイハは55kの斤量増でパフォを落としたと見るべきでしょう。せめて当時の時計ぐらいには走ってほしいところでしたが。

 

ヴェントヴォーチェ(1着)

 

春には高松宮記念にも登録していたように厩舎としてはGⅠを意識している素質馬。レース間隔が短いことから春は無理をしませんでしたがそれだけに秋のスプリンターズSを本気で狙っています。鞍上の西村騎手は例年この時期にフランスへ武者修行に行くのですがヴェンヴォでGⅠを勝てるチャンスがあると考え今年の予定を変更したのだそうです。厩舎、騎手共に大きいところを目指して夏は走りました。

 

ですが、その期待が空回りしてサマーシリーズを3戦も。洋芝で3勝クラスを勝ったからと函館SSを使い失敗。1戦1勝で適性が高いと考え直千のアイビスSDを使い失敗。早めに賞金加算して余裕を持って本番に備えたいとシリーズ序盤から押せ押せで使って来たのですが誤算の連続でその目論見は崩れてしまいます。それでもGⅠを諦められずルメール騎手を配して「これでダメなら諦めが付く」とキーランドCを背水の陣で使っています。勝ち方は微妙でしたがギリギリセーフで間に合いました。ただ、これは昔話した事ですが、サマーシリーズの3戦消化はスプリンターズSでの好走率はぐっと下げます。上積みや余力の有無はシビアな問題になります。また、函館→新潟→札幌→栗東の長距離輸送の連続が影響ゼロとは思えません。GⅠ出走の希望は叶いましたが、GⅠ制覇の夢は果たしてどんなものでしょうか?

 

能力的な話に触れておくと強さの根拠になるのが4走前の春雷Sです。33.2-55.7の通過タイムは前年の勝ち馬ジャンダルムと全く同じだったのですが、ヴェンヴォが勝った今年はラスト2Fで11.3-11.1と加速ラップで突き抜けている点でジャンダ以上に優秀です。このペースで行ったら多少なりともラストは失速するものですがさらに加速してゴールしているのは素晴らしい持続性能です。スプリンターとしては1級品でしょう。その結果記録されたのが1:06.8の好時計。このレースより1ケ月も早く行われたオーシャンSは1着にジャンダ、2着に高松宮記念を勝つナランフレグで、この時の勝ち時計が1:07.9。馬場状況が悪化している春雷Sが1秒以上も速いのですから価値はとても高い。そもそも1分6秒台はスプリンターズSでもロードカナロアが1度記録しただけのスーパータイム。陣営がGⅠを意識するのも納得です。これは弱い馬に出来るパフォーマンスではないので力があるのは間違いなさそうです。

 

元々は体質が弱く使い込めなかった馬でしたがこの点が改善され馬が変わってきていると厩舎では話しています。臨戦過程が不安材料となるのも事実で厩舎もその点は認めています。でも、そう言う体で使ったキーンランドCを優勝していますし、今は成長の速度が上がっている段階なので勢いで突っ走ってしまうこともあるのかもしれません。夢が叶うといいですね。


ウインマーベル(2着)

 

コース取りが見事にハマった勝ち馬や3着に粘った逃げ馬に比べて本馬はレースの流れに合わせて外を回し2着に上がっています。この馬が一番強い競馬だったと見る向きはありでしょう。あそこまで外に振らなければ圧勝まであったかと思います。賞金持ちだったので斤量は普通の3歳馬より1k重い54kを背負っての好走も印象が良いですね。昨年の勝ち馬がレイハリア(牝)が当時51kだったことと比較すると評価は高く出来ます。

 

この馬には面白い話があって重賞競走を使う前に騎乗していた松岡騎手は重賞で通用する器ではないとけんもほろろな評価をしていました。実際、葵Sではマーベルに乗れる状況にありながら同クラブのウインモナークに騎乗しています。モナークは4着と葵Sで負けただけでなく、GⅠに駒を進めることも出来なかったのですからこれは滑稽です。松岡騎手は昔からビックマウスでしたが実に愚かだったなと思います。

 

ただ、松岡騎手の考えも分からなくもありません。未勝利を勝ち上がるのに5戦も要した馬なので評価が高くならなかったのでしょう。そんな馬が以降のレースで7戦4勝2着2回で常に勝ち負けと言う競馬を続けています。ファルコンSだけ大敗しているのですがこれは直線で追い出すタイミングで周りを固められてしまい動くに動けず接触を繰り返すうちに馬が競馬を止めてしまった事によりますので度外視出来る1戦です。不利が無ければ常に勝ち負けの連続で重賞を勝ち、古馬に交じっても勝ちに等しい2着と力は通用しています。

 

飛躍のきっかけになったのはブリンカーの装着によるものです。レース振りが一変しています。前進気勢と言うものが無かったのでポジションを獲れず、促していないと下がって行くようなタイプでしたが、ブリンカー装着で集中度が増してスタートから先行ポジションをキープして確実に上位に顔を出すようになっています。厩舎筋もブリンカーの効用を認めていて、ブリンカーの装着でオンとオフが切り替わるのだそうです。パドック、輪乗りまではブリンカーを外しておき、ゲート裏に来た段階で装着するという念の入れようです。ブリンカー効果を最大限に発揮出来るよう陣営は工夫を凝らしています。

 

能力的にここが凄い!の様なストロングポイントは無いので推しづらいのですが、橘S、葵S、キーンランドCの走破時計は全て前年並みかそれ以上。スピード面で物足りない所はありません。好時計決着にもちゃんと対応しています。また、未勝利時代の分析からではスタミナ面にも見るべき所がありました。芝1500m、ダ1800mと試行錯誤していた時があったのですがこれらの距離でもバテているような感じが無く、ジワジワながら脚は伸ばしいました。追ってバテるようなシーンも無いので実際体力はあるのでしょう。スプリンターとしてはスタミナの有るタイプと見ています。強調材料は古馬より2k軽い斤量ぐらいのものですが、減点材料は全くないですね。有力馬が下手を売ったり、混戦に紛れて入着なんて事はあって良いと思います。


エイティーンガール(6着)

 

キーランドCは一昨年が優勝、昨年が2着と相性の良いレースでした。元々時計のかかる条件が得意とされる馬なので洋芝を主戦場としてキーランドCの前にいつも数戦しています。それが今年は高松宮記念以来5ケ月振りの出走でした。これは単に調整が間に合わなかっただけでGⅠを意識した叩き台と言う感じではなかったようです。あくまでキーンランドC優勝が目標でしたが、あいにく展開が向かずに6着。1度使えていたらもう少し良いパフォーマンスを発揮していたのかもしれません。ただ、後方追走の利点を生かせばコースはもっと柔軟に選べていたのではないでしょうか?インを突けるチャンスはいくらでもありましたから。乗り様によっては勝てていたかもなぁとちょっと思っています。

 

さて、図らずも目標だったレースをぶっつけで挑んだ訳ですがその割に脚はちゃんと使えていてグイグイと大外を伸びていました。あの末脚を見る限り能力に陰りはないと感じます。と言うか、この馬はこの2年ぐらいずっと調子に変動がありません。6歳の牝馬としては非常に安定しており、自分の脚だけはいつもちゃんと使えています。だからなのでしょうか?レースの内容や結果にいつも変わりがありません。GⅠのパフォーマンスは面白いように毎年ほぼ同じになっています。

 

スプリンターズS

20年:1.0秒差11着(良)
21年:1.2秒差13着(良)

 

高松宮記念

21年:0.4秒差7着(重)
22年:0.3秒差8着(重)

 

着が多少前後していますがそれは相手関係によるもで発揮しているパフォーマンスはご覧の通り毎度同じです。結局、GⅠに出走するようなメンバーを直線勝負だけで飲み込むなんて事はこの馬の脚力では出来ないのです。上がりがかかる展開や、雨でも降らない限りは出番はないのですが、そういう状況になった高松宮記念でも全戦止まり。力不足は明白なのであります。力を出し切れたところで今年も似たような結果になるんだと思います。厩舎側もGⅠを使う度に1頭でも交わせればぐらいのテンション。頑張って掲示板にでも載れれば程度の期待しかありません。今回も似たような感じだと思います。

 

レイハリア(10着)【除外】

 

メイショウミモザ(12着)

 

1200m中心に使われていた馬でしたがマイルGⅡ阪神牝馬Sを勝った事、母が長距離で活躍したメイショウベルーガであったことなどからこういう距離がいいのかもしれないという考えが生まれます。しかし、クイーンSの1800mまで距離を伸ばしましたが結果は2度と出ませんでした。この勘違いのきっかけとなったのが阪神牝馬Sなのですが、このレースは桜花賞の前日に行われたレースでした。この週の阪神コースは極端なイン前馬場で桜花賞でスターズオンアース、ナムラクレアなどが内々を通って好走したようにミモザもラチ沿いをロス無く回って来た事で9番人気の激走を果たした訳です。この事実を受け止めて、馬場バイアスの影響があったから好走出来たという評価に留めるべきでした。ヴィクトリアM18着、クイーンC12着がその証になります。

 

結局、前走のキーンランドCから短距離路線に戻って来たのですがコース傾向にそぐわない立ち回りでこれも12着と大敗を喫してしまいます。キーンランドCは力通りに決まらなかったレースなのでこれは度外視しておくとして、この馬の1200mでの力の程はどのようなものなのでしょう?2勝クラスまではコンスタントに馬券圏の走りを見せていましたが、3勝クラスでは善戦止まりで勝ちあがるのに足掛け3年もかかり、12戦も要しています。勝ち上がった巌流島Sの内容は優秀で1月の小倉で1:07.3の勝ち時計も立派なものです。しかし、このレースは先行していた人気馬2頭が最下位、ブービーに沈むレースで、1番人気も前が壁になり追い出せなかったレースでした。だから勝った本馬が11番人気、2着馬が18番人気で大波乱になっています。巌流島Sの好走も相当ハマっていた印象で、実力でOPに昇格した馬とは思えません。阪神牝馬Sも9番人気でしたからその勝利はいつもフロック性に満ちていたと言えるでしょう。GⅢならいざ知らず、とてもGⅠで通用する根拠なんかありません。競馬なのでそう言う事も三度起こるのかもしれませんが、準備万端にやって来た馬が集うのがGⅠです。そうそう起こるものでもないでしょう。

 

馬は成長していて状態が凄い良いらしく関係者は常に一発を狙えると考えているようですが、昨年亡くなった母ベールガの跡を継がせたいという期待からそう言う発言になっているように思います。本当に力があれば前走もあそこまで負けていないでしょう。直線で力尽き脱落していった走りに地力の高さはやはり感じません。何かに恵まれないとどうにもならないと思われます。

 

ここまでを1枚目とし、「スプリンターズS(GⅠ) 出走馬カルテ①」とページタイトルを変更致します。「スプリンターズS(GⅠ) 出走馬カルテ②」へは下記のブログカードをご利用下さい▼